かつて「ROXY」「ALLORA」というブランドネームを冠した製品を展開し、システムコンポの黄金期を築きあげたケンウッド。そんな同社が08年、満を持して送り出す新ブランドが「Prodino(プロディノ)」である。今回は、オーディオライター 岩井喬氏が開発担当者のインタビューを通してProdinoブランドに迫るとともに、第1弾モデルとしてデビューした「CORE-A55」の実力を検証する。




豊富な入力端子と高性能デジタルアンプを搭載
拡張性の高さが魅力のモデル


この秋、ケンウッドから発売されたコンパクト・オーディオシステム“Prodino”「CORE-A55 」は、デスクトップに設置し、メディアにとらわれず、PCやiPodをはじめとするデジタルオーディオプレーヤーなどと接続することで質感表現豊かなデジタルサウンドが得られる3ピース構造の高品位システムだ。そのため小型なアルミ・ボディに対し、様々な入力端子が装備されており、使い勝手の良さも売りとなっている。筆者も発売前から注目していたシステムである。

「CORE-A55」の特長は、豊富な入力端子及びSDカードスロットを搭載しているという拡張性の高さにある。中でもUSB入力はPCの音声をS/N感の良い高音質で楽しめる点で高く評価したい。例えばCDプレーヤーとの接続であれば光デジタル入力を活用することもできる。また音質チューニングでは同社のスピーカー「LS-K1000」でも鳴らし込みを行ったという、デジタルアンプの完成度の高さも魅力的だ。 ヘッドホン出力については完全に独立した専用設計となっており、通常のヘッドホンのほか、インナーイヤー型、カナル型に最適化されたモードも搭載する。スピーカー共にキャビネットにはアルミを用いており剛性も高い。スピーカーはパッシブラジエーターを搭載することで押し出しのあるキレの良いサウンドを実現。専用スタンドによって仰角も付けられる。

「CORE-A55」のデジタルアンプは豊富な接続端子が魅力だ。フロントにはSDカードスロット、ヘッドホン端子(ステレオミニ)を装備する。
背面はデジタル光、AUX INのほか、PCやデジタルオーディオプレーヤーの接続が可能なUSB、PC IN、ケンウッドのオーディオプレーヤーや専用のiPodドック「PAD-iP7」を接続できるD.AUDIO/PORTABLE IN を装備。

またコンパクトな本機はその設置性も魅力のひとつ。3ピース構成とはいえ、縦・横フリーセッティングに対応するのでデスクトップサイドに置いても邪魔にならない。まずはPC用のシステムとして活用していただき、将来的にスピーカーをより大きなものへと交換し、システムをグレードアップするといったこともスムーズだ。設置環境やライフスタイルに応じて自由にカスタマイズでき、オーディオの楽しみを共有できるのが本機の良さでもある。

スピーカーはキャビネットの胴部分にはアルミの押出材、側版にはアルミダイキャスト材を採用。付属のスタンドはスピーカーの設置角度を0度〜20度まで調整できる。 底部に新開発のパッシブラジエーターを搭載し、低域を強化。小型スピーカーながら押し出しのあるキレのよいサウンドを実現させた。 スピーカーユニットは、新開発の60mmフルレンジユニットを搭載する。振動板はファイバー素材を編み込んだクロスに特殊コーティングを施したハイブリット素材の「MFP振動板」を採用。優れた応答特性を実現させた。



時代のニーズにあった新しいオーディオシステムを1から開発
想像のカラを打ち破るケンウッドらしい製品が誕生した


今回「Prodino」の企画開発を手がけられた同社ホームエレクトロニクス事業統括部 企画技術部の小川靖徳氏より、その開発に当たってのエピソードを伺う機会を得た。

ー まず「Prodino」誕生のいきさつを教えていただけますでしょうか?

(株)ケンウッド ホームエレクトロニクス事業統括部 企画技術部 商品企画グループ長 小川靖徳氏(左)と筆者(右)。インタビューはケンウッドのショールーム「ケンウッド スクエア・丸の内」にて行われた。

ここ数年、業界全体でセットオーディオの市場が縮小してしまいました。これは我々メーカーとしては見過ごせない事態ですが、iPodの登場による音楽やオーディオ業界を取り巻く環境の変化が大きかったことも事実です。ユーザーの皆さんの中には音楽をPCで楽しんでいるという方も多いですし、それならばそうした現代のニーズ、環境に合ったオーディオをやるべきではないかと考えたんです。今、改めてフラットな段階から良いサウンドを提供していくことで、ケンウッドとしての良さを出していけるのではないかと思っています。

ー 高級オーディオから一歩引いたポジションで、入門層からのユーザーをピュアオーディオへ引き上げてくれるような商品展開を続ける同社ならではのスタンスですね。それではこの「Prodino」開発に当たってこだわったポイントを教えていただけますか?

現在、音楽ソースとなるものはiPodやPCをはじめ、ありとあらゆる機器に広がっています。ですから、まずこれらの多様な機器と接続できるようにしたいと考えました。そうしたデスクトップに融和性の高いシステムをつくろうとなると、アクティブスピーカーの形状に行き着きますが、豊富な入力を持たせようとすると大きなサイズになってしまう。そしてこだわりの音質を目指す時、重要となるアンプはセット以外のスピーカーも鳴らせられる本格的な仕様にしなくてはいけない。豊富な入力と能力の高いアンプの搭載を考慮した結果、これはアンプを別筐体で作るべきだという結論に辿り着きました。その後、入出力端子の仕様が決まった時に必要とされるサイズをはじき出し、デザインや音質とのバランスを取って現在の寸法になりました。

機能面ではスピーカー出力と別に、単独でヘッドホン出力用のアンプを搭載しています。極力スピーカーでの音作りをキッチリさせておき、使用ユーザーが多いヘッドホンを使うときも、それに準じた高音質で楽しめるようにと考えました。

ー 縦置きや横置きも視野に入れたデザインも独特なスタイルですよね。

実は一番時間がかかったのがこのデザインなんです。新しいテーマ性ばかり突き詰めると、オーディオ的なベクトルからかけ離れたものになってしまって、高音質を抱かせることが難しくなってしまうのですが、そのバランス取りには多くの時間を費やしました。

当初の予定をオーバーして設計者には大変な苦労をかけてしまいました・・・。その高音質を抱かせるものとして、オーディオ製品にも多く用いられるアルミを全面に使うことになりました。高音質に必要な高剛性とともに洗練された質感高い雰囲気を備えるアルミは、良い音を引っ張るハードの良さとして外せない要素となりました。

ー 様々な想いが凝縮されたシステムになっているのですね。最後に「Prodino」の今後の展開についても教えていただけますか?

アンプは「想像のカラを打ち破る」という意気込みを表現したというタマゴ型のデザイン

セットステレオの良さは多機能なところにもあるのですが、多機能すぎてユーザーの方の中には、全く使ったことのない機能もあったのではないでしょうか。この「Prodino」ではそうしたことがないように機能は絞り込むと同時に、PCと同じように各人でカスタマイズができるようにするというのがコンセプトです。豊富な入力から皆さんのお好みに合ったものを選んでいただけますし、今後はカスタマイズできるようなソース源や周辺機器においてもシリーズ展開をしていこうと考えています。

また同時に近いうちに「CORE-A55」のアンプ部のみの単品販売も行えるよう準備しています。「Prodino」の側面から見るとタマゴ型ですよね?これは想像のカラを打ち破る製品が出てきたぞ!という意気込み、新しいオーディオの誕生をイメージしているんです。

ー 今後の展開も非常に楽しみです。本日はお忙しいところありがとうございました。


ケンウッド スクエア・丸の内


東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1階
(JR・地下鉄 有楽町駅 徒歩3分)
平日/10:00〜18:00
土日・祝/11:00〜17:00

HPはこちら>> http://www.kenwood.co.jp/j/square/index.html



デスクトップ機と思えない高品位なサウンドを鳴らす
ヘッドホンアンプとしても活用できる


デスクトップ機とは思えない品位の高いサウンドで、突き詰めてセッティングすれば定位感はもとより、位相感までキッチリ再現してくれる。ソースに忠実なクリアなサウンドだ。低音の量感もほど良く、キレもあり、ロックを聴いててもリズムがもたつくことなく小気味良い。音ヌケも良く、澄んだボーカルやセリフ表現も美しく、デスクトップという限定された空間であっても、本機だけあれば充分様々なコンテンツも楽しむことができるのではないか。

またコンパクトシステム特有の頭内定位に近い音場ではなく、奥行きを感じる音場感の豊かさも特徴で、長時間聴いていたとしても耳障りにはならないだろう。

加えて特筆すべき点は専用アンプを搭載したヘッドホン出力である。非常にパワフルで音色もニュートラル基調のため、本機をヘッドホンアンプとして活用しても良いくらいだと思える。インナー型でもダイナミックなサウンドを楽しむことができた。今後どのような拡張システムが登場するのか、期待してその時を待ちたいと思う。

アンプの内部構造
プリアンプ段、パワーアンプ段ともにデジタル構成の「フルデジタルプロセッシング」を採用。
またヘッドホン用にチューニングを施した専用のヘッドホンアンプを搭載している。ヘッドホン
は Standard(一般用) / Headphone.1 (インナー型用)/ Headphone.2 (カナル型用)の
セットアップ機能を搭載する。

著者プロフィール
岩井 喬 Takashi Iwai
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。

 
製品スペック

コンパクトオーディオシステム
Prodino CORE-A55  
¥OPEN(予想実売価格45,000円前後)
●実用最大出力:10W+10W(JEITA 4Ω) ●対応メモリー:SD/SDHC/miniSD/microSD/SDHC(対応容量 1GB〜32GBまで)、USB ●再生形式:MP3/WMA/AAC ●定格消費電力:2W ●スピーカー:フルレンジ60mmコーン型 ●外形寸法:<アンプ>82W×179H×154Dmm(縦置き、スタンド含む)、<スピーカー>103W×180H×121Dmm(スタンド含む)
Phile-web 製品データベース ≫KENWOOD の製品サイト  


KENWOOD 関連ページ リンク
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