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高橋 敦が「PDX-Z10」を使いこなす! − ホットトピックを押さえた挑戦的なコンポを徹底チェック

公開日 2009/09/27 17:46 高橋 敦
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パイオニアのマルチミュージックレシーバー「PDX-Z10」を高橋 敦氏が徹底レポート! 氏が“ホットなトピックを押さえた挑戦的なコンポ”と評する本機の実力を探る。

パイオニア PDX-Z10


現在のオーディオにおいて主要な、あるいは今後主要となってくるであろう3つのソース、CD、iPod、ネットワークのすべてに対応する”マルチ”ミュージックレシーバー。前述の3つの他にディスクはSACDにも対応、USBメモリーやインターネットラジオにも対応、さらにはAM/FMチューナーにフォノ入力まで備え、オプションでBluetoothにも対応可能。本当にあらゆる音楽ソースに対応できるシステムと言える。

外観は近年のパイオニア製品に共通の艶やかなブラック基調。サイズは一般的なプレーヤーと同程度だが、その中にアンプも一体化されている。あらゆるソースに対応するのに加えてアンプも内蔵。Z10の他に用意するのはとりあえずスピーカーだけでよい。このシンプルさはエントリー向けとしても好ましいし、セカンドシステムとしても導入しやすい。

そのアンプ部はフルデジタルアンプ。その前段も、例えばサンプリングレートコンバーターでジッターを低減するなど、手抜かりのない構成。土台となる筐体にも、ハニカムプレス構造シャーシや新開発のインシュレーターなど、様々な音質向上策が投入されている。

個人的にも気になる重要ポイントをさらに確認していこう。

まずiPodとの接続は、期待通りにデジタル接続だ。AVアンプで他に先駆けてiPodデジタル接続を実現していた同社であるから、ここは当然と言えるだろう。iPod内蔵のDACとアナログ出力回路はオーディオ的な見地からは不十分な性能。それらをパスして純度の高いデジタル音声データを取り出すのがデジタル接続だ。カジュアルな機器はさておきピュアオーディオ領域の製品では、iPod対応を謳うならデジタル接続はもはや必須と考える。

しかもZ10は、入力されたデジタル信号をアンプまでデジタルのまま処理できるフルデジタル構成。より効率的で高精度な処理=高音質を見込める。

iPodデジタル接続時の操作インターフェースは、「ホームメディアギャラリー」のトップメニューからiPodを選択し、プレイリストやジャンル、アーティスト名などを選択していく、一般的なメニュー選択方式。ただディスプレイの情報量が縦3行と少ないので、快適操作とは言えない。しかし再生したい曲を事前にプレイリストにまとめておくなどの工夫で、ある程度対処できる。

ディスプレイは表示行数こそ少ないものの、表示は明瞭で読み取りやすい

ホームメディアギャラリーの操作はリモコンのこの部分、カーソルボタンとその周辺のボタンで行える

また音質よりも使い勝手を優先する場面では、オプションで用意されているBuetooth接続が便利だ。こちらの方法ならiPhone本体側でいつものように操作できる。

パソコンに構築している音楽ライブラリをオーディオシステムで高音質再生したいというのも筆者の(そして現在のオーディオの世界の)テーマのひとつ。音楽ファイルを管理するのにパソコンほど便利なものはないが、音質重視で再生するときにはオーディオシステムに任せたい。Z10はこのニーズにも応えてくれる。

Windows Media ConnectとWindows Media Player 11のライブラリ共有機能、DLNA対応サーバーに対応。パソコンやDLNA対応NAS(LAN接続ハードディスク)との組み合わせで、そちら側に保存してある音楽ファイルをネットワーク経由で再生できる。再生対応形式はWMA、MP3、AAC、WAV、FLAC。

操作はiPodデジタル接続時と同じく、ホームメディアギャラリーのメニューから行う。やはりディスプレイの小ささがつらいところだ。

ただしこちらの場合は、UPnP対応コントローラー、例えばiPhoneアプリのPlugPlayerなどからLAN経由で操作することも可能。そうすれば画面も大きくなるし、手元のタッチパネルで操作できるので快適だ。ネットワーク再生を多用する場合には、UPnP対応コントローラーの活用は要検討項目になるだろう。

PlugPlayerの設定画面。メディアレンダラー(再生を行う機器)として本機が認識されている

サーバーから曲を選択して再生リストに登録して再生中の画面。簡単に言うとiPhoneが本機の「大画面付きリモコン」になる

さて、では音を確認していこう。

まず基本的な音質だが、キレの鋭さが特徴的な同社製品としては例外的と思えるが、どちらかと言えば穏やかな音調と感じた。そのためインパクトは薄いかもしれないが、聴き込んでも納得できるし聴き疲れない。真っ当な上質さを感じられる音だ。このあたりは名門「Air Studios」のエンジニアとの共同チューニングの成果も大きいのだろう。

続いて同一曲をCD/iPod/ネットワーク再生で聴き比べ。iPodデジタル接続とネットワーク再生は、音質的なメリットもやはり大きい。同じ曲をCDから直接再生するよりも、音像がぴしっと立つ感じで、音場全体の見通しも良い。

さらにハイサンプリングレート機能(いわゆるアップサンプリング機能)をオンしてみると、これも明らかな効果がある。全体的に響きの成分がより自然に感じられるようになる他、ギターは倍音域が元気になったのか、エッジが痛さを伴わずにビシッと立って抜けるようになる。

主要ソースへのマルチ対応に加えて、アンプ一体型で十分に満足できる音質。改めて確認してみると価格も、この内容からするとかなりのお買い得。「いまこの時期の」オーディオのエントリー・システムというものを提案する、挑戦的な製品だ。

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