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対談見出し
前編
前編
 
大見出し
 
AV評論家の林正儀先生と映画ライターの本山由樹子さんに発売されたばかりの3DソフトをDTSサラウンドで視聴していただきました。テレビだけの再生時とサラウンドシステムを繋げた時ではどのような違いが感じられたのか、お二人がそれぞれの感想を語り合います。
 
●登場人物紹介

林 正儀先生(AV評論家)

福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホームシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。

本山由樹子さん(映画・ソフトライター)
映画・ソフトライター。仕事柄、新作ソフトは発売前にソフト会社から送られてくるサンプル盤でチェック。少し前までそのサンプル盤がビデオのことが多く、自宅ではテレビは薄型化しているものの、再生機はDVDとビデオが再生できるデッキを使用している。現在BD購入を検討中とのこと。DTSのことは、「ソフトのロゴはよく見ますが、高音質なサラウンドフォーマットであるということを知っている程度」であるという。
 
 ● 再生ソフトはこちら ●

モンスターハウス / ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント
(c)2006 Columbia Industries,Inc.and GH One LLC.All Rights Reserved.

くもりときどきミートボール / ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント
(c)2009 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.
タイタンの戦い / ワーナー・ホーム・ビデオ
(c)2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
 
 ● 再生使用機器はこちら ●
ホームシアターシステム「BASE-V30HDX」/ オンキヨー センタースピーカー「D-108C」/ オンキヨー リアスピーカー「D-108M」/ オンキヨー
液晶テレビ「KDL-52LX900」/ ソニー
BDレコーダー「BDZ-AX2000」/ ソニー
 
モンスターハウスを視聴
 
モンスター・ハウス
 

本山氏(以下 敬称略):3Dの映画を初めてテレビで見ましたが、映画館で見るよりもさらに飛び出してくる感じがありますね。最近の3D映像は“奥行き感”の表現が大事とよく言われますが、“飛び出してくる”感じもリアルに体験できますし、モンスターハウスと人の大きさの違いがとても自然に伝わります。主人公たちがモンスターハウスと戦うシーンは、3Dだと緊張感が増して、本当に自分に襲ってくるかのような恐怖感があります。

林氏(以下 敬称略):平面的な映像だと遠近感は確かにありますが、前後の奥行き情報はそこまでないですからね。映像が3Dになって、遠景と近景で膨張感が表現されるようになりました。

モンスターハウスが襲ってくるシーンでは、3D+サラウンド再生で本当に自分の方へ向かってくるような恐怖感が
(c)2006 Columbia Industries,Inc.and GH One LLC.All Rights Reserved.

本山:3D映像に加えて、さらに音がサラウンドであることによって、お化けの家に入ってしまうところや、パトカーが家に持ち上げられてしまうところなど、アトラクション感がより高まる感じも受けました。

林:そうですね。確かに遊園地のアトラクションも、自分が体感しないとその楽しさがわからないですよね。

本山:サウンドがより高音質になったことで、自分が実際に映画の舞台にいるような感覚がより強く味わえました。これは今回、はじめにテレビのスピーカーだけで見たときには発見することができなかった、「モンスターハウス」の音の世界が伝わったのだと思います。サラウンドの音が加わったことで、実際に自分が体感しているような実感がより高まりました。

林:テレビのスピーカーだけで聴いているとわからなかった世界観が、5.1ch のサラウンドになってハッキリと見えてきましたよね。

サラウンド音声によって、わくわく感や悲しみなど、キャラクターたちの感情がよりダイレクトに感じられる
(c)2006 Columbia Industries,Inc.and GH One LLC.All Rights Reserved.

本山:わくわく感が増してきますね。本作ではモンスターハウスが抱える悲しい感情を「ウオー!」と叫ぶ声や、家の軋む音で表現しているのですが、そういった細かな音を通した表現もサラウンドではよりリアルに感情までが伝わります。キャラクターたちのセリフを聴いても、それぞれの感情がよりわかりやすくなる印象があります。

 「BASE-V30HDX」にリアスピーカー&センタースピーカーを増設し、5.1ch環境にできる

林:今回視聴したオンキヨーのホームシアターシステム「BASE-V30HDX」は、元々プレーンの状態では2.1chのパッケージですので、アンプに搭載されている“バーチャルサラウンド”と呼ばれる機能を使って、疑似的なサラウンドサウンドを楽しむことができます。この製品の良いところは、通常のセットに、今回後ろに配置したリアスピーカーやセンタースピーカーを追加して“リアル・5.1ch”環境にもできるところです。やはりホンモノのサラウンドを楽しみたいなら、スピーカーも5.1chにした方が圧倒的にリアルですし、音もテレビの画面に張り付いたような状態から、一気に後ろまで広がって立体的になります。音場も広大になって、不思議と低音も力強さを増してきて、自宅で観賞しながら、まるで劇場で映画を楽しむような臨場感が味わえます。もしご自宅の大画面テレビシアターに2.1chのホームシアターシステムを導入する計画があるならば、将来的にリアル5.1chに発展させることができるかを調べておくと良いかもしれませんね。

モンスターハウスを視聴
 
くもり
 

本山:キャラクターが空を見上げるとハンバーガーが降ってくるシーンでは、特に3D映像の効果が高いと感じました。ハンバーガーの雨の中にまるで自分が立っているようにリアルですね。また、テレビのスピーカーだけで聴いていた時には気が付かなかったのですが、サラウンドで視聴すると「ドスッ、ドスッ」、というハンバーガーが地面に落ちてくる音が後ろのスピーカーからも聴こえてきて、主人公の位置関係がさらによくわかりました。音の情報量が全然違いました。

サラウンドでは、空から降ってくるハンバーガーが前後左右様々な場所に落ちてくる音が聞こえる
(c)2009 Sony Pictures Animation Inc. All Rights Reserved.

林:本山さんはご自宅ではいつも、どんな環境で映画をご覧になっていますか。

本山:32薄型の液晶テレビだけで見ています。

林:では今回もテレビのスピーカーだけで聴かれた時には、ご自宅とそんなに感触は変わらなかったのではないでしょうか。

本山:そうですね、確かに自宅とそれほど変わりはありませんでした。

林:無理もないですね。これだけ画面が薄型になると、いくら画面のサイズが大きくなっても、内蔵スピーカーのサイズやパワーはほとんど変わらないはずです。

ゼリーの中をはねるシーンでは、ぷるぷるとした音の質感がサラウンドで表され、視聴室がゼリーの内部であるかのようになった

本山:スパゲティの竜巻が襲ってくるシーンでも、テレビ単体で聴くよりも色々な音を見つけられました。竜巻の轟音も聴こえながら、逃げ惑う人々の声も埋もれてしまわずにちゃんと聴き取れます。同じシーンを家で見た時にはほとんど竜巻の音しか聴こえないのですが、サラウンドだと色々な音が伝わってきます。例えばゼリーのシーンでは、ゼリーのぷるぷるとした質感が3Dの映像とサラウンドが組み合わさって、より一層楽しめると思います。

モンスターハウスを視聴
 
タイタンの戦い
 

本山:この作品について、映像が3Dになったメリットは、空を飛び回るシーンなどの立体感、クラーケンなどの怪物キャラクターたちの巨大なサイズ感が伝わってくることですね。メデューサと戦うシーンでは、まだ敵の姿が主人公たちに見えず、正体がわからない段階で聞こえてくる、地面をズルズルと這うような音や、敵の高笑いが不気味に響く「音の演出」が聴きどころだと思います。

クラーケンやメデューサといった怪物たちと戦う臨場感が、3Dによってより迫力を増した
(c)2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

林:メデューサーがどこにいるかわからないのに、主人公を取り囲んであちこちから笑い声が聴こえてくる。しかも結構高い位置からも響いてきて、緊張感が高まりましたね。

本山:そうですね。

林:この作品は2Dでもご覧になりましたか。

本山:はい。最初に2Dでタイタンを見たときよりも、今回の方がVFXの凄さをより感じられました。たぶん、サラウンド音の威力が大きいのだと思います。全然違う感覚を味わいました。

メデューサを見た者が石になってしまうシーンでは、石化する際の細かい音まで表現されている
(c)2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

林:メデューサに石にされるシーンの音などはいかがでしたか。

本山:「ピリピリピリ」という音ですよね。

林:そうです。石化されて亀裂が入るような音です。

本山:モンスターハウスのときも家のガラスに亀裂が入るシーンがありましたが、サラウンドで聴くと効果音の凄みがさらに増しますね。

林:そうですね。いきなりピリピリッと来るのではなく、最初に少しミシミシという、「これから何かが起こるぞ」という予兆の音があって、それがだんだんと音が迫力を増しながら広がっていって、最後に「パリーン」とくる。非常にリアリティがありますね。

本山:こういう音はサラウンドで楽しまないと、作品の本当の魅力が伝わってこないですよね。

林:そうですね。元々2chのトラックにも音そのものは入っているんですが、ただ、サラウンドで再生してあげないと、空間に表現される細かい音が出てこない。2chで性能のいいスピーカーでもそれなりに音の素材としては出てくるのですが、やはりサラウンドスピーカーを配置したことで、立体的に配置された音が持つ本当の魅力を楽しめるのだと思います。

サラウンドで再生しないと、本当の音の魅力は楽しめない

今回視聴したオンキヨーの「BASE-V30HDX」は、パワー、解像感も非常に良かったと思います。2.1chのシステムが構築できる「BASE-V30HDX」のパケージ本体で、実売の価格が75,000円前後という手軽さも魅力的です。薄型大画面テレビを購入する際には、ぜひ購入時にもらえるポイントなどを活用して、ハイクオリティなサラウンド環境の導入にもチャレンジしてみてほしいですね。

 
●DTSサラウンドでの視聴を終えて(本山由樹子)
 
今回、ブルーレイ3Dソフトは初体験です。家でもメガネをわざわざかけてまで……と正直思っていましたが、映画館以上に飛び出す映像を味わえてビックリ。最近の3D映画は奥行き重視、でも求めていたのはコレ、この飛び出し感!さらにDTSサラウンドの効果も実感、臨場感もリアリティもアップし、作品に浸れました。

『くもりときどきミートボール』は食べ物が雨のように降ってくる音が四方八方から押し寄せ、『モンスターハウス』は怪物屋敷の恐怖感と重量感がアップし、屋敷に追いかけられるシーンでは思わず「逃げろ〜」と叫びたくなるほど。感動したのは、今まで気にもとめなかった草の音やガラスがひび割れる音まで鮮明に聞こえてきたこと。繊細な音も耳をそばだてて聞きたい気持ちになりました。

『タイタンの戦い』は、アニメほどの飛び出し感は味わえなかったものの、スペクタクルシーンはさすが。クラーケンやスコーピオンといったモンスターの凶暴さも素早さも数割増しで、サム・ワーシントンと一緒に戦っているような錯覚に陥り、ロールプレイングゲーム的な楽しさを味わえました。見ているこちらにも相応な体力を要求されているような大音響の連続。1つのシーンに様々な音が散りばめられているのもハッとさせられた要素で、鎧がこすれる音や人が逃げ惑う音、その情報量の多さも新発見でした。
     
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