スリムでお洒落なスピーカーがたくさん登場し、高性能で大画面の薄型テレビやDVD/ブルーレイプレーヤーが求めやすい価格で手に入るようになった現在、「ホームシアター」が一部の金銭的に余裕のある人たちの楽しみだった時代は終わった。要はプレーヤーとテレビ、そしてAVアンプ、スピーカーさえ設置すれば「ホームシアター」というものは成立してしまうわけで、その敷居は想像以上にずっと低くなっているのだ。

そして今年、ホームシアターに興味を持っている方におすすめしたい製品がヤマハから登場した。最新機能に対応しながら5万円を切る(それもメーカー価格で!)AVアンプ「AX-V465」である。本機の実力についてはライター折原一也氏のコラムをご覧いただくとして、とにかくそんな素敵な製品が登場したのだから、これまでホームシアターとは無縁の生活を送っていた一般の方に是非AX-V465でサラウンドを体験してもらいたい!そんな思いからモニターを募りAX-V465導入レポートをお送りすることにした。

今回取材に参加していただいたのは都内に住む岡崎涼子さん。「映画や音楽、ゲームが大好きで迫力あるサウンドで映画を観たりゲームをしてみたかった」という岡崎さんの話を聞き、BDレコーダーとwiiを接続することにした。編集部がサラウンドや機器について一通り説明した後、6.3畳の部屋に早速セッティングスタート!

使用した機器
AVアンプ
ヤマハ「AX-V465」
5.1chスピーカーシステム
ヤマハ「NS-210シリーズ」
液晶テレビ
ソニー 「KDL-26J1」
ブルーレイレコーダー
ソニー「BDZ-T75」
家庭用ゲーム機
Wii




実は取材前、一番不安だったのが設置作業だった。どれだけ操作が簡単でも、もし設置がひとりでできないようなら結局「やっぱりAV機器は敷居が高い」で終わってしまう・・・。そんな不安をよそに、岡崎さんはひょいひょいとAX-V465とスピーカーを運んで設置していく。 まずフロントスピーカー2チャンネルを部屋の左右に設置。NS-210シリーズは横幅約10cmとスリムサイズで、違和感なく部屋に馴染んでくれた。しかも軽い!これなら女性でも軽々と持ち運ぶことができる。さてバックに設置するリアスピーカーだが、当初の予定では別途スピーカースタンドを用意してその上に設置しようとしていたが、部屋のちょうどいい場所に可動式のハンガー掛けがあったので、スピーカーにフックを取り付けて壁掛けすることにした。
まずAX-V465をセッティング。代わりましょうかと心配する編集部に「意外に軽い!これなら大丈夫」とひとりで運んで行く岡崎さん テレビボードの両サイドにフロントスピーカーを設置 部屋の後ろにリアスピーカーを壁掛けした
 
210シリーズにはスピーカーケーブルが付属しているが、長さが足りないのと音質向上を図るため、別途用意することに。フロントとセンタースピーカーには2m、リアには7mの同一メーカーのケーブルを使用した。ケーブルの被膜に接触しないように気をつけて接続する サブウーファーとテレビの前にセンタースピーカーを配置し、5.1chサラウンドの設置完了!ちなみにスピーカーの設置については最適なサラウンド感が得られるとされる設置方法がいくつかあるが、AX-V465の取扱説明書では視聴位置からフロント左右の開きが30度、リア左右の開きが60度の設置をすすめている。ただこれはあくまで推奨の設置方法であり、部屋の環境や使用機器によってそれぞれ違うためセッティングに正解はないという考えの専門家は多い



続いてAX-V465にBDレコーダーとテレビ、Wii、そして5.1chスピーカーを接続する。一見難しそうにみえるが、AX-V465の背面端子部は機能を厳選したシンプルな作りになっており、繋ぐ場所がわかりやすい。今回は下記のとおり接続を行った。

▼接続図(クリックで拡大します)

まずブルーレイレコーダーの接続だが、ブルーレイソフトのクオリティを最大限に引き出すためデジタルの映像と音声を1つのケーブルで伝送できるHDMIケーブルを使用する。AX-V465の「HDMI出力」とテレビを、「HDMI1」とブルーレイレコーダーを接続するだけで完了。Wiiは本体にHDMI端子を搭載しておらず、外部機器との接続には専用ケーブルが必要になる。今回は購入時に同梱されている 「 Wii専用AVケーブル (RVL-009)」を 使用した。

今回はこのように背面端子を利用した HDMIケーブルを「HDMI1」に接続 Wii専用AVケーブルを「AV5」に接続

AX-V465の背面端子をチェック!
AX-V465はHDMI入力を4系統と豊富に備えている。レコーダー、プレーヤー、PS3、XboxなどHDMI端子のある機器を簡単に接続できるので、ユーザーにとって大きなメリットだ。08年にヤマハから発売された入力2系統/出力1系統のエントリーモデルDSP-AX463と比べて使い勝手が大幅に進化した。

また左の写真からも分かるとおり、AX-V465では入力ソースごとに映像・音声入力端子をまとめて配置している。HDMI端子以外は映像と音声信号は別に入力する必要があり、AV機器に馴れていない人が接続を難しいと感じてしまう一因だったが、これも解消してくれた!


さてセッティングがすべて完了したら、AVアンプで音場補正を行う。AX-V465に搭載されている「YPAO」という自動音場補正機能は、AVアンプが部屋の環境やスピーカーの配置方法や性能などの細かな情報を測定し最適なバランスでスピーカーから出力されるよう自動で調整してくれるという大変便利な機能だ。この機能のおかげでスピーカーのセッティングも楽になり、どんな部屋でもサラウンド感が得られるようになった。

使い方は至って簡単でフロントパネルにある「OPTIMIZER MIC」端子に付属のマイクを接続するだけ。3分ほどで自動音場補正は完了する。各スピーカーから大きな音が出るので、マイクを接続する前に部屋は閉め切り、サブウーファーは本体の電源を入れ、音量を半分以下、クロスオーバー周波数は最大に設定しておく。

「OPTIMIZER MIC」端子にマイクを接続すると写真のような表示が出る。ENTERボタンを押すと、10、9、8・・・とカウントダウンがはじまり測定がスタートする マイクは視聴する場所で、三脚などを使い耳と同じ高さの位置に設置するのが理想。今回は適切なものがなかったので高さのあるダンボールの上に置いた 自動音場補正がはじまると「わあ!すごいすごい!」とはしゃぐ岡崎さん。でも測定中は静かにする必要があるので編集部が声を出さないようにと必死にジェスチャーで伝える

さらに便利な設定<1> HDMIリンク
AX-V465のリンク設定はリモコンでHDMIコントロールON/OFFを切り替えるだけでOK
テレビの設定画面 BDレコーダーの設定画面
業界最大の6社に対応したHDMIリンク。HDMIケーブルで本機と対応のテレビ(もしくはレコーダー/プレーヤー)を接続すると、テレビのリモコンでアンプの電源ON/OFF、ボリューム調整、入力切り替えなどが行えるという機能だ。 HDMIリンクを機能させるには、事前に本機と接続機器の設定画面で設定することが必要。AX-V465のコントロール機能をONにし、岡崎さんのお宅にあったソニーの液晶テレビとブルーレイレコーダーもそれぞれ設定画面で「HDMI機能制御」を有効にした。

※HDMIリンクに対応している製品はこちらで確認できる


さらに便利な設定<2> リネーム機能
リネーム機能はHDMI1/HDMI2/AV1/AV2・・・といった入力系統に入力ソースを割り充て、ディスプレイに表示できる機能。この機能をうまく利用すればたとえば接続機器が多い場合に、AV1に何を接続したかわからなくなってしまった!ということもなくなるのだ。設定方法は、設定したい入力系統を本機またはリモコンの十字キーで選択し、あとはあらかじめプリセットされているBlu-ray/DVD/SetTopBox/Game/PC/iPodといった入力ソース名の中から好みの名称を選択すれば完了。
今回は入力系統「HDMI1」に「Blu-ray」という名称を割り当ててみた。「HDMI1」を選択し、リモコンの左右のカーソルでBlu-rayを選択してENTERを押す
 

9文字以内なら自由に文字を登録できる。今度は入力系統「AV5」に「Wii」という名称を割り当ててみる。Wiiはプリセットされていないが、リモコンで文字入力してこちらもスムーズに設定できた

さらに便利な設定<3> シーン機能
フロントパネルとリモコンに配置されている「SCENEボタン」は、ワンタッチで入力ソース、音場プログラムなどを選択できるボタン。よく使用する入力ソースを登録しておけば音場プログラムを毎回設定する手間が省ける。岡崎さんはゲームを頻繁に使用するということで「Wii」をSCENEボタンの「TV」キーに割り当てることにした。入力ソースを選択し、音場プログラムを選択したら、あとはリモコンのTVキーを本機に向けて3秒長押しすれば登録された。
リモコンのSCENEボタン。初期設定でTVキーには「AV1」が割り当てられている 音場プログラムはWiiが対応しているサラウンドプログラム「ドルビープロロジックII」 に設定する

「Complete」と表示されるまでキーを長押しして完了




いよいよコンテンツを楽しもう!記念すべきサラウンド初体験に岡崎さんが用意していたのは、ブルーレイソフト「スパイダーマン3」。レコーダーにソフトをセットして再生がはじまる。ここまでナビゲートしてきた編集部もうまくサラウンドが再生されるか、そして岡崎さんが一体どんな反応をするのか、緊張で胸が高鳴る・・・。再生がはじまってしばらくは派手なアクションシーンはないのだが、静かなシーンでも「台詞の厚みが全然違う」「足音やドアの閉まる音とかこれまで気にも留めなかった音が立体的に聴こえてくる!これは凄い!」と的確なコメントを次々と発する岡崎さん。アクションシーンではサブウーファーの迫力ある低音に歓声があがる。映画館さながらの再生環境に終始嬉しそうな表情で作品に見入っていた。

続いて体験したWiiでもサラウンド効果でよりダイナミックなプレイを楽しめる。 「ホームシアターがあるというだけでゲーム好きの友達が集まってきそう(笑) 今度はPS3を繋いでロールプレイングゲームをやってみたい」とゲーム好きの岡崎さんもご満悦の様子。
ブルーレイソフトを視聴する岡崎さん ドルビープロロジックII対応のソフト「Wiiスポーツ」 で遊ぶ

今回ご紹介したAVアンプ「AV-V465」と5.1chスピーカーシステム「NS-210シリーズ」はセットで購入してもメーカー価格で13万円以下と非常にコストパフォーマンスに優れたモデル。これらを家庭に取り入れるだけで「ちょっとワクワクする毎日」を得ることができるのだ。なかなかレジャーにお金をかけづらいこのご時世だからこそ、家庭ではプチ贅沢な時間を過ごしてみてはいかがだろうか?

AVアンプ「AV-V465」とスリムスピーカーのエントリーモデル「NS-210シリーズ」の組み合わせ例

USER's Voice
取材にご協力いただいた
岡崎涼子さん
実はサラウンドのことをいまいち分かっていなくて、取材前にAVアンプとスピーカーを5.1本を設置すると聞いて6.3畳の小さい部屋に入るの!?と思いましたが、設置してみると圧迫感もなくすんなり部屋に溶け込んでくれました。はじめてのサラウンドは本当に興奮しました。最近テレビとブルーレイレコーダーを買い換えたのですが、映像がこんなに綺麗なんだから音も迫力があったほうが絶対いいですね。平日はひとりで好きな映画を堪能したり休日は友達とワイワイゲームしたりと1台でいろいろ楽しめるので、私のように家で過ごすのが好きな人にオススメしたいです。



レポート/折原一也

折原 一也(AVライター)
コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
ヤマハのAVアンプラインナップでは、AX-V465はエントリーに位置づけられる。このクラスの製品は価格と引き替えに音質をやや犠牲をしたものばかりであったが、AX-V465のシステムを実機で視聴し実力で驚き、価格を確かめて二度驚いたことを記憶している。ポイントは上位機種にも通じるしなやかな音と懐の深さにある。例えば、映画を見ていても視聴位置から部屋を満たすような緻密な空間を映画館さながらに作る。スピーカーの存在を忘れる空間としての音、映画を楽しむシステムとしてこの域に到達する製品はこのクラスにはそうはない。最新のHDオーディオ対応という強みで肉厚な音も鳴らし、ボリュームを上げて視聴しても馬脚をあらわす事もない。AX-V465の音質は価格を超え従来シリーズのAVアンプ中級機を上回るものとなるだろう。

もう一つの決め手はシネマDSPの遊び心だ。映画のみならず音楽・スポーツまで、5.1chサラウンドにシネマDPSを追加することで部屋の視聴環境を忘れさせる空間を再現と、購入後にも試して遊べる要素を持つ。シネマDPSでは夜間でも音声を聞き取りやすいナイトリスニング、ヘッドフォンで5.1chを楽しむサイレントシネマも利用可能だ。

また背面に搭載するドックと別売のiPod用ユニバーサルドック「YDS-11」を接続すればiPodの再生も可能だ。圧縮音源を補正するミュージック・エンハンサーにより圧縮音源を補正して高音質に音楽を楽しむことができる。

一台でどんな視聴スタイルにも自由自在に適応できる汎用性からもAX-V465を推薦したい。


YAMAHA AVアンプ 
AX-V465
【SPEC】
●実用最大出力:140W×5 (6Ω、1kHz、10% THD) ●音声入力:アナログ×5、光デジタル×2、同軸デジタル×2、DOCK ●映像入力:コンポーネント×2、D4ビデオ×2、コンポジット×5 ●音声出力:SP OUT×5ch(フロントL/R、センター、サラウンドL/R)、PRE OUT×2(サラウンドバックL/R)、サブウーファーOUT、REC OUT×2 ●映像出力:MONITOR OUT(コンポーネント、コンポジット、D4ビデオ)、REC OUT(コンポジット) ●HDMI:入力×4、出力×1 ●消費電力:175W ●外形寸法:435W×151H×364Dmm ●質量:8.4kg

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