日本が誇る数々の劇場用アニメ作品を積極的にリリースしてきたバンダイビジュアルから、BD、HD DVDフォーマットによるハイビジョン収録商品がリリースされている。ハイクオリティの訴求に意欲を燃やしたBD『メトロポリス』製作現場を訪ねる。
◎取材・執筆/折原一也
●メトロポリス
バンダイビジュアル
¥10,290
BCXA-0012 110分
片面2層
日本語ドルビーTrueHD5.1ch、
日本語リニアPCM
(ドルビーサラウンド)
●スプリガン
バンダイビジュアル
¥10,290
BCXA-0011 92分
日本語ドルビーTrueHD5.1ch、
日本語リニアPCM
(ドルビーサラウンド)
●MEMORIES
バンダイビジュアル
¥10,290
BCXA-0013 115分
片面2層
日本語ドルビー
TrueHD5.1ch、
日本語リニアPCM
(ドルビーサラウンド)
●新SOS大東京探検隊
バンダイビジュアル
¥8,190
BCXA-0009 67分
片面1層
日本語ドルビー
TrueHD5.1ch、
日本語リニアPCM
(ステレオ)
高画質の決め手となるHDマスターのノンリニア編集を担当したチーフエディターの山崎義成氏
今年、バンダイビジュアルが続々とハイビジョンディスクでアニメ作品を発売している。ラインナップされるのは、87年劇場公開のアニメ映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を始め、『機動警察パトレイバー 劇場版』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『スチームボーイ』など、海外でも評価の高い日本のクリエイターによるアニメーション映画作品ばかりである。

BD版の制作にあたって発売元のバンダイビジュアルが目指したのは最高の画質の再現だと言う。今回は最新作『メトロポリス』の制作を手がけたIMAGICAへの取材を試み、そのクオリティへの取り組みを制作の段階から紹介していきたい。

IMAGICA内のプレビュールームにて『メトロポリス』の高音質、高画質に対するこだわりを伺った
『メトロポリス』は手塚治虫の原作を元に2001年に製作されたSFアニメーション映画だ。作品はセル画とCGの融合によって表現され35mmフィルムがマスターポジとして制作されている。IMAGICAでは、BD版のマスター制作にあたって、同社のC-Realityシステムを用いフィルムからHDクオリティのテレシネを行っている。

『メトロポリス』はテレシネされたHDマスターをいかにマスターのまま、BDに再現するかに注力したという。BD版の作品制作では、クオリティを向上させる取り組みにさらに余念がない。フィルムのゴミ・キズ等を100時間以上もの時間をかけ、専用機で画像修復を行い手作業でさらに数日間の時間をかけた何重ものチェックを重ねていく。そしてデジタル技術により、フィルムに存在する映像のゆがみも正しい画に戻す。デジタルアニメーションによく見られる階調部分が境界線状になる現象(マッハバンド)を滑らかにする作業は、IMAGICA独自開発による除去システム「M.A.P.S」を用い、シーンごとに丹念なチェックがされている。
『メトロポリス』のBDマスター制作時にはIMAGICAが独自開発したマッハバンド除去システム「M.A.P.S」が使われている
BDに映像を収録するMPEG-4 AVCへのエンコードは、カスタムテクノロジー社の最新エンコーダーを使用している。圧縮に用いられるビットレートはBDの規格上の上限である40Mbps、平均でも38Mbpsと最大限に画質に振った設定が用いられている。更にはマスターテープの持つ情報を忠実に出すため、パラメーター調整では実に1ヵ月もの時間がかけられ、原画を再現するための試行錯誤が行われた。音質は48kHz/16bitのドルビーTrueHD音声を収録。制作行程で使われているそのままのマスタークオリティを実現している。

最高峰のハイビジョンソフトが揃うバンダイビジュアル作品は、制作環境も最高の条件が揃えられている。今回同時に発売される『スプリガン』『MEMORIES』『新SOS大東京探検隊』の3作品についても、そのクオリティの高さに納得がいくはずだ。
バンダイビジュアル(株)
グローバル戦略グループ
向井地 基起
(株)IMAGICA
映画本部
デジタルメディア製作部
テクニカルオペレーショングループ
臼杵 光顕
(株)IMAGICA
映画本部
デジタルメディア製作部
テクニカルオペレーショングループ
工藤 隆朗