25年にわたるノウハウを投入
【製品批評】T+A「DAC 8 DSD / AMP 8」 ー 注目ドイツブランドの高品位コンパクトシステム
DAC内蔵プリアンプ/パワーアンプ
T+A
DAC 8 DSD / AMP 8
¥490,000(税抜)/ DAC 8 DSD、¥390,000(税抜)/ AMP 8
ドイツらしい堅実な製品作りにこだわるブランドとしてT+Aの評価が日本でも高まりつつある。プレーヤーからスピーカーまで手がける総合メーカーだが、特にアンプとデジタルコンポーネントで技術力の高さが際立ち、独自設計のDAコンバーターなど、興味深い設計手法が注目を集めている。それらのノウハウを総動員したのがフラッグシップのHVシリーズだが、そのエッセンスを受け継ぎ、凝縮したサイズに収めたのが8シリーズだ。
どちらも27cm四方のコンパクトな製品だが、特にトップとボトムのアルミプレートが肉厚で仕上げ精度が高いためか、グレード感は相当に高い。中身は立派なハイエンド機器だ。
PCMとDSDに独立したDACを積む「DAC 8 DSD」の基本構成はフラッグシップからそのまま受け継いでいる。PCM用には4種類のフィルター切り換えスイッチを本体とリモコンに設けていて、なかでもプリエコーとポストエコーが乗らないビジェフィルターを推奨していることが目を引く。背面パネルのスイッチでライン出力とプリ出力の切り換えができることに加え、専用ケーブルをAMP 8につなぐと電源が連動する機能もある。
「AMP 8」はHVシリーズのコア技術である高電圧駆動回路を導入していることが特徴で、A級クロスカップルドアンプで構成した入力段、サーマルトラックトランジスタを用いた出力段の組み合わせによって、チャンネル当たり110W(4Ω)の大出力を生み出す。
サイズを考えると異例のパワーだけに、ヒートシンクと放熱性の高いアルミシャーシに加え、温度上昇時に備えて大型の低回転ファンも内蔵しているが、本体が多少熱い程度では回らないようだ。
なお、入力段と出力段にそれぞれ独立した電源を用意するなど、サイズからは想像できないこだわりの設計を採り入れており、Yラグ対応のスピーカーターミナルもこのサイズとしては大型だ。
MacBookをつないだDAC 8 DSDとAMP 8を組み合わせ、自宅試聴室のSophia 3を鳴らしてみる。
本来ならブックシェルフ型との組み合わせが現実的だが、意外にも十分な制動力を発揮し、大編成の管弦楽を聴いてもトゥッティの音圧に物足りなさはない。
『ジャズ・アット・ザ・ポーンショップ』はベースラインに緩みがなく、ヴィブラフォンとクラリネットの掛け合いに勢いとスピードが乗っている。高橋アキのシューベルトをPCMのハイレゾ音源で再生すると、ベーゼンドルファーの深々とした低音弦の響きが身体全体に浸透し、コンパクトなパワーアンプで鳴らしているとは思えない低重心のサウンドに耳を疑った。
強調や演出に頼らず、演奏の一番おいしいところを素直に引き出す資質。そこにT+Aの新しい魅力を感じた。
(山之内 正)
Specifications
【DAC 8 DSD】●対応サンプリング周波数:(PCM)44.1kHz〜384kHz、(DSD)2.8MHz・5.6MHz・11.2MHz・22.6MHz ●歪率(THD):< 0.001% ●S/N:116dB ●アナログ出力:RCA×1、XLR×1 ●デジタル出力:RCA 同軸×1 ●デジタル入力:RCA同軸×4、BNC×1、AES/EBU×1、光TOS×1、USB(Bタイプ)×1●サイズ:270W× 95H×270Dmm ●質量:4kg
【AMP 8】●入力端子:RCA × 1、XLR ×1 ●入力感度:0.7V/10k Ω(RCA)、1.4V/5k Ω(XLR)●連続実効出力(RMS):80W×2(8Ω)/110W×2(4 Ω)●周波数帯域:1Hz〜200kHz + 0/ − 3dB ●スルーレート:60V/μs ●ダンピングファクター:>170 ●S/N:>103/110dB ● ch セパレーション:81/65dB ●THD+N:<0.009% ●電源コンデンサ容量:33.000μF ●電源電圧:100V 50/60Hz ●消費電力:400W(100V/50 or 60Hz)、<0.2W(スタンバイ時)●サイズ:270W×95H×270Dmm ●質量:7.0kg ●取り扱い:(株)太陽インターナショナル
※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」162号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから