ガジェット生命に必要な6要素のなかで最も希少なのがリン
土星の衛星エンケラドゥスの氷の海に「豊富なリン」発見。生命の存在に重要な要素
土星の衛星エンケラドゥスに関する新しい研究より、その地下にある液体の海に豊富なリンが含まれていることがわかった。リンは、炭素、水素、窒素、硫黄、酸素とともに、生命にとって必要な6要素のうちのひとつとされている。
2017年に土星の大気圏に突入し、その活動を追えた探査機カッシーニは、エンケラドゥスの南極から噴出し続ける間欠泉の中を通過し、さらにこの衛星から放出された粒子が含まれる土星のE環を通過することで、この海の成分データを収集した。そして、データをコンピュータモデルに基づいて分析したこれまでの研究では、E環のデータからリン酸塩が見つかったことで、エンケラドゥスにリンが存在する可能性があると結論づけられていた。今回の研究では、それを直接発見することができたと説明している。
研究チームは、サンプリングされた300を超える氷粒の測定値と、検証のために実験室で再現されたデータを調べている最中に、オルトリン酸塩の明確な証拠を含む9つの粒子を発見した。これは、生物が吸収できる唯一のリンの形態だ。
この研究を主導したドイツ・ベルリン自由大学のフランク・ポストベルグ教授は、「リン酸塩はおそらく私たちが見つけることができた最高のものかもしれない。しかし我々は、特にそれを探していたわけではなかった」ため、「これらのスペクトルがおそらくリン酸塩を示していると気づいたときは非常に驚いた」と述べている。
今回の発見で興味深いのは、エンケラドゥス海に含まれるリンの濃度が地球に比べて非常に高いと考えられる点だ。リンは、糖と結合して DNA に「骨格」を提供し、4 つの核酸塩基を二重らせんに結合する作用を持つ。また、細胞膜や骨のほか、体のあちこちに代謝エネルギーを運ぶアデノシン三リン酸と呼ばれる分子を構成するのにも使われる。6月14日に発表された論文では、これほど豊富なリンが含まれる海水のなかは、すでに「居住可能性に関する最も困難な要件」を満たしていることを示すと指摘された。
2022年には、別の研究チームが地球化学モデルを使った研究で、リン酸塩が以前に予測されていたよりもはるかに高い速度で水に溶解すると推定した。今回の研究でも、リン酸塩がエンケラドゥスの海で「容易に利用可能」であり、その豊富さは地球の海の1,000倍以上の可能性があると結論付けられている。またリンの成分がどこから供給されているのかについては、液体の海水と、衛星の核を形成する岩石の相互作用によって溶け出すとの考えを示した。
ポストベルグ教授は、この研究では「生命はおろか、生命の痕跡さえ発見できなかった」と述べつつ、「我々はただそこに、生命が非常に良好に形成される可能性があることを示す、ちょっとした兆候を発見したところだ。これは単なる居住可能性の指標であるが、非常に優れた重要な指標だ」とした。
ちなみに、エンケラドゥスの海に含まれるリンの量は推定値であり、この土星の衛星についてすべてがわかったワケではない。ただ、豊富なリン酸塩の存在は、氷の下の海が生命を抱えている可能性があることを示している。今後の研究で、エンケラドゥスやその他の天体の海における生命の存在の可能性がもっとハッキリわかってくることが期待される。
Source: Nature
via: Space.com
2017年に土星の大気圏に突入し、その活動を追えた探査機カッシーニは、エンケラドゥスの南極から噴出し続ける間欠泉の中を通過し、さらにこの衛星から放出された粒子が含まれる土星のE環を通過することで、この海の成分データを収集した。そして、データをコンピュータモデルに基づいて分析したこれまでの研究では、E環のデータからリン酸塩が見つかったことで、エンケラドゥスにリンが存在する可能性があると結論づけられていた。今回の研究では、それを直接発見することができたと説明している。
研究チームは、サンプリングされた300を超える氷粒の測定値と、検証のために実験室で再現されたデータを調べている最中に、オルトリン酸塩の明確な証拠を含む9つの粒子を発見した。これは、生物が吸収できる唯一のリンの形態だ。
この研究を主導したドイツ・ベルリン自由大学のフランク・ポストベルグ教授は、「リン酸塩はおそらく私たちが見つけることができた最高のものかもしれない。しかし我々は、特にそれを探していたわけではなかった」ため、「これらのスペクトルがおそらくリン酸塩を示していると気づいたときは非常に驚いた」と述べている。
今回の発見で興味深いのは、エンケラドゥス海に含まれるリンの濃度が地球に比べて非常に高いと考えられる点だ。リンは、糖と結合して DNA に「骨格」を提供し、4 つの核酸塩基を二重らせんに結合する作用を持つ。また、細胞膜や骨のほか、体のあちこちに代謝エネルギーを運ぶアデノシン三リン酸と呼ばれる分子を構成するのにも使われる。6月14日に発表された論文では、これほど豊富なリンが含まれる海水のなかは、すでに「居住可能性に関する最も困難な要件」を満たしていることを示すと指摘された。
2022年には、別の研究チームが地球化学モデルを使った研究で、リン酸塩が以前に予測されていたよりもはるかに高い速度で水に溶解すると推定した。今回の研究でも、リン酸塩がエンケラドゥスの海で「容易に利用可能」であり、その豊富さは地球の海の1,000倍以上の可能性があると結論付けられている。またリンの成分がどこから供給されているのかについては、液体の海水と、衛星の核を形成する岩石の相互作用によって溶け出すとの考えを示した。
ポストベルグ教授は、この研究では「生命はおろか、生命の痕跡さえ発見できなかった」と述べつつ、「我々はただそこに、生命が非常に良好に形成される可能性があることを示す、ちょっとした兆候を発見したところだ。これは単なる居住可能性の指標であるが、非常に優れた重要な指標だ」とした。
ちなみに、エンケラドゥスの海に含まれるリンの量は推定値であり、この土星の衛星についてすべてがわかったワケではない。ただ、豊富なリン酸塩の存在は、氷の下の海が生命を抱えている可能性があることを示している。今後の研究で、エンケラドゥスやその他の天体の海における生命の存在の可能性がもっとハッキリわかってくることが期待される。
Source: Nature
via: Space.com