キヤノンからフロントプロジェクターの新モデルが登場した。“パワープロジェクター”「SX7」だ。ターゲットとするユーザーは主にビジネスユースで、光学システムAISYSによる4,000lmの強力な輝度により、明るい部屋でも十分にその実力を発揮できるのが大きな特徴だ。解像度1,400×1,050(SXGA+)のLCOSパネルを搭載し、AV機器から入力したハイビジョン映像ももちろん楽しめる。

SX7は、持ち運んで使うことも想定しており本体重量は4.8kgと軽量。本体がピッタリと収まるキャリングバッグも標準で付属している。

主としてビジネスシーンのプレゼンテーションなどでの使用が想定されているSX7だが、家庭でも使いたくなるような、個性的な“使える”機能を多数搭載している。その機能の魅力を紹介していこう。

高倍率1.7倍電動ズームレンズを装備。中央にあるセンサーが「オートセットアップ」を実現した 接続端子は本体側面に配置。DVI-I←→HDMI変換ケーブルを使えばHDMIからの入力も可能だ 本体やケーブル、リモコンを収納できるキャリングバッグを標準で付属するのはうれしい



SX7の特徴として、ホームシアター向けプロジェクターにも欲しくなる機能が「オートセットアップ」だ。

常設ではないシーンにプロジェクターを導入する際に、やはり手間となるのがセットアップだろう。投写位置の確認はもちろん、フォーカスの設定、そして画面の歪みを整えるキーストーンと、一連のセットアップは初心者には悩みの種であった。

SX7では、これらの悩みを「AUTO SET」のボタン一つで解決する。画面に向けてポンと置いただけの状態から数秒で自動的にフォーカスが合い、歪んでいた画面が整えられ映像ソースまで選択してくれる。実際に使ってみた感想は「圧巻」の一言。画面に映し出された映像は、非常に明るくパワフルで精細感がある。照明を明るいままにした部屋でも文句なしに使える設定を全自動で行ってくれた。

バックライトも内蔵したリモコン。AUTO SETボタンで簡単に映像調整が可能だ 本体にも基本操作ボタンを配置。こちらにもAUTO SETボタンを備える 「オートセットアップ」の実行画面。「はい」を選んでからほんの数秒でセットアップが完了する



もう一つユニークな機能が自動スクリーン色補正だ。これは先ほどのオートセットアップの一部として使用することができる機能で、映写する壁の色に合わせて映像を自動的に調整し、壁の色に影響されずに正しい色を再現してくれる。

実際に使ってみると、この自動スクリーン色補正の働きの大きさには驚かされる。今回、試しに黄色い模造紙で調整を行ってみたが、色補正の働きにより、白の映像もきちんと「白」として表示してくれる。さらに、およそプロジェクターの映像の投写には適さないような緑色の壁にも映してみたが、PCの画面から文字をハッキリと読み取れるほどの精度で、美しい映像を映し出してくれた。この自動スクリーン色補正を活用すれば、すべての壁がスクリーンになるといえよう。

例えば、ビジネスのシーンでは、スクリーンを使った上映環境が整っていない出張先の会議室でも、バッグからSX7を取り出して「AUTO SET」を押すだけで、すぐにプレゼンが開始できるだろう。また、友人の結婚式にSX7をこっそりと持ち込み、その場でセットして秘蔵の映像を上映するようなサプライズな楽しみ方もできるかもしれない。

まさに「壁に向けてセットしてボタンを押すだけ」の高い設置性能。この簡単セットアップによって、SX7はどんな環境でも、誰であっても確実に使えるプロジェクタとして活躍してくれるだろう。

色補正の実力を検証すべく、色のついた紙に投写して実験を行った 結果は一目瞭然。白が白として表示された 音元出版視聴室のうす緑色の壁でも実験。違和感のないきれいな映像が得られた



SX7の明るい画面とお手軽なセッティング機能を使ってみると、何もビジネス用途だけで使うにはもったいなく思えてくる。家族や友人達と楽しみのひとときを過ごすために、家庭のリビングなど広い空間に導入して活用してみてはどうだろうか。高輝度なSX7ならば、“部屋を真っ暗にして本格的に上映しなければ”と肩を張ることなく、部屋は明るいままで高精細な大画面映像を楽しむことができる。自宅の大きな壁をそのままスクリーンにして、様々な映像を楽しんでみよう。

例えばスポーツ観戦。サッカーの試合を大人数でワイワイと楽しむならば、とにかく大画面の映像をで楽しみたい。視界いっぱいに広がる迫力の映像によってスタジアムの興奮がそのままに伝わってくるようになるはずだ。AV的観点から見ると映像のクオリティにもこだわりたくなるが、本機が採用したLCOSパネルは開口率が高くドットの格子感が少ないため、高精細かつ滑らかなハイビジョン映像を楽しむことができる。

サッカーの試合を大画面で堪能。ガンマの設定を「-4」に設定すると、コントラスト感の高い自然の芝の色を表示することができた
さらに細かな映像調整機能も用意している

大人数で楽しむなら、やはりゲームで活用するのも面白い。特にPS3のような超高精細な映像はどれだけ大きな画面でプレイしても美麗な映像を楽しませてくれるし、Wiiのような体感型ゲームは画面が大きければ没入感アップでよりゲームの世界にのめり込める。

家族や親戚たちと集まるホームパーティーの場でも、SX7を手軽にセットすればホームビデオの上映会に早変わりする。最新のハイビジョンビデオカメラで撮影した映像を上映するならば、やはり大画面にこだわりたい。

また、PC画面の投写は家庭でも便利に使えると感じた。PCはパーソナルで使うものと思いがちだが、ノートPCなどの外部出力をケーブル1本で接続するだけで、“大画面でネット・ブラウジング”なんて使い方もできる。SX7とPCをUSB端子で接続すると、セットアップ不要の手軽さでマウス操作や画面スクロールを付属のリモコンでできてしまう。例えば、仲間達と集まって旅行のプランを考えるときに、SX7を使って画面を表示しながら計画を練ればきっと話も弾むことだろう。

筆者が取材に使用するハイビジョンビデオカメラも接続してみた SX7のリモコンを使ってウェブブラウジング。写真はスポットライト機能を使ったところ 本機は、冷却ファンを内蔵コンデンサーで駆動するため、電源OFF後すぐに電源ケーブルを抜くことができる


SX7の持つ、明るい部屋でも使える高輝度な性能、そして簡単で精度の高い設置性能の良さは目を見張るものがある。これだけ手軽に、きれいな映像を楽しめるプロジェクターは他にはまずないだろう。本格的なビジネスユース、ホームシアターはもちろんのこと、様々なシチェーションでアクティティブに活用したい人にとって、SX7はベストパートナーとなってくれるはずだ。





 CANON
 LCOSプロジェクター
 SX7
 732,900円(税込)
 (※写真はクリックで拡大)
映像素子 反射型液晶パネル(LCOS)
液晶パネル 0.7型(1,400×1,050ドット)×3
アスペクト比/4対3
投写レンズ 電動ズーム(1〜1.7倍)
明るさ 4,000ルーメン
コントラスト比 1,000対1
映像入力 ミニD-Sub15ピン×1、DVI-I×1、コンポジット×1、S×1
消費電力 360W
外形寸法 266W×114H×336Dmm(突起部分含まず)
質量 4.8kg
問い合わせ先 キヤノン お客様相談センター
TEL/050-555-90071



■ キヤノン SX7 製品詳細
 http://cweb.canon.jp/projector/lineup/sx7/index.html

■ キヤノン パワープロジェクター ホームページ
 http://cweb.canon.jp/projector/index.html

■ キヤノン ホームページ
 http://canon.jp/


筆者プロフィール
折原一也 Orihara Kazuya

埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。