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I-03の試聴レポート
クラシックでは極上のアナログ再生に極めて近いサウンドで迫力もすごい

テストはエソテリックの試聴室で行った。ディスクプレーヤーは同社のK-01を、スピーカーはタンノイのDC10 Tを用いた。

今回の試聴風景
今回の試聴風景。スピーカーにはタンノイのDC10 T、プレーヤーには人気を集めている最新一体型プレーヤーK-01を組み合わせた。なお、A-02の試聴時のプリアンプはC-03を使用している

まずはI-03を聴いたのだが、いまだかつて体験したことのない音である。エネルギー感は無限とも思えるほどあるのだが、スピーカーの周囲に静謐な気配が漂っているのだ。未来のオーディオサウンドはかくあるべし……。そんな思いが私の脳裏をよぎったのだった。

I-03
I-03

ジャズのピアノトリオは、いわゆるハイスピード・サウンドだ。とくに低音は風のように速く、音場の後方に展開するドラムセットのサウンドがリスニングポジションに到達するまでのタイミングが従来のアンプよりも格段に速いように感じられる。

ベースは通常の音像というよりもむしろ風圧のように表現されるのだが、音程は聴き取りやすい。ピアノは非常に透明だ。とくに和音の響きが美しく、ペダルを動作させたときの音の濁り感がほとんどない。質感には若干の渋味があるのだが、これはタンノイの特徴であろう。

ブラス楽器入りのクインテットは、ジャズ喫茶と感覚的に同レベルの音量を出しても全く問題がないし、小音量時にもスピード感が維持される。

ボーカルは、音像の周りに余計なものがまったくない。空間には声と伴奏のみが浮かび上がり、音楽とリスナーがダイレクトに結ばれているような印象なのだ。

ただし、旧来のアンプにありがちな耳元に囁きかけられるような感覚はなく、客観的な距離感が保たれる。歌詞の聴き取りやすさはハイエンドのセパレート機に勝るとも劣らないだろう。声の質感は清楚系に属するが、サウンドには自然な厚みが備わっている。

クラシックは、エソテリック・レーベルのシャルル・ミュンシュ指揮/パリ管による「幻想交響曲」の終楽章を聴いたのだが、これはすごかった。

同社のリマスターが優れていることもあるのだが、感覚的には極上のアナログ再生に極めて近いサウンドで、この作品特有のティンパニや大太鼓の大活躍がものすごい迫力でリスニングポジションに飛んでくるのだ。

このサウンドを深夜に独りで聴いたら、後で怖くてトイレに行けなくなるかもしれない。これは本作品の「音による恐怖」の表現が十全になされていることを示している。

開発責任者の加藤徹也氏に解説を聞く石原 俊氏
開発責任者の加藤徹也氏に解説を聞く石原 俊氏。真剣そのものだ

 

 
A-02の試聴レポート
ピアノトリオは極めてゴージャスでクラシックは完璧で新発見さえある

次にプリアンプのC-03をシステムに加えてA-02を聴いたのだが、基本的にはI-03と同系統のサウンドである。しかし、出で立ちや振る舞いはまったく異なっている。

A-02
A-02

I-03は、いわばノーメイクの美少女が白いコットンのワンピースを着て素足で砂浜に立っているような印象だ。それに対してA-02は、成長したその少女が、きっちりとメイクをし、スーツを着、ハイヒールを履き、東京ならば銀座を、ベルリンならばウンターデンリンデンを颯爽と歩いているような感じなのだ。

ジャズのピアノトリオは極めてゴージャス。シンバルやハイハットやピアノのフレームは黄金色に輝き、ベースは飴色の胴が見えるかのよう。リズム、ハーモニーとも極めて美しく、低音は風圧感もさることながら重量感と重厚感があり、しかもウーファーが大ストロークで動作している時でもブレーキング性能が極めて高い。

ブラス楽器入りのクインテットはセパレートアンプならではの余裕綽々の表現だ。音像の精密感とエネルギー感はハイエンド機のなかでも最上級に属するだろう。

ボーカルはニュートラルさが支配的だ。このような試聴では濃厚/淡白とか、色気/清楚などといった二元論的なジャッジメントをしがちだが、A-02には何の色づけもなく、歌手が持っているサムシングを表現するのが非常に巧い。

「幻想交響曲」は完璧である。私はこの演奏・録音を聴いて、この作品を耳から勉強してきたつもりだが、今回の試聴では新しい発見がいくつもあった。A-02がオーディオ的にも音楽的にも最上級のパワーアンプであることが確認できたのは大きな収穫であった。

 
新しく登場した2機種の実力と可能性
両機とも音楽を好きになるチャンスをより多く与えてくれる見事なアンプだ
I-03、A-02というかつてない高品位サウンドを有するアンプを試聴し、石原氏も感嘆しきりだった
I-03、A-02というかつてない高品位サウンドを有するアンプを試聴し、石原氏も感嘆しきりだった。もちろん操作感のチェックも行った

I-03とA-02は存在のあり方がまったく異なってはいるが、ハイパワーという共通の命題を背負って生まれてきた。

エソテリックのアンプのハイパワー化の背景には当今のスピーカーの高性能化があったのではないかと筆者は勘ぐったが、同社がハイパワー化の必要性を感じた直接の原因は、プロ用スタジオ・モニター・アンプの設計製作を依頼されたことにあった。

プロの現場ではアンプが極限状況で使用される。極限状況においては、サウンドのわずかな色づけが楽音をマスキングしてしまうため、真の意味でカラーレーションのないニュートラルなアンプが求められる。

その要望に応えた経験が、I-03とA-02には活かされた。現実の家庭において両モデルが極限的領域で使用されるケースはまずないだろう。しかしながらハイパワーとノンカラーレーションが両立したことによる音楽的な意義は非常に大きい。

私たちはその時々の気分で音楽を聴く。それはそれで正しい音楽の聴き方ではある。しかしアンプのパワー不足やカラーレーションによって気分が左右され、本当は好きになるはずの音楽が嫌いになるのはいかがなものか。その意味合いにおいて、両モデルは音楽を好きになるチャンスをより多く与えてくれるアンプなのである。

 

【両機はこんな方におすすめしたい】

I-03はシステム高性能化を追求するオーディオ愛好家へ
アンプ道楽の到達地点を探している方にはA-02を薦めたい

I-03は、システムの高性能化を求めているオーディオ愛好家にお薦めである。

本文にも記したように、現代のブックシェルフ型スピーカーやトールボーイ型スピーカーは、中級機でも超高性能なアンプを要求するケースが多い。もちろんシステムを組んだ当初はアンプに予算を振り分けることができず、ほどほどの性能のモデルで我慢しなければならないが、懐具合の環境が整ったらすぐさまアンプをグレードアップすべきである。

信号が最終的にローパスフィルターを通ることに違和感を覚える方もおられるかもしれないが、フォノイコライザーはLPのRIAAカーブを逆補正するためのフィルター回路であることを思い出していただければPWM方式の良さを認めていただけるのではないだろうか。

一方、A-02はアンプ道楽の最終到達地点を探している方にお薦めだ。

A-02の価格が表示されたクレジットカード支払い機の確認ボタンを押せるのはかなりのオーディオ通であろう。そんな人物はすでに立派な、すなわちドライブが困難なスピーカーを所有しているはずだ。そんなスピーカーを鳴らすためにA-02は生まれたと言っても過言ではない。

また、A-02は数十畳の面積を誇るリスニングルームの体積をサウンドで満たすことも可能だし、十数畳のリビングルームの電源環境でも十全に動作するように設計されている。まさに究極のパワーアンプである。

 

【メーカーから】
ティアック(株) コンシューマーオーディオ事業部 商品部 副部長 加藤徹也 氏

「マスターサウンドワークス」と銘打ったESOTERICブランドのアンプシリーズでは、音楽製作現場のエネルギーをストレートにリスナーに届けるということを追求してきました。

そして今回の新製品A-02、I-03では、音楽のエネルギーをストレートに表現できることに加えて、音の滑らかさや音の弾力といった音の触感の表現、アンサンブルの美しさの表現、そしてミュージシャンたちが演奏で表現している小節と小節の間の音符にはならないようなデリケートな演奏表現などを余すことなく再現できることを目標に、設計、開発しました。

オーディオ機器の存在を忘れ、リスナーがただただ音楽に没頭できるようなオーディオ環境の提供が我々の掲げる「マスターサウンドワークス」の目標であり、今回の新製品A-02、I-03で、「マスターサウンドワークス」も目標に向かって第2楽章に入ることができたと、確信しております。

 
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