パイオニア
50インチのプラズマディスプレイ市場を牽引してきたパイオニアが、この秋、満を持して発表した「PDP-503HD」は、BSデジタルチューナーをメディアレシーバーに搭載した新型モデルである。 本機は、初代から数えると第三世代に相当する新開発のパネルを搭載している。新パネルは、リブの深さを増したディープワッフル構造を採用することによって、発光光量を飛躍的に高めることに成功した。溝が深くなればそれだけ発光する部分の体積が増えるため、発光面積と発光効率が上がる。それがストレートに光量アップに貢献しているわけだ。パネル輝度は900cd/m2、50インチのパネルとしては異例の明るさといってよい。 今回の新製品では、明るさだけでなく、階調再現力も大きく向上している。アドレス放電の制御を工夫したクリア駆動法をさらに改善し、階調再現力を従来の385階調から768階調に広げ、通常方式のパネルに比べてると暗部で実に16倍もの改善を実現したという。暗所コントラストも従来比で2倍近く向上しているから、映画の深みのある階調再現に、さらに大きく近付いたわけだ。この新しい駆動法はスムーズクリア駆動と呼ばれるが、この方法は、プラズマディスプレイの弱みとされていた疑似輪郭が原理上発生しないという注目すべきメリットもあわせ持っている。 3番目の画質改善ポイントは、パネル前面に装着するフィルターを徹底して作り込んだこと。セルから到達する光のなかから不要な成分をカットし、必要な成分の透過率を高めて色再現の改善を行ったことと、フィルター内部の反射率を抑え、コーティング層を改良することで、最終的な外光反射率を30%程度改善することに成功した。色の選択特性は特に純赤、純青成分の透過率アップをテーマに、きめ細かいチューニングを施している。 こうしたパネルの改善に加え、従来機で培ってきたハイビジョン信号の倍密化とNTSC信号の4倍密化、そして2-3プルダウン検出によって静止画処理を行うピュアシネマモードを搭載するなど、新パネルの可能性を生かしながら、徹底した画質の追い込みが行われている。 また、発光効率の改善など技術的な進化の成果として、消費電力が従来機に比べて2割近く減少していることも見逃せない点だ。プラズマディスプレイというと電力消費が大きいイメージがあるが、着実な努力によって、本機は395Wまで下げることに成功した。これは、大いに歓迎すべき進化といってよい。 最後に画質のインプレッションを紹介しておこう。まず一見して驚かされるのが、その圧倒的な光のパワーだ。日常の生活空間の明るさではもちろんのこと、1000ルクスといった家庭では現実的とはいえないほどの明るい環境下でも、本機は力強いコントラスト感を失わず、起伏のある映像を見せる。色再現は瑞々しく華やかな印象が強いが、青や赤の深みと抜けの良さはこれまでのプラズマディスプレイとは別次元といってよく、ブラウン管と同等か、色によってはそれ以上のリアリティを感じさせる。階調表現は率直に言って数字ほどの違いかどうかは分からないのだが、黒に近いグレーの深みは、前作にはなかった表現力を感じさせる。 光のクロストークによる解像度低下が少ないワッフル構造の特徴は十分に感じられ、HD、NTSCともディテールの切れ込みが鋭く、輪郭強調ではなく本来の情報量で鮮鋭感を引き出している。この点にも大いに感心した。 明るさを思い切って抑え、色合いを僅かに調整すると、映画再生時、階調の深みが生きてくる。特に暗部の色付きの良さと色バランスの正確さは、これまでのプラズマディスプレイの水準を大きく上回っている。(山之内 正/『AVレビュー99号』より一部改変) |