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【特別企画】創業15年を超えた新たな挑戦

ティグロンのフラグシップ「3000シリーズ」が始動!電源ケーブル“白虎”には音楽の魂が宿る

公開日 2024/05/02 06:30 炭山アキラ/園田洋世
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今年で創業15年を迎えたティグロンが新たなるステージに向けて舵を切った。これまでの最高峰「2000シリーズ」を超え、さらなる次元へと向かうべく「3000シリーズ」のプロジェクトが始動、新技術「フォトンテクノロジー」を採用した電源ケーブル「White Tiger」(白虎)の魅力をレポートする。

TIGLON 電源ケーブル「TPL-3000A-WT “White Tiger”」(価格:363,000円/1.2m、396,000円/1.8m・以下税込)※受注生産

伝送を安定させる「フォトンテクノロジー」を初搭載(炭山)



ティグロンのケーブルといえば、個人的に2000シリーズでとどめを刺したかな、と思っていた。高解像度かつ伸びやかで、繊細だが神経質にならず、肩の力は抜けているが“眠い音”とはまるで対極にある、もう絶妙としかいいようのない塩梅の上に成立した超高品位ケーブルという印象だからだ。

しかし、同社のケーブル・ワールドにはまだ先があった。2023年の末頃に登場した電源ケーブル「MS-DR20A-AD “Azure Dragon”」は、「TPL-2000A」の半額以下ながら、瑞々しくよく伸びるフレッシュな音を聴かせてくれる。

そしてこの春、同社はさらに高い山へ登ろうとしている。電源ケーブルを第1弾とする3000シリーズの開発だ。「TPL-3000A」は“White Tiger”の異名を持つ。Azure Dragonは青龍、こちらは白虎だから、龍虎そろい踏みということになる。

今作で最も注目すべきは、特許申請中の新技術フォトンテクノロジーであろう。まだ詳しくは述べられないそうだが、導体中のエネルギー伝送を画期的に安定させる技術という。

同社の基幹技術というべき、高周波も機械振動も効率良く取り去ってくれるマグネシウムシールドはもちろん採用されているが、TPL-2000Aに装着されているPMFマークIIマグネシウム・フィルターは、フォトンテクノロジーの採用に伴って必要なくなったそうである。

シースは制振効果の高いD-REN素材で、繊維質のスリーブを介し、透明のチューブが最外装となっている。全体に堅めではあるが、しなやかで取り回しはそう難しくない。両端プラグはフルテックFI-50NCF(R)が採用されている。

Azure Dragon -驚異的なスピード感とリアルな再現性-



今回の試聴では、同社が“Azure Dragon”とTPL-2000A、“White Tiger”の3製品を用意してくれたものだから、同条件で3本を聴き比べることとした。自宅レファレンスのプリへ挿して音を聴く。

それでは“Azure Dragon”からいこう。クラシックは音場がクールで見晴らし良く、特に高さ方向に抜けが良く、バンダがスピーカーの遥か外へ定位する。オケの音像は鮮明で、やや軽めだがキビキビとした質感が快い。ジャズは驚異的なスピード感でピシリとアタックを決めるドラムスと、ほんの僅かにローエンド方向が浅めながら、目の前で巨大なウッドベースが弾かれているさまが見えてくるような質感に感激した。

TIGLONの「MS-DR20A “Azure Dragon”」(価格:79,200円/1.2m、89,100円/1.8m)

これだけ引き締まった演奏なのに、聴く者へ緊張を強いない音作りは、やはりティグロンならではであろう。ポップスはヴォーカルの質感が実にきめ細やかで、生楽器も打ち込みも音像がキリッと締まり、音色が多彩で鮮やかなのにゴテゴテした感じが全然ない。

TPL-2000A -演奏のスケールが何倍にも拡大



続いて「TPL-2000A」を装着した。クラシックは音場が一気に奥行き方向へ深くなり、左側方だったバンダの定位が左ずっと奥に変わった。オケ全体もグッと奥へ定位する。全体に音数が増え、弦には厚みが加わり、金管は輝かしく響きつつ、荒れた要素がまったくない。

TIGLONの「TPL-2000A」(価格:198,000円/1.2m、214,500円/1.8m)

低域はどっしりと全体を支えながら、グランカッサは広大なホールの空気全体を揺り動かす。ジャズはさらにドラムスがパワフルかつ切れ味鋭く炸裂し、ウッドベースはその巨躯に身がギュッと詰まったような実体感を聴かせる。ボリュームは同じなのに、演奏のスケールが何倍にも拡大したような壮大な表現である。

ポップスは耳元で囁くような声のSEが不気味なくらいの生々しさで迫り、メインヴォーカルも抑揚を細かに描写しつつ、スタジオに足を踏ん張って歌っているさまが伝わる。低域はゴツっと角を表現し、それでいながら重苦しくならない。

White Tiger -「音楽の魂」を感じる再現力-



さて、いよいよ“White Tiger”を聴こうか。クラシックは少々力こぶを作ったような力感があった2000と比べ、一気に肩の力が抜け、一陣の風が吹き抜けるような爽やかさを感じさせる。一聴するとごく普通の音に聴こえてしまうかもしれないが、いやこれは違う、普遍だという確信のようなものがひしひし伝わってくる。流麗でいたずらにメリハリを立てないが、指揮者も楽員も温かい血の流れる人間であること、そんな人間が音楽を創り上げていることが胸へ迫り、f/Dレンジとも極めて広く、といった評価をする気がしなくなってくる。

White Tigerには同社のバーンイン技術「H.S.E.exclusive」も活用されている

ジャズはもうドラムスの開始一発でその熱さ、魂の濃さへ心が持っていかれてしまう。沖野賢太郎代表が求められたのは、この「音楽の魂」なのではないか。確認したわけではないが、そんなイメージが再生音から湧き出してくるようだ。

ポップスも音楽が濃い!ヴォーカリストはコケティッシュに、そしてパワフルに歌い、専ら打ち込みで製作されたバックもそこへ濃厚に人間の営為を伝える。長く愛聴する音源だが、こんな表現があるのかと打ち震えることとなった。

せっかく手元に3本あるからと、ディスクプレーヤーに“Azure Dragon”、プリに“White Tiger”、パワーにTPL-2000Aを挿して音を聴いてみたら、もうこれは天国だ。俊敏さにピシリと決まる定位の小気味良さ、モリモリとあふれるようなパワー、そしてそこに音楽の“魂”が宿る。もちろん金額的にも導入は簡単ではないが、1人でも多くの人にこの境地を体験してほしい。

園田氏によるワンポイントレビュー -音色、質感、空間表現がすべて桁違い-



ティグロンの新しいフラグシップ電源ケーブル「TPL-3000A White Tiger」。ひと通り聴いた後、「この音に耳が慣れたら大変なことになる」と慌てて外した。とにかく凄い。

製品には沖野氏のサインとシリアルナンバー、白虎が刻印されている

色々なCDを夢中で聴いた。どれを聴いても驚くばかりだったのだが、たとえば優秀録音『The Sound of TAKETOMI Island-OKINAWA』は圧倒的に低いノイズフロアを背景に波の音、銅鑼、唄、三線、オカリナ、フルート、どれもが超絶高解像度で立体的に描かれる。

クイケン四重奏団『ハイドン:十字架上のキリストの最後の7つの言葉』はピリオド楽器の音色と質感を耳障りなキツさなしに見事に描き、ニュアンス豊かな演奏を堪能させる。

現代的な水準のハイファイではないものの、巧みな歌唱と肉声感豊かな録音で酔わせるアルバム『GOLDEN☆BEST/ハイファイセット・荒井由実・松任谷由実・杉真理作品集』を再生してもビックリする。ワイドレンジを誇るケーブルだと帯域が広いぶん、どうしても相対的に中域を薄くさせてしまいこの手の録音の魅力を損いがちなのだが、「TPL-3000A」は「超」がつくワイドレンジでありながら、どの帯域においても音色、質感、そして空間情報が桁違いに多いからだろう、相対的に薄くなる帯域など存在しない。山本潤子のヴォーカルを初めて聴くレベルできわめて生々しく再生する。

自宅試聴が極めて危険な電源ケーブルである。

(提供:ティグロン)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.192』からの転載です。

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