■「見れば見るほど画質が良くなるテレビ」
周囲の環境や映像の内容に応じて画質を調整する自動補正機能は、いまや高画質テレビの必須機能に挙げられるほど普及が進んでいる。それだけに各社は他社との差異化に工夫を凝らしているのだが、シャープは「好画質センサー」の中身に一歩踏み込み、LV3シリーズでは番組ごとの情報をテレビが学習して「好画質センサー」機能に反映させる学習機能を初めて搭載した。
メーカー推奨の設定に視聴者の好みを反映させることがもともとの「好画質センサー」の狙いだが、新たに学習機能を追加したことで、「見れば見るほど画質が良くなるテレビ」に一歩近付くというわけだ。実際の効果を確認するためには長期間にわたってチェックする必要があるが、なかなか興味深いアプローチだと思う。
■環境に応じて自動で最適な映像にチューニング
画質調整機能を使いこなしているユーザーは少数派というデータがたびたび紹介されていることからもわかるように、いくら凝った調整機能を載せても、それを使いこなすのはけっして簡単ではない。AQUOSには「ぴったりセレクト」というモードがあり、番組の内容と環境に応じて自動的に最適な設定を選んでくれるのだが、この機能は、画質調整に関心のないユーザーにとっても「意外に使える」というのが、筆者の印象だ。
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LV3ラインには多数のAVポジションが用意されている。「ぴったりセレクト」を選べば、視聴環境や番組の内容に応じて自動的に最適な設定に調整してくれる |
たとえば、照明を抑えたリビングルームの環境で映画を見始めるとしよう。室内の明るさは100ルクス前後で、落ち着いた雰囲気がある。その環境で見る映画は色温度が6500Kでバックライトも控えめ、階調豊かな暖色系の映像を堪能することができる。
室内の明るさを200ルクス前後で同じ映画を見ると、色温度は8000K前後に上がり、明るさのピークに力強さが増す。画面全体のコントラスト感を確保するためにバックライトの制御も行われ、適度にメリハリの効いたバランスに変化する。
さらに照度を上げ、日中の室内に近い明るさで見る場合、あるいは実際に外光が入ってくるような環境で視聴する場合は、色温度が段階的に最大12000Kまで上がり、バックライトも最大の設定に移行する。
これだけきめ細かく制御するにも関わらず、明るさや色温度は一定の時間をかけてゆっくりと変化するので、唐突な印象を受けることはなく、視聴の流れを妨げる心配も少ない。もともと映画モードは自然な階調再現を狙っているので、部屋を明るくした状態でも映像の質感に大きな変化はなく、フィルムらしいトーンも健在だ。実用性が高いという意味は、そうした画質の好ましさも含んだ評価である。
■クアトロンだから実現した高精細化技術「フルハイプラスエンジン」
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サブピクセルが増えたことを高精細化に利用した「フルハイプラスエンジン」を搭載 |
既存のテレビとの画質差にすぐ気付く要素として、「フルハイプラスエンジン」の効用にもぜひ注目しておきたい。前項で触れたように、画素間ピッチが細かくなったことを利用して斜め線をよりなめらかに再現する技術で、厳密には超解像とは異なるものの、それに近い精細感の改善を期待できる。斜め線のスムージングが及ぼす効果はあらゆる画像に効いてくるので、フルHDパネルを採用した従来モデルと比べただけでも違いに気付くはずだ。特に、ディテール情報が豊かな映像でその効果が顕著だ。
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