「驚くほど空間描写のスケールが大きい」
【レビュー】JVCの“人工熟成”ウッドコーンスピーカー「SX-WD9VNT/WD7VNT」を聴く
■“熟成”で音質向上を図ったウッドコーンスピーカー
料理の世界では「熟成食材」がブームだ。例えば上等な肉や酒を熟成させることで、おいしさを引き立てる旨味や柔らかさが増してくる。JVCがビクター時代から誇るスピーカーシステム“ウッドコーン”シリーズも「熟成」をキーワードに、パーツに高音質化処理を加えてスケールアップした“音の旨味”が体験できるラインナップがある。「SX-WD9VNT」と「SX-WD7VNT」のスピーカー2機種だ。
前者は2014年にJVCが発売したウッドコーンオーディオのトップエンド「EX-HR9」のスピーカー部をベースにしたフルレンジユニット1発構成。WD7VNTは同じくウッドコーンオーディオ「EX-HR7」の2ウェイスピーカー部をベースに改良を加えている。
新製品の大きな特徴は、スピーカーキャビネットの中にいくつか配置されている「響棒」と呼ばれる、その名の通り音の響き方や音場感をコントロールするためのパーツに“ひと手間”を加えていることだ。
ウーファーユニットの直下に配置されているチェリー響棒に「人工熟成処理」と呼ばれる加熱処理を加えて、ギターやヴァイオリン、木管楽器などで言うところのヴィンテージ品質に近づけるための経年効果を持たせた。主な効果は音場の広さ、解像度の向上と低音再生は重心の安定化などに表れるという。
JVCが同様の人工熟成をウッドコーンスピーカーのパーツに施した例としては、過去に「EX-HR11」というモデルがあり、そのワイドな音場感と緻密なディティール再現が高く評価された。そのノウハウが受け継がれることになったわけだ。
ウッドコーンスピーカーの歴史は、エンジニアたちの経験値がビクターからJVCの時代へと受け継がれながら「熟成」されてきた過程そのものである。「木」の温もりを活かした上品なキャビネットの中に配置するパーツをミリ単位で調整したり、異なる素材を試しながら時代に最もフィットしたサウンドを追求してきた。
今回の2モデルは、ほかにもスピーカーターミナルの固定に用いる4本のネジのうち、左上のネジだけ、素材をニッケルメッキを施した鉄から、ステンレス製に変更して音の輪郭をシャープに整えた。こうした調整が、ワイドな空間再現力にも影響を与えているという。
また内部に吸音材として配置されているメイプル材チップや、配線の処理方法にも微調整を施しながら、JVCのエンジニアたちが理想に描く高解像で音楽性の豊かなサウンドに追い込んだ。
■レビュー:「驚くほど空間描写のスケールが大きい」
SW-WD9VNTは、音の伝搬速度や空間再現を高めた異方性振動板を採用する9cmのフルレンジユニットを搭載している。チェリー材を使ったキャビネットは背面にバスレフポートを配置する。
フロント側よりも奥行き方向が長くゆったりとしたデザインに見えるが、スピーカー端子とサランネットを含めても奥行きサイズは264mmと、WD7VNTの249mmに比べても大差はない。一般的なスピーカースタンドやラックの上に配置できるほど設置性は良好。スピーカー端子にY字・バナナプラグも使える。
サウンドは驚くほど空間描写のスケールが大きい。中高域の透明感、ディティールの明瞭度も白眉の出来映えだ。
原田知世の「恋愛小説2」から『September』では、ボーカルの音像がくっきりセンターに定位する。ウッドコーンらしく声の質感も柔らかい。
エレキベースが刻むリズムは打ち込みが鋭く、瞬発力の豊かさを感じる。エレキピアノのハーモニーは滲みなく、幾層も柔らかく重なりながら解けていく。余韻の滑らかな階調感も聴き応え抜群だ。
上原ひろみの「SPARK」から『Wonderland』では、濃厚な楽器の音色だけでなく、空気の密度感までもが伝わってきた。ピアノのメロディは中低域のつながりが滑らか。低域はスピード感があり、しかも肉付きがいい。まさに熟成された深みのある鳴りっぷりだ。
ドラムスのシンバルにバチがあたった時のゴリっとした感触が伝わってくる。鮮度が高くピュアな音色だ。彫りの深いエレキベースが奥行き方向に限界の見えない情景を感じさせてくれた。
SW-WD7VNTは11cmのウーファーと2cmのドームトゥイーターを採用する2ウェイ・バスレフ型のスピーカーシステム。どちらの振動板も素材にウッドを採用する。再生可能な周波数帯域も55Hzから50kHzと幅広い。
原田知世の楽曲は低域の清涼感が極まる。余韻の透明感や伸びやかさも特徴としており、音場も高さ方向の立体感が豊か。ボーカリストの存在感がより生々しく浮かび上がる。エレキギターは柔らかく響く高域の余韻が耳に残る。
ミロシュ・カルダグリッチの「アランフェス協奏曲」では、広大なオーケストラの演奏の中で主旋律のギターがグンと手前に引き寄せられながら煌めく。弱音の粒立ちも目が覚めるほど鮮やかだ。
上原ひろみのピアノはWD9VNTのしっとりとした濃密な空気感に比べると、明るく軽やかなで楽しく聴ける。
新製品はともにスピーカーシステムのみの単品販売となるので、過去にビクター、JVCのウッドコーンオーディオをフルシステムで購入されたユーザーも音の違いを楽しむことができる。初めて本格的なスピーカー再生環境を整えたいと考えている方々にも、本機の存在は朗報だ。
料理の世界では「熟成食材」がブームだ。例えば上等な肉や酒を熟成させることで、おいしさを引き立てる旨味や柔らかさが増してくる。JVCがビクター時代から誇るスピーカーシステム“ウッドコーン”シリーズも「熟成」をキーワードに、パーツに高音質化処理を加えてスケールアップした“音の旨味”が体験できるラインナップがある。「SX-WD9VNT」と「SX-WD7VNT」のスピーカー2機種だ。
前者は2014年にJVCが発売したウッドコーンオーディオのトップエンド「EX-HR9」のスピーカー部をベースにしたフルレンジユニット1発構成。WD7VNTは同じくウッドコーンオーディオ「EX-HR7」の2ウェイスピーカー部をベースに改良を加えている。
新製品の大きな特徴は、スピーカーキャビネットの中にいくつか配置されている「響棒」と呼ばれる、その名の通り音の響き方や音場感をコントロールするためのパーツに“ひと手間”を加えていることだ。
ウーファーユニットの直下に配置されているチェリー響棒に「人工熟成処理」と呼ばれる加熱処理を加えて、ギターやヴァイオリン、木管楽器などで言うところのヴィンテージ品質に近づけるための経年効果を持たせた。主な効果は音場の広さ、解像度の向上と低音再生は重心の安定化などに表れるという。
JVCが同様の人工熟成をウッドコーンスピーカーのパーツに施した例としては、過去に「EX-HR11」というモデルがあり、そのワイドな音場感と緻密なディティール再現が高く評価された。そのノウハウが受け継がれることになったわけだ。
ウッドコーンスピーカーの歴史は、エンジニアたちの経験値がビクターからJVCの時代へと受け継がれながら「熟成」されてきた過程そのものである。「木」の温もりを活かした上品なキャビネットの中に配置するパーツをミリ単位で調整したり、異なる素材を試しながら時代に最もフィットしたサウンドを追求してきた。
今回の2モデルは、ほかにもスピーカーターミナルの固定に用いる4本のネジのうち、左上のネジだけ、素材をニッケルメッキを施した鉄から、ステンレス製に変更して音の輪郭をシャープに整えた。こうした調整が、ワイドな空間再現力にも影響を与えているという。
また内部に吸音材として配置されているメイプル材チップや、配線の処理方法にも微調整を施しながら、JVCのエンジニアたちが理想に描く高解像で音楽性の豊かなサウンドに追い込んだ。
■レビュー:「驚くほど空間描写のスケールが大きい」
SW-WD9VNTは、音の伝搬速度や空間再現を高めた異方性振動板を採用する9cmのフルレンジユニットを搭載している。チェリー材を使ったキャビネットは背面にバスレフポートを配置する。
フロント側よりも奥行き方向が長くゆったりとしたデザインに見えるが、スピーカー端子とサランネットを含めても奥行きサイズは264mmと、WD7VNTの249mmに比べても大差はない。一般的なスピーカースタンドやラックの上に配置できるほど設置性は良好。スピーカー端子にY字・バナナプラグも使える。
サウンドは驚くほど空間描写のスケールが大きい。中高域の透明感、ディティールの明瞭度も白眉の出来映えだ。
原田知世の「恋愛小説2」から『September』では、ボーカルの音像がくっきりセンターに定位する。ウッドコーンらしく声の質感も柔らかい。
エレキベースが刻むリズムは打ち込みが鋭く、瞬発力の豊かさを感じる。エレキピアノのハーモニーは滲みなく、幾層も柔らかく重なりながら解けていく。余韻の滑らかな階調感も聴き応え抜群だ。
上原ひろみの「SPARK」から『Wonderland』では、濃厚な楽器の音色だけでなく、空気の密度感までもが伝わってきた。ピアノのメロディは中低域のつながりが滑らか。低域はスピード感があり、しかも肉付きがいい。まさに熟成された深みのある鳴りっぷりだ。
ドラムスのシンバルにバチがあたった時のゴリっとした感触が伝わってくる。鮮度が高くピュアな音色だ。彫りの深いエレキベースが奥行き方向に限界の見えない情景を感じさせてくれた。
SW-WD7VNTは11cmのウーファーと2cmのドームトゥイーターを採用する2ウェイ・バスレフ型のスピーカーシステム。どちらの振動板も素材にウッドを採用する。再生可能な周波数帯域も55Hzから50kHzと幅広い。
原田知世の楽曲は低域の清涼感が極まる。余韻の透明感や伸びやかさも特徴としており、音場も高さ方向の立体感が豊か。ボーカリストの存在感がより生々しく浮かび上がる。エレキギターは柔らかく響く高域の余韻が耳に残る。
ミロシュ・カルダグリッチの「アランフェス協奏曲」では、広大なオーケストラの演奏の中で主旋律のギターがグンと手前に引き寄せられながら煌めく。弱音の粒立ちも目が覚めるほど鮮やかだ。
上原ひろみのピアノはWD9VNTのしっとりとした濃密な空気感に比べると、明るく軽やかなで楽しく聴ける。
新製品はともにスピーカーシステムのみの単品販売となるので、過去にビクター、JVCのウッドコーンオーディオをフルシステムで購入されたユーザーも音の違いを楽しむことができる。初めて本格的なスピーカー再生環境を整えたいと考えている方々にも、本機の存在は朗報だ。