【特別企画】オーディオ銘機賞2024 <特別賞>受賞モデル
DELAの中核オーディオサーバー「N5」が登場!ハイレゾのきめ細やかさも引き出す完成度の高い音楽表現
DELAより、同社の中核を担うオーディオサーバー/ミュージックライブラリ「N5」が発売となった。昨年登場したフラグシップモデル「N1」より採用された両翼が広がるデザインを踏襲、オーディオグレードにふさわしい品位を獲得している。そのサウンドを、USB-DAC接続とネットワーク再生の2通りで探求してみよう。
DELAがセカンドクラスのミュージックサーバー「N5」をリリースした。同社がオーディオグレードのミュージックサーバー、「N1A」と「N1Z」を発表したのは2014年のこと。2022年には究極のモデルともいえる「N1」をリリース。このモデルは「N1Z」の後継機として企画されたのだが、やりたいことを全てやった結果、価格がN1Zと懸け離れたものになってしまった。価格的にN1Zに近いモデルも必要であろうということで企画されたのがN5ということになる。
内容を見ていこう。本機は容量5TBのHDDを記憶媒体とするミュージックサーバーである。電源部はトロイダルトランスを擁するリニア方式だ。いかにも強力そうな電源部は2筐体の「N10」と同等のものだ(トップモデルのN1はさらに強力)。質量は10sで、本格的なオーディオ装置らしい数値となっている。筐体は幅440mmのフルサイズだ。
ベースシャーシは鋼板3mm。トップパネルはアルミヘアライン板3mm。リアパネルはステンレスヘアライン1.5mm。サイドパネルはアルミヘアライン2mm+鋼板1.6mm。インシュレーターはTAOC製グラデーション鋳鉄30mmΦ。部位によって素材を変えているのは固有の共振を嫌ったからだろう。
メイン基板はN1と同様で、NDK社製ウルトラロージッタークロックを採用した新開発のものだ。リアパネルのUSB A端子は2系統でアンフェノール社製の堅牢なものが起用されている(USB3.0×1/USB2.0×1)。LAN端子は3系統あって、ノイトリック社製の通常ポート2系統に加えてSFPポートを1系統装備している。心臓部ともいえる5TBのHDDは振動に強いHS-S2マウントによってシャーシ右手前に取り付けられている。
まずはアキュフェーズの「DP-750」とUSB接続した。音の話をする前に言っておきたいのだが、フロントパネル中央のインジケーターは非常に視認性が良く、スピーカーと同列ポジションに本機をセッティングしていても曲名を確認しやすい。
さて、その音だが、非常に完成度が高い。初期のモデルにあったコンピュータ臭のようなものは影を潜め、いかにもやり手のオーディオメーカーが作り込んだという趣のハイエンドサウンドが生成されている。もちろんワイドレンジである。しかしながら無暗にレンジを拡大したモデルにありがちな音の薄さはなく、音像にはしっかりと肉が乗っている。
音楽的にはハイエンドなデジタル機器らしい客観性を基調としているが、楽曲・演奏を突き放すようなことはなく、聴き手をウキウキさせるようなサムシングを有している。これは本機の記憶媒体が回転するHDDだからかもしれない。回転するメディアには独特のスイング感があるからだ。
ジャズはクールさを基調としている。ホットなセッションのありさまを沈着冷静に描いてくれる。ただしクール一辺倒ではない。ジャズではHDD特有のスイング感が強調されるので、体を動かしてリズムを感じたくなる。SSDの冷厳無比な音もいいものだが、HDDのノリの良さも捨てがたい。
女性ヴォーカルは基本的に清楚な表現ではある。だが、情報量があまりにも多いのでブレス音が生々しく聴こえたり、歌手の口腔内のありさまが見えたり(あくまでもイリュージョンだが)するので、リアリズム的な「肉体表現」がエロティックに感じられる。
クラシックはDSD 2.8MHzを聴いた。ここまで聴いてきたCDクオリティとはキメの細かさが違う。そしてここからが重要なのだが、ハイレゾのキメの細かさが音楽表現にしっかりと活かされている。初期のDELA製品では、このあたりが未熟と感じられることもあったのだが、本機ではいかにもオーディオメーカーが作った完成度の高い音楽表現が得られている。
最後にスフォルツァートのネットワークプレーヤー「DSP-Corvus」とのLAN接続に切り替えた。こちらが本命だな、というのが偽らざる感想だ。アキュフェーズとのUSB接続はレファレンス的ではあるが素っ気ないのに対して、スフォルツァートと組み合わせるとエンジニアの音楽性が音に乗るので好ましい。
オーディオ機器らしいミュージックサーバーの誕生を喜びたい。
(編集部追記)
メルコシンクレッツは、2023年11月29日より、DELAのミュージックライブラリ「N5」「N1」用ソフトウェアとして、Ver.1.03の無償提供を開始している。今回のアップデートは、CDリッピングや自動電源オフ機能などの動作や画面表記の改善を含んでいる。
(提供:メルコシンクレッツ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です。
強力なリニア電源を搭載、本格的なオーディオ仕様を追求
DELAがセカンドクラスのミュージックサーバー「N5」をリリースした。同社がオーディオグレードのミュージックサーバー、「N1A」と「N1Z」を発表したのは2014年のこと。2022年には究極のモデルともいえる「N1」をリリース。このモデルは「N1Z」の後継機として企画されたのだが、やりたいことを全てやった結果、価格がN1Zと懸け離れたものになってしまった。価格的にN1Zに近いモデルも必要であろうということで企画されたのがN5ということになる。
内容を見ていこう。本機は容量5TBのHDDを記憶媒体とするミュージックサーバーである。電源部はトロイダルトランスを擁するリニア方式だ。いかにも強力そうな電源部は2筐体の「N10」と同等のものだ(トップモデルのN1はさらに強力)。質量は10sで、本格的なオーディオ装置らしい数値となっている。筐体は幅440mmのフルサイズだ。
ベースシャーシは鋼板3mm。トップパネルはアルミヘアライン板3mm。リアパネルはステンレスヘアライン1.5mm。サイドパネルはアルミヘアライン2mm+鋼板1.6mm。インシュレーターはTAOC製グラデーション鋳鉄30mmΦ。部位によって素材を変えているのは固有の共振を嫌ったからだろう。
メイン基板はN1と同様で、NDK社製ウルトラロージッタークロックを採用した新開発のものだ。リアパネルのUSB A端子は2系統でアンフェノール社製の堅牢なものが起用されている(USB3.0×1/USB2.0×1)。LAN端子は3系統あって、ノイトリック社製の通常ポート2系統に加えてSFPポートを1系統装備している。心臓部ともいえる5TBのHDDは振動に強いHS-S2マウントによってシャーシ右手前に取り付けられている。
冷静沈着でありながら特有のスイング感も魅力
まずはアキュフェーズの「DP-750」とUSB接続した。音の話をする前に言っておきたいのだが、フロントパネル中央のインジケーターは非常に視認性が良く、スピーカーと同列ポジションに本機をセッティングしていても曲名を確認しやすい。
さて、その音だが、非常に完成度が高い。初期のモデルにあったコンピュータ臭のようなものは影を潜め、いかにもやり手のオーディオメーカーが作り込んだという趣のハイエンドサウンドが生成されている。もちろんワイドレンジである。しかしながら無暗にレンジを拡大したモデルにありがちな音の薄さはなく、音像にはしっかりと肉が乗っている。
音楽的にはハイエンドなデジタル機器らしい客観性を基調としているが、楽曲・演奏を突き放すようなことはなく、聴き手をウキウキさせるようなサムシングを有している。これは本機の記憶媒体が回転するHDDだからかもしれない。回転するメディアには独特のスイング感があるからだ。
ジャズはクールさを基調としている。ホットなセッションのありさまを沈着冷静に描いてくれる。ただしクール一辺倒ではない。ジャズではHDD特有のスイング感が強調されるので、体を動かしてリズムを感じたくなる。SSDの冷厳無比な音もいいものだが、HDDのノリの良さも捨てがたい。
女性ヴォーカルは基本的に清楚な表現ではある。だが、情報量があまりにも多いのでブレス音が生々しく聴こえたり、歌手の口腔内のありさまが見えたり(あくまでもイリュージョンだが)するので、リアリズム的な「肉体表現」がエロティックに感じられる。
クラシックはDSD 2.8MHzを聴いた。ここまで聴いてきたCDクオリティとはキメの細かさが違う。そしてここからが重要なのだが、ハイレゾのキメの細かさが音楽表現にしっかりと活かされている。初期のDELA製品では、このあたりが未熟と感じられることもあったのだが、本機ではいかにもオーディオメーカーが作った完成度の高い音楽表現が得られている。
ネットワークプレーヤーでは作り手の音楽性も見える
最後にスフォルツァートのネットワークプレーヤー「DSP-Corvus」とのLAN接続に切り替えた。こちらが本命だな、というのが偽らざる感想だ。アキュフェーズとのUSB接続はレファレンス的ではあるが素っ気ないのに対して、スフォルツァートと組み合わせるとエンジニアの音楽性が音に乗るので好ましい。
オーディオ機器らしいミュージックサーバーの誕生を喜びたい。
(編集部追記)
メルコシンクレッツは、2023年11月29日より、DELAのミュージックライブラリ「N5」「N1」用ソフトウェアとして、Ver.1.03の無償提供を開始している。今回のアップデートは、CDリッピングや自動電源オフ機能などの動作や画面表記の改善を含んでいる。
(提供:メルコシンクレッツ)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です。