ケンウッドのBluetoothスピーカー「AP-300」レビュー − 絶妙な存在感の「奏でるオブジェ」

一風変わった外観のシステムコンポだが、そのコンセプトが「奏でるオブジェ」だと聞くと納得。床に置いてあっても遠目にはオーディオ機器だとわからないだろうし、それが狙いというわけだ。実物を見るとサイズは大きすぎず小さすぎず、オブジェとしても絶妙な存在感を発揮する。

機能的には、再生できるソースの多彩さがポイント。スマートフォン等との組み合わせに活躍するBluetoothを筆頭に、スロットインCDにFM/AMチューナー、USBメモリーとiPod/iPhoneデジタル接続に対応するUSB端子を用意する。最近はBluetooth中心で他のソースへの対応はあえて切り捨てている製品も多い中、CDにまで対応するのは注目点だ。

音質面に関わる面では、キャビネット剛性を高めた上でその内部に左右独立「BOX構造」のスピーカーを設置。Bluetooth伝送の圧縮コーデックはAACにも対応し、その部分での音質低下を最小限に止める。各ジャンル向けの好みのサウンドを選べる「サウンドモード」など、音質調整機能も豊富だ。

実際に聴くとそのサウンドは、なかなか思い切ったソフトさだ。シャープな成分は良くも悪くもほとんど出さず、一方で低音は豊かに出す。ふかふかの寝具のように柔らかく広がる音だ。

であるので音楽をシビアに聴き込みたい場面というよりは、音楽を部屋の空気の一部として常に流しておきたいというような使い方に合いそう。音楽を邪魔に感じさせない音調と、音量を上下させても音のバランスが変わらない（常に低音がしっかり出る）点も、自分にとって心地よい音量で音楽を流し続けておくのにぴったりだ。

作り手側のコンセプトが音調まで含めたトータルデザインに明確に反映されている製品だ。なのでそのコンセプトにハマる方には、他では得られない満足感を与えてくれるだろう。