ガジェット電気でローターを回し離陸、水平飛行はエンジンでプロペラを回す
固定翼機でヘリコプターでオートジャイロなeVTOL「Linx P9」発表。航続距離は最大1300km
英国のArc Aero Systems(旧Samad Aerospace)が、9人乗りハイブリッド航空機「Linx P9」を発表した。航続距離、速度、運用コストなどの面で、同サイズのヘリコプターより優れていると主張している。
Linx P9の特徴は、それを飛行機と言うべきなのかヘリコプターなのか、はたまたオートジャイロなのか判然としないところ。動力もトップローターはモーター駆動だが、推進用のプロップは496馬力のターボエンジンで回る。そして水平飛行時はトップローターが無動力になり、オートジャイロのように前進時に受ける風の力で受動的に回転して揚力を発生する仕組みだ。
この変わり種航空機は、乗員、ペイロード、燃料を含まない機体そのものの “空虚重量” は1930kgしかない。外観はいっけんヘリコプターにしかみえないものの、12.6m幅の細長い主翼が生えており、翼には大きさ2mほどのプッシャープロップが左右にぶら下がっている。また機体後方には大きな尾翼がある。
Linx P9が飛ぶときは、まず離陸のためにトップローターがモーターで駆動され、十分な高さまで上昇したところでプッシャープロップが作動、前進し始める。そしてある程度対気速度が上がったら翼の揚力が働くようになるので、トップローターは減速されて空気抵抗を減らす方向に働き、飛行速度が向上する。
Linx P9の巡航速度は、最高370km/hになるという。現在の仕様ではプロップ駆動用のエンジンは持続可能な航空燃料を使用するとされているが、将来的には水素燃料電池式のパワートレインに切り替える可能性もあるとのこと。
現在の仕様における航続距離は、標準的な構成に約600kgの燃料を搭載して約950km、拡張燃料タンクを装着すれば、最大約1300kmの航続距離を実現するとArc社は述べている。ちなみに、Linx P9と同じ9人乗りのヘリコプター、シコルスキー S92の巡航速度は最高280km/hで、航続距離は最大1014kmだ。また重量が嵩むため、使用する燃料はLinx P9の4倍近くなる。そのため飛行コストも、Linx P9は同サイズのヘリコプターに比べ40%も安価になり、1時間あたり505ドルしかからないという。
またLinx P9はジャイロタイプのローターを採用することで、動力を失ったときにローターが回転して降下速度を下げる効果を生み出す利点があり、さらにeVTOLに対する航空当局の認証がそれほど困難ではないという利点もある。設計思想としてこの機体は、複合オートジャイロ機のCarterCopterを発展させたものと言えるかもしれない。
CarterCopterの研究開発に25年をかけたJay Carter氏は2019年に、開発で得たすべての知的財産をJaunt Air Mobility社に売却している。そのため、類似するコンセプトのハイブリッドeVTOLを生産しようとすれば、特許関連の問題を突きつけられる可能性があるかもしれない。それでも、これまでにない柔軟な飛行を可能にする変わり種航空機が飛び、市場に変化をもたらすところを見てみたいものだ。
Source: Arc Aero Systems
via: New Atlas
Linx P9の特徴は、それを飛行機と言うべきなのかヘリコプターなのか、はたまたオートジャイロなのか判然としないところ。動力もトップローターはモーター駆動だが、推進用のプロップは496馬力のターボエンジンで回る。そして水平飛行時はトップローターが無動力になり、オートジャイロのように前進時に受ける風の力で受動的に回転して揚力を発生する仕組みだ。
この変わり種航空機は、乗員、ペイロード、燃料を含まない機体そのものの “空虚重量” は1930kgしかない。外観はいっけんヘリコプターにしかみえないものの、12.6m幅の細長い主翼が生えており、翼には大きさ2mほどのプッシャープロップが左右にぶら下がっている。また機体後方には大きな尾翼がある。
Linx P9が飛ぶときは、まず離陸のためにトップローターがモーターで駆動され、十分な高さまで上昇したところでプッシャープロップが作動、前進し始める。そしてある程度対気速度が上がったら翼の揚力が働くようになるので、トップローターは減速されて空気抵抗を減らす方向に働き、飛行速度が向上する。
Linx P9の巡航速度は、最高370km/hになるという。現在の仕様ではプロップ駆動用のエンジンは持続可能な航空燃料を使用するとされているが、将来的には水素燃料電池式のパワートレインに切り替える可能性もあるとのこと。
現在の仕様における航続距離は、標準的な構成に約600kgの燃料を搭載して約950km、拡張燃料タンクを装着すれば、最大約1300kmの航続距離を実現するとArc社は述べている。ちなみに、Linx P9と同じ9人乗りのヘリコプター、シコルスキー S92の巡航速度は最高280km/hで、航続距離は最大1014kmだ。また重量が嵩むため、使用する燃料はLinx P9の4倍近くなる。そのため飛行コストも、Linx P9は同サイズのヘリコプターに比べ40%も安価になり、1時間あたり505ドルしかからないという。
またLinx P9はジャイロタイプのローターを採用することで、動力を失ったときにローターが回転して降下速度を下げる効果を生み出す利点があり、さらにeVTOLに対する航空当局の認証がそれほど困難ではないという利点もある。設計思想としてこの機体は、複合オートジャイロ機のCarterCopterを発展させたものと言えるかもしれない。
CarterCopterの研究開発に25年をかけたJay Carter氏は2019年に、開発で得たすべての知的財産をJaunt Air Mobility社に売却している。そのため、類似するコンセプトのハイブリッドeVTOLを生産しようとすれば、特許関連の問題を突きつけられる可能性があるかもしれない。それでも、これまでにない柔軟な飛行を可能にする変わり種航空機が飛び、市場に変化をもたらすところを見てみたいものだ。
Source: Arc Aero Systems
via: New Atlas