キクチ科学研究所のStylistシリーズが、「ビジュアルグランプリSUMMER 2005」のホームシアター大賞に輝いた。本来黒子であるはずのスクリーンが、真っ赤な出で立ちで登場した「オリジナルStylist」には驚かされたが、そのスタイリッシュ&カジュアル路線を一気に全包囲で展開しようというもの。「Stylist」はただの機種名に留まらない。キクチが総力でチャレンジする新ブランドであり、スクリーン革命といっていい期待を抱かせるものだ。

スクリーンを選ぶ側としても、4タイプの素材(生地)に4色のケースカラー。さらにサイズや機構・設置方法などなど、これだけ豊富なバリエーションが揃うのは、スクリーン史上かつてないエポックである。とはいえあまりの数の多さに戸惑いがあるのも事実。そこを私が優しく指南する。

同シリーズにはStylist、Limited、SR、E、SR-Cの5タイプがあるが、それぞれの特徴や違いは何だろう。また生地別の画質傾向やどんな視聴環境に向くのかなどをしっかりと理解したうえで、ベストなタイプをみつけよう。

Stylist 
シリーズの火付け役となったおしゃれなベーシックモデルだ。80インチの自立タイプでカラーバリエーションは4色を揃える。スクリーンケースは軽量かつ取扱いやすいスリムタイプ(65ミリ角)。床に置き、セッティングアームをTの字状に起こしたら、そこにスクリーンをひっかけるだけで完了するシンプルさが魅力だ。高さ調整も自在にでき、しかもキャリーバッグ付きだ。生地はホワイトマットアドバンスとグレイマットアドバンスから選べる。

スクリーンは立ち上げ式で、床からの高さ調整もアームの伸縮で自在に行える(写真はすべてクリックで拡大)
価格:オープン
機構:セルフスタンディング(セッティングアーム機構)
サイズ:80インチワイド
カラー:4色
生地:ホワイトマットアドバンス、グレイマットアドバンス

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Stylist Limited 
床置きスタイルの発展系だ。ワンタッチセッティングの新機構を搭載して、スクリーンサイズは80インチワイドに加え100インチにも対応する。ケースはスタンダードな95ミリ角タイプ。2本のガスストラット構造によるパンタグラフ式だから立ち上げ時に力がいらず、羽が生えたように片手で持ち上がる。独自のフリー・ストップ・ギア・アシスト構造にて、高さ調整も思いのままだ。カラーは4色。生地も4種類から選べる。平面性も向上したプレミアムな製品である。

ガスストラット仕様のワンタッチアップ機構で、軽く引き上げるだけで簡便にセッティングが行える
価格:オープン
機構:セルフスタンディング(ガスストラット機構)
サイズ:80インチワイド、100インチワイド
カラー:4色
生地:ホワイトマットアドバンス、グレイマットアドバンス、150PROGアドバンス、シアターグレイアドバンス

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Stylist SR 
SRとはスプリングローラー。天吊りタイプの代表作だ。スクリーン巻き取りケースにスプリングが納まり見た目にもスマート。その力で巻き上げるから巻き取りはスムーズだ。生地面へのストレスも少なく平面性もいい。また新開発のサイレント・アップ・ブレーキ・アシスト機構付きでとても静かなのが特徴。品位のいい操作感が味わえる。ケースはLimitedや電動式のEタイプと共通の95ミリ角、またEタイプと共通のセッティングブラケットを採用。これも4色展開で、生地も4種類から選べる。80と100インチスクリーンに対応する広く一般向けのモデルだ。

サイレントアップ・ブレーキ・アシスト機能を搭載

価格:オープン
機構:スプリングローラー
サイズ:80インチワイド、100インチワイド
カラー:4色
生地:ホワイトマットアドバンス、グレイマットアドバンス、150PROGアドバンス、シアターグレイアドバンス

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リアケースはレール構造になっており、ブラケット取り付け位置を自由に設定できる

Stylist E 
シリーズ最高級の電動巻き上げタイプである。95ミリ角のケースには80、100、さらに120インチワイドスクリーンまで収納でき、生地はマット、ビーズの4バリエーションすべてがOKだ。天井や壁へセットするさいも、独自のレール構造により位置の自由度が高いこと。またセット後にブラケットが見えないスマートな工夫もうれしい。ワイヤレスリモコンも標準装備で、スムーズでかつ静かなリコモコン操作は、シネマファンにはたまらない。

ワイヤレスリモコンを標準装備しスクリーンの上げ下げを行える
価格:オープン
機構:電動巻き上げ式
サイズ:80インチワイド、100インチワイド、120インチワイド
カラー:4色
生地:ホワイトマットアドバンス、グレイマットアドバンス、150PROGアドバンス、シアターグレイアドバンス

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SRと同様スライドレール構造を採用する

Stylist SR-C 
SRのジュニアモデルだ。Stylist(自立式)のスプリングローラーバージョンといった感じで、65ミリ角のスリムケースを採用。スクリーンサイズは70と80インチワイドのみに対応させたお手軽バージョンである。カラーはもちろん4色。生地はホワイトマットアドバンス、グレイマットアドバンスのみという制限はあるけれど、値段はお手頃だ。おしゃれな超入門者むけ。

スクリーンケースは取り扱いやすいスリムタイプ
価格:オープン
機構:スプリングローラー
サイズ:70インチワイド、80インチワイド
カラー:4色
生地:ホワイトマットアドバンス、グレイマットアドバンス

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ブラケットはスライドさせることができ、壁の強固な場所を選んで取り付けることができる
どのモデルでも4色のカラーバリエーションから選択できる
Stylistシリーズをビジュアル的に印象づけるのが4色のカラー展開だ。フロントケースは、真っ赤なイタリアンレッド、青空のようなコバルトブルー、そしてスノーホワイト(白)、ミッドナイトブラック(黒)という4タイプに塗り分けられ、しかも光沢を放っている。ツヤのある色あいは高級外車のようなイメージだ。これがリビングにあるだけでワクワクする。インテリアとして幅広くコーディネートできる工夫である。
ホワイトマットアドバンス
リビングシアター向けの3素材とは違い、ホワイトマットアドバンスは光を断った専用シアタールームでその性能を最大限に発揮するリファレンス級スクリーンだ。あらゆるソースにおいて忠実な色再現とヌケるような白にこだわった。そのための新技術が微細な凹凸をもつウルトラマイクロシボと、ノンモワレを実現したベース層の平織り構造である。投射映像は光に力強さがあるのが特徴だ。ダークな処理をしていないにもかかわらず、ダイナミックな黒階調と高いコントラストをも確保。色描写も精密で芳醇さに溢れる。極上のパフォーマンスである。

ピークゲイン0.85。視野角がたっぷりと広いのはマット系拡散タイプのと特徴だ。家族や知人など横に広がって視聴するシアタースタイルに最適だ。
視聴エリアが広く、多人数/横に広がり視聴するシアタースタイルに最適

グレイマットアドバンス
光の遮断が難しいリビングシアターではマット系スクリーンは困難とされていた。それをみごと可能にしたのが、特殊コーティングを施したグレイマットアドバンスだ。開発技術はシアターグレイアドバンスがもとになっているとしても、ビーズとマットとでは事情が違う。本品がすごいのは、マット系特有の「拡散特性イコール迷光にとっても拡散して方々へ散る、格好の“黒浮き”材料」を封じ込めてしまった点だ。ピークゲインは0.8。半値角は85度とホワイトマットアドバンスに準じる仕様。視野角の広いナチュラルでしっとりした映像でありながら、黒がしまりダーク階調が安定している。キーワードは調和だ。余裕のあるコントラスト感と視聴エリアの広さがポイント。大勢が横広がりで視聴するのにいい。
視聴エリアが広く、多人数/横に広がり視聴するシアタースタイルに最適

150PROGアドバンス
ビーズファンむけの定番、190PROGの後継がいよいよ登場だ。ピークゲインを1.9から1.5に下げ、近年のプロジェクターの高輝度化とのバランスを図ったもの。190PROGのキレやきりっとした輝きは残しつつ、黒再現とのバランスを追求した新境地である。力強いコントラストの押し出しやピュアさあふれる白。そして鮮やかな色再現は、マット系の穏やかなトーンとはひと味違う魅力を醸し出す。

薄明かりのリビングでも使え、ビーズの中では視聴エリアが広いのが特徴だ。スクリーン正面からやや広がったシアターの視聴スタイルがお似合い。視覚的な明るさ感の下がりがちなハイビジョン視聴によく、目の感度が弱まった年配ユーザーにも喜ばれるだろう。

ビーズ系の中では視聴エリアも広く、正面付近より少し広がり視聴するシアタースタイルに最適

シアターグレイアドバンス
ビーズ系のグレイシリーズである。プロジェクターの黒浮き対策、そして光の遮断が難しい薄明かりのリビングルーム用に開発したのがシアターグレイアドバンスだ。

60ミクロンの微細なビーズ仕様は150PROGと同一である。巧妙な反射特性とグレイコーティングの相乗効果で、漆黒の暗部からヌケるような白領域まで、ビーズらしい鮮明なタッチで爽やかに再現する。

ピークゲイン1.6。迷光に強く、間接照明下でも黒浮きの少ないハイコントラストな映像が得られる。視聴エリアは150PROGよりは狭く、スクリーン正面付近がベストポジション。小人数でまとまって視聴するシアタースタイルに最適だ。

スクリーン正面付近が視聴エリア。少人数/正面付近で視聴するシアタースタイルに最適
【関連リンク】
キクチ科学研究所
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執筆者プロフィール

林正儀 Masanori Hayashi

福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。現在、日本工学院専門学校の講師を務め、音響・ホームシアターの授業を受け持つ。難しい話題をやさしく説明するテクニックには定評がある。