XM4ユーザーも買い替えの価値アリ
ソニーNCヘッドホン「WH-1000XM5」レビュー。「これ以上進化できるの?」→「大進化してました」
ワイヤレスノイキャンヘッドホン全体を代表するシリーズの最新モデル、ソニー「WH-1000XM5」(以下、XM5)がつい先日発売となった。
待望の最新モデルではあるものの、もしかしたら、このシリーズのファンこそ、その購入をまだ迷っているかもしれない。先代「WH-1000XM4」(以下、XM4)をよく知っていればこそ、「あの完成度に到達したあの名機からさらに大きな進化なんてできるの?」という疑問を持ってしまうからだ。
だが、結論から述べると、XM5はあのXM4からさらなる “大進化” を実現した驚きのニューモデルとなっている。
ということで今回は、最新ワイヤレスノイキャンヘッドホンにおいて特に大きな要素である、
●ノイキャン性能
●通話性能
●音質
にフォーカスし、その進化ポイントを紹介させていただこう。
ノイキャン性能の大進化はいちばんの驚きだ。XM4は登場時から現在まで「トップクラスのノイキャン性能」という評価をキープしている。なので「ノイキャン性能ってここで打ち止めなのでは?」という停滞感もあったのだが、それをぶち破ってソニーは自己記録を更新してきたのだ。
具体的にはまず、周囲の騒音を補足するマイク周りの技術が、従来の「デュアルノイズセンサーテクノロジー」から、XM5では「マルチノイズセンサーテクノロジー」に進化した。ヘッドホン内外の騒音をより広範かつ高精度にキャッチし、ノイキャン性能向上に貢献している。
そしてXM4に搭載する高音質ノイキャンプロセッサー「QN1」に加えて、XM5には統合プロセッサー「V1」も搭載された。左右各4基のマイクからの信号を両チップを組み合わせて、より緻密に処理し、ここでもノイキャン性能を向上させているのだ。V1は完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」に搭載され、Bluetooth通信とノイキャン処理の両方を任されている強力な統合チップだ。それを追加チップとして搭載するという贅沢さよ・・・。
そのほかノイキャン信号のドライブにも適した専用設計の新規ドライバーなどの効果もあり、ノイキャン性能は大幅向上している。「人の声や日常ノイズなど中高音ノイズを低減」とされているが、それは確かに実感できる。人の声や気配の「ザワザワ」感、空調など機械的ノイズの「チャカチャカ」「カチカチ」とした高音成分など、従来のノイキャンが不得手だったところまで、より綺麗にキャンセルしてくれる印象だ。
通話性能の向上は、XM4に対し、テレワーク需要が高まって以降に開発されたXM5が持つ、特に大きな強みと言えるかもしれない。
複数マイクによるビームフォーミングに加え、機械学習で構築されたアルゴリズムによって、装着しているユーザーの声と周囲の騒音を分離。自分の声だけをより高精度に抽出して相手に届けられるようになった。
ちなみにこの「ユーザーの声だけを抽出」する技術。XM4にも搭載する、ユーザーのしゃべり始めを検知して音楽再生停止&外音取り込み開始する「スピーク・トゥ・チャット」機能にも使われている技術を発展させたものかと思われる。技術の蓄積と応用もさすがソニーだ。
最後に音質をチェック。なお、並べての比較試聴はできなかったため、ここはXM4からの変化ではなく、シンプルにXM5の音のインプレッションとしてお伝えする。再生ソースはApple Musicのロスレス/ハイレゾ配信音源を使用し、スマートフォンからのLDAC伝送という環境で行った。
ハイエンド機らしい低域側や高域側の伸びも当然ありつつ、中域から中低域、ボーカル、ギター、ベースにストリングスなど、主要楽器の「厚み」を感じさせるような帯域の充実が際立つ。「重み」よりも「厚み」と表現したくなる、そのニュアンスを汲んでいただければと思う。
高域側は「クリア」でも「ウォーム」でもなく、「ナチュラル」と表現したくなる感触。解像感などの要素も十分に高めつつ、しかしバキバキの解像感志向で緊張感溢れる音作りにはせず、シルキーな手触りやほどよいリラックス感が持ち味だ。
例えば宇多田ヒカル「BADモード」を聴くと、まず冒頭の吐息のソフトタッチな描写から、宇多田さんの声や気持ちの柔らかさに引き込まれる。ドラムスのモコっとしたアタックの表現も秀逸だ。こういった「最新高音質録音で表現されるビンテージ感」みたいな絶妙なところまで、しっかり届けてくれるのは嬉しい。
ほかにも、ロータリー/フェイズエフェクト的な揺らぎを持ったエレクトリックピアノとギターの音色の、その揺らぎの美しさも見事。このヘッドホンの位相やダイナミクスの再現性、その緻密さを感じさせるポイントだ。
◇
WH-1000XM5は、「ノイキャンと通話の性能はあのXM4からさらに進化!」「ハイエンドな再現性と心地よいナチュラルさが同居する絶妙なサウンド!」という、期待以上の優秀機であることがわかった。
また、今回は触れていないが、他にも新提案機能がいくつかあったりする。XM4ユーザーであっても買い替えの価値あり、新規ユーザーであれば継続販売されているXM4より少し出費を増やしてでも選ぶ価値ありの、おすすめの一台だ。
待望の最新モデルではあるものの、もしかしたら、このシリーズのファンこそ、その購入をまだ迷っているかもしれない。先代「WH-1000XM4」(以下、XM4)をよく知っていればこそ、「あの完成度に到達したあの名機からさらに大きな進化なんてできるの?」という疑問を持ってしまうからだ。
だが、結論から述べると、XM5はあのXM4からさらなる “大進化” を実現した驚きのニューモデルとなっている。
ということで今回は、最新ワイヤレスノイキャンヘッドホンにおいて特に大きな要素である、
●ノイキャン性能
●通話性能
●音質
にフォーカスし、その進化ポイントを紹介させていただこう。
自己記録更新!従来の圧倒的ノイキャン性能をさらに超える、進化した “静寂” を実現
ノイキャン性能の大進化はいちばんの驚きだ。XM4は登場時から現在まで「トップクラスのノイキャン性能」という評価をキープしている。なので「ノイキャン性能ってここで打ち止めなのでは?」という停滞感もあったのだが、それをぶち破ってソニーは自己記録を更新してきたのだ。
具体的にはまず、周囲の騒音を補足するマイク周りの技術が、従来の「デュアルノイズセンサーテクノロジー」から、XM5では「マルチノイズセンサーテクノロジー」に進化した。ヘッドホン内外の騒音をより広範かつ高精度にキャッチし、ノイキャン性能向上に貢献している。
そしてXM4に搭載する高音質ノイキャンプロセッサー「QN1」に加えて、XM5には統合プロセッサー「V1」も搭載された。左右各4基のマイクからの信号を両チップを組み合わせて、より緻密に処理し、ここでもノイキャン性能を向上させているのだ。V1は完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」に搭載され、Bluetooth通信とノイキャン処理の両方を任されている強力な統合チップだ。それを追加チップとして搭載するという贅沢さよ・・・。
そのほかノイキャン信号のドライブにも適した専用設計の新規ドライバーなどの効果もあり、ノイキャン性能は大幅向上している。「人の声や日常ノイズなど中高音ノイズを低減」とされているが、それは確かに実感できる。人の声や気配の「ザワザワ」感、空調など機械的ノイズの「チャカチャカ」「カチカチ」とした高音成分など、従来のノイキャンが不得手だったところまで、より綺麗にキャンセルしてくれる印象だ。
マイク性能も向上!独自アルゴリズムで高精度かつクリアな音声通話が可能に
通話性能の向上は、XM4に対し、テレワーク需要が高まって以降に開発されたXM5が持つ、特に大きな強みと言えるかもしれない。
複数マイクによるビームフォーミングに加え、機械学習で構築されたアルゴリズムによって、装着しているユーザーの声と周囲の騒音を分離。自分の声だけをより高精度に抽出して相手に届けられるようになった。
ちなみにこの「ユーザーの声だけを抽出」する技術。XM4にも搭載する、ユーザーのしゃべり始めを検知して音楽再生停止&外音取り込み開始する「スピーク・トゥ・チャット」機能にも使われている技術を発展させたものかと思われる。技術の蓄積と応用もさすがソニーだ。
厚みがありつつ、高解像度で緻密。表現力も豊かでナチュラルな聴き心地が魅力
最後に音質をチェック。なお、並べての比較試聴はできなかったため、ここはXM4からの変化ではなく、シンプルにXM5の音のインプレッションとしてお伝えする。再生ソースはApple Musicのロスレス/ハイレゾ配信音源を使用し、スマートフォンからのLDAC伝送という環境で行った。
ハイエンド機らしい低域側や高域側の伸びも当然ありつつ、中域から中低域、ボーカル、ギター、ベースにストリングスなど、主要楽器の「厚み」を感じさせるような帯域の充実が際立つ。「重み」よりも「厚み」と表現したくなる、そのニュアンスを汲んでいただければと思う。
高域側は「クリア」でも「ウォーム」でもなく、「ナチュラル」と表現したくなる感触。解像感などの要素も十分に高めつつ、しかしバキバキの解像感志向で緊張感溢れる音作りにはせず、シルキーな手触りやほどよいリラックス感が持ち味だ。
例えば宇多田ヒカル「BADモード」を聴くと、まず冒頭の吐息のソフトタッチな描写から、宇多田さんの声や気持ちの柔らかさに引き込まれる。ドラムスのモコっとしたアタックの表現も秀逸だ。こういった「最新高音質録音で表現されるビンテージ感」みたいな絶妙なところまで、しっかり届けてくれるのは嬉しい。
ほかにも、ロータリー/フェイズエフェクト的な揺らぎを持ったエレクトリックピアノとギターの音色の、その揺らぎの美しさも見事。このヘッドホンの位相やダイナミクスの再現性、その緻密さを感じさせるポイントだ。
WH-1000XM5は、「ノイキャンと通話の性能はあのXM4からさらに進化!」「ハイエンドな再現性と心地よいナチュラルさが同居する絶妙なサウンド!」という、期待以上の優秀機であることがわかった。
また、今回は触れていないが、他にも新提案機能がいくつかあったりする。XM4ユーザーであっても買い替えの価値あり、新規ユーザーであれば継続販売されているXM4より少し出費を増やしてでも選ぶ価値ありの、おすすめの一台だ。