【特別企画】オーディオアクセサリー銘機賞2020 グランプリ
クリプトンの技術が集結! バイワイヤー対応の秀逸なスピーカーケーブル「SC-HR2000」を聴く
クリプトンより、PC-Triple Cとマグネシウムの異種素材を採用したバイワイヤー対応ケーブル「SC-HR2000」が誕生。より高い音質を実現するバイワイヤ接続の可能性を大いに広げるものとして注目され、「オーディオアクセサリー銘機賞2020」のグランプリモデルに輝いた。
このSC-HR2000をはじめ、同ケーブルに採用され、単体でも発売されている高域用ケーブル「SC-HR1300」、低域用ケーブル「SC-HR1500」も含め、徹底レビューを実施した。
■クオリティアップ必至! 信頼度抜群のスピーカーケーブル
今年のクリプトンは、アクセサリー系の新製品がやや慎ましいように感じている人はおられないだろうか。切売のスピーカーケーブルが3種類、しかも1種類は残り2つを複合した製品なのだから、華には欠けるかもしれない。しかし用途を考えると、これらは実に頼りになる製品群というほかない。
製品の概要を簡単に述べると、「SC-HR1300」は中心にマグネシウムの単線を抱いたφ0.7mm 6本撚りのPC-Triple C導体という構成で、絶縁体はポリエチレンを採用、ポリエチレンのパイプ2本で芯線を支え、紙で押さえ巻きしてある。「SC-HR1500」はポリエチレンを芯としてφ0.33mmのPC-Triple C線を7本撚り合わせ、6束ロープ撚りにした芯線を持つ。絶縁体はポリエチレン、介在は同社の誇るつなぎ目のないシルクである。
絶対的な導体断面積はSC-HR1500の方が太いが、1本当たりの芯線はSC-HR1300の方が太く、しかも中心の防振材がマグネシウムとポリエチレンというのも大きな違いだ。実はこの両者、同社の新製品スピーカー「KX-5PX」の開発に伴い、内部配線材として企画されたものを商品化したそうで、SC-HR1300がトゥイーター側、SC-HR1500がウーファー側ということである。
そして、その両者を複合した「バイワイヤー用」というべきケーブルが「SC-HR2000」である。断面は十字状に芯線が配され、いわゆるスタッカード線と似た配置である。もちろん、絶縁体や介在などはSC-HR1500と共通の素材が用いられている。この度、スピーカーシステムのKX-5PXを用いて、グランプリ受賞モデルのSC-HR2000を中心に、SC-HR1500とSC-HR1300もテストしてみようということになった。
■バイワイヤーの圧倒的な利点 ― 逆起電力の悪影響を回避できる
試聴に入る前に、いま一度バイワイヤー接続の利点について解説しておこう。ウーファーの大きく重い振動板をアンプで駆動すると、必ずそれが元に戻ろうとする反作用が起こる。スピーカーが発電機になって、ケーブルを電力が逆流するのだ。それを逆起電力という。
逆起電力が小さなトゥイーターへ流れ込んでしまったら、繊細な振動板を揺さぶり、あるいはネットワーク素子へ影響を与えて、音に必ず悪影響が出る。それを防ぐためには、ウーファーの逆起電力を速やかにアンプへ吸収させてやらねばならず、そのためにウーファーとトゥイーターを別々のケーブルでつなぐのだ。
もうひとつ、バイワイヤーの利点として見逃せないのが、ウーファーとトゥイーターにそれぞれ相性の良いケーブルを組み合わせられる、ということである。今回の“New SC-HR series”はまさに、そうした設計がなされたケーブルであると言える。
クリプトンが自社で制作した動画「バイワイヤリングのすすめ」では、スピーカーシステムの最新モデル「KX-5PX」の紹介を始め、バイワイヤリング接続による高音質化のメリット、バイワイヤリング対応のスピーカーケーブル「SC-HR2000」の使用方法を通してバイワイヤリング接続の方法、そしてSC-HR2000ならではのバイワイヤリング接続の特長を紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
■レンジが広く澄み切った音場 バイワイヤの素晴らしさを味わえる
では、バイワイヤーの試聴に入ろう。スピーカーのジャンパー線を外し、SC-HR2000の白、緑の線を高域に、黒、赤の線を低域に接続する。
最初の一音が出た瞬間、レンジが広くふっくらと温かみがある中〜低域とよく伸びる高域を感じた。音の雑味は少なく、澄み切った音場に音像がすっくと定位している。そこから放たれた直接音がホールへ飛び散り、収束していくさまが目に見えるようである。異種素材2束で構成されたこのケーブルは、バイワイヤー接続でもっとも持ち味を出すのであろう。改めてバイワイヤー接続の素晴らしさを確認できた。好ましいケーブルだ。
■SC-HR1300は切れ味鋭く SC-HR1500は量感豊かで穏やか
こうなったら、SC-HR1300とSC-HR1500単体の音も確認しておきたいではないか。ジャンパー線を元へ戻し、まずSC-HR1300からつないで音を聴いてみると、ハイスピードで力強くシャッキリしたサウンドが飛び出してきた。低域方向の量感こそ若干ささやかな感じになるが、この切れ味の鋭さと瞬発力は他をもって代え難い。
一方のSC-HR1500は低域の量感が豊かで、どちらかというとふっくら穏やかな傾向の音作りである。音場はともによく広がるが、こちらはSC-HR1300より少々温かな質感で、一般性という面では、SC-HR1500の方が好まれる人が多いのではないかな、という気もする。
念のため、SC-HR1300とSC-HR1500を使った贅沢なバイワイヤリングも試してみた。すると、面白いことにSC-HR2000で接続した時と音が少なからず違う。SC-HR1300+HR1500では、わりと明るく開放的な方向となったのに対し、SC-HR2000では全体がグッと締まり、音の集中力が高まる方向だ。
好みが分かれる方向ではあるが、実際のところ、この両者では必要なコストがかなり違ってくる。トータルの情報量や器の大きさではほぼ差がない印象だったから、改めてSC-HR2000のコストパフォーマンスの高さを認識することにもなった。何とも魅力的な製品群だ。
(炭山 アキラ)
Specifications
【SC-HR2000】●トゥイーター側ケーブル導体:マグネシウム0.7φ中芯材、PC-Triple C 0.7φ×6本導体、3.9φポリエチレンシース(緑または白)●ウーファー側ケーブル導体:ポリエチレン1.0φ中芯材、PC-Triple C 0.33φ×7本×6束導体、3.9φポリエチレンシース(赤または黒)●介在:絹、紙テープの押さえ巻き●外被:11.5φ耐燃性ポリオレフィン(ダークブルー)
【SC-HR1500】●導体:ポリエチレン1.0φ中芯材、PC-Triple C 0.33φ×7本×6束導体、3.9φポリエチレンシース(赤または黒)●介在:絹、紙テープの押さえ巻き●外被:9.8φ耐燃性ポリオレフィン(ダークブルー)
【SC-HR1300】●導体:マグネシウム0.7φ中芯材、PC-Triple C 0.7φ×6本導体、2.7φポリエチレンシース(赤または黒)●介在:2.7φポリエチレン×2、1.1φポリエチレン×1、紙テープの押さえ巻き●外被:8.0φ耐燃性ポリオレフィン(ダークブルー)
(協力:株式会社クリプトン)
このSC-HR2000をはじめ、同ケーブルに採用され、単体でも発売されている高域用ケーブル「SC-HR1300」、低域用ケーブル「SC-HR1500」も含め、徹底レビューを実施した。
■クオリティアップ必至! 信頼度抜群のスピーカーケーブル
今年のクリプトンは、アクセサリー系の新製品がやや慎ましいように感じている人はおられないだろうか。切売のスピーカーケーブルが3種類、しかも1種類は残り2つを複合した製品なのだから、華には欠けるかもしれない。しかし用途を考えると、これらは実に頼りになる製品群というほかない。
製品の概要を簡単に述べると、「SC-HR1300」は中心にマグネシウムの単線を抱いたφ0.7mm 6本撚りのPC-Triple C導体という構成で、絶縁体はポリエチレンを採用、ポリエチレンのパイプ2本で芯線を支え、紙で押さえ巻きしてある。「SC-HR1500」はポリエチレンを芯としてφ0.33mmのPC-Triple C線を7本撚り合わせ、6束ロープ撚りにした芯線を持つ。絶縁体はポリエチレン、介在は同社の誇るつなぎ目のないシルクである。
絶対的な導体断面積はSC-HR1500の方が太いが、1本当たりの芯線はSC-HR1300の方が太く、しかも中心の防振材がマグネシウムとポリエチレンというのも大きな違いだ。実はこの両者、同社の新製品スピーカー「KX-5PX」の開発に伴い、内部配線材として企画されたものを商品化したそうで、SC-HR1300がトゥイーター側、SC-HR1500がウーファー側ということである。
そして、その両者を複合した「バイワイヤー用」というべきケーブルが「SC-HR2000」である。断面は十字状に芯線が配され、いわゆるスタッカード線と似た配置である。もちろん、絶縁体や介在などはSC-HR1500と共通の素材が用いられている。この度、スピーカーシステムのKX-5PXを用いて、グランプリ受賞モデルのSC-HR2000を中心に、SC-HR1500とSC-HR1300もテストしてみようということになった。
■バイワイヤーの圧倒的な利点 ― 逆起電力の悪影響を回避できる
試聴に入る前に、いま一度バイワイヤー接続の利点について解説しておこう。ウーファーの大きく重い振動板をアンプで駆動すると、必ずそれが元に戻ろうとする反作用が起こる。スピーカーが発電機になって、ケーブルを電力が逆流するのだ。それを逆起電力という。
逆起電力が小さなトゥイーターへ流れ込んでしまったら、繊細な振動板を揺さぶり、あるいはネットワーク素子へ影響を与えて、音に必ず悪影響が出る。それを防ぐためには、ウーファーの逆起電力を速やかにアンプへ吸収させてやらねばならず、そのためにウーファーとトゥイーターを別々のケーブルでつなぐのだ。
もうひとつ、バイワイヤーの利点として見逃せないのが、ウーファーとトゥイーターにそれぞれ相性の良いケーブルを組み合わせられる、ということである。今回の“New SC-HR series”はまさに、そうした設計がなされたケーブルであると言える。
クリプトンが自社で制作した動画「バイワイヤリングのすすめ」では、スピーカーシステムの最新モデル「KX-5PX」の紹介を始め、バイワイヤリング接続による高音質化のメリット、バイワイヤリング対応のスピーカーケーブル「SC-HR2000」の使用方法を通してバイワイヤリング接続の方法、そしてSC-HR2000ならではのバイワイヤリング接続の特長を紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
■レンジが広く澄み切った音場 バイワイヤの素晴らしさを味わえる
では、バイワイヤーの試聴に入ろう。スピーカーのジャンパー線を外し、SC-HR2000の白、緑の線を高域に、黒、赤の線を低域に接続する。
最初の一音が出た瞬間、レンジが広くふっくらと温かみがある中〜低域とよく伸びる高域を感じた。音の雑味は少なく、澄み切った音場に音像がすっくと定位している。そこから放たれた直接音がホールへ飛び散り、収束していくさまが目に見えるようである。異種素材2束で構成されたこのケーブルは、バイワイヤー接続でもっとも持ち味を出すのであろう。改めてバイワイヤー接続の素晴らしさを確認できた。好ましいケーブルだ。
■SC-HR1300は切れ味鋭く SC-HR1500は量感豊かで穏やか
こうなったら、SC-HR1300とSC-HR1500単体の音も確認しておきたいではないか。ジャンパー線を元へ戻し、まずSC-HR1300からつないで音を聴いてみると、ハイスピードで力強くシャッキリしたサウンドが飛び出してきた。低域方向の量感こそ若干ささやかな感じになるが、この切れ味の鋭さと瞬発力は他をもって代え難い。
一方のSC-HR1500は低域の量感が豊かで、どちらかというとふっくら穏やかな傾向の音作りである。音場はともによく広がるが、こちらはSC-HR1300より少々温かな質感で、一般性という面では、SC-HR1500の方が好まれる人が多いのではないかな、という気もする。
念のため、SC-HR1300とSC-HR1500を使った贅沢なバイワイヤリングも試してみた。すると、面白いことにSC-HR2000で接続した時と音が少なからず違う。SC-HR1300+HR1500では、わりと明るく開放的な方向となったのに対し、SC-HR2000では全体がグッと締まり、音の集中力が高まる方向だ。
好みが分かれる方向ではあるが、実際のところ、この両者では必要なコストがかなり違ってくる。トータルの情報量や器の大きさではほぼ差がない印象だったから、改めてSC-HR2000のコストパフォーマンスの高さを認識することにもなった。何とも魅力的な製品群だ。
(炭山 アキラ)
Specifications
【SC-HR2000】●トゥイーター側ケーブル導体:マグネシウム0.7φ中芯材、PC-Triple C 0.7φ×6本導体、3.9φポリエチレンシース(緑または白)●ウーファー側ケーブル導体:ポリエチレン1.0φ中芯材、PC-Triple C 0.33φ×7本×6束導体、3.9φポリエチレンシース(赤または黒)●介在:絹、紙テープの押さえ巻き●外被:11.5φ耐燃性ポリオレフィン(ダークブルー)
【SC-HR1500】●導体:ポリエチレン1.0φ中芯材、PC-Triple C 0.33φ×7本×6束導体、3.9φポリエチレンシース(赤または黒)●介在:絹、紙テープの押さえ巻き●外被:9.8φ耐燃性ポリオレフィン(ダークブルー)
【SC-HR1300】●導体:マグネシウム0.7φ中芯材、PC-Triple C 0.7φ×6本導体、2.7φポリエチレンシース(赤または黒)●介在:2.7φポリエチレン×2、1.1φポリエチレン×1、紙テープの押さえ巻き●外被:8.0φ耐燃性ポリオレフィン(ダークブルー)
(協力:株式会社クリプトン)