|
レポート/斎藤宏嗣 |
フルテック(FURUTECH)は、1988年、古河電工のPCOCCケーブルを海外に供給する販売会社として創立された。その後、国内を含めたワールド・ワイドに展開する企業に発展、独自の製品及び部品で多くのオーディオファンに知られるようになった。現在、アナログ信号及びデジタル情報伝送ケーブル、電源ケーブルや電源ボックス、壁面コンセントなどの高品位製品がカタログにラインナップされるが、それらの関連部品はマニアやコンポーネント機器メーカーにとって不可欠な存在となっている。近年デジタル・システムには欠かせない存在となってきたHDMIケーブルにも早くから参入、独自の世界を構築している。同社の製品は、長年培われたテクノロジーやノウハウを駆使して開発されるが、高品位素材をベースに独自の加工処理技術を施し聴感・視覚上の独自のテイストを演出している。
近年、オーディオシステムの周辺環境をアクセサリーで整える動きが盛んである。これらは各種伝送系ケーブルに始まり、コンポーネント機器のセッティング・ツールに及ぶが、最近、最も注目されているのが電源供給環境の整備である。
この度、フルテックは電源関連パーツやアクセサリー製品の豊富な経験と技術をベースに、まさしく「理想」とも言える電源ケーブル「Alpha
PS-950-18」を開発した。
【SPEC】 |
●導体:α-導体(68本/0.127mm×7)×3、外径:2.8mm
●絶縁体:特殊なポリエチレン(赤、黄、自然色)、外径:5.4mm
●シース-1:RoHS指令適合 カーボンパウダー混入柔軟性PVC(内層)
●シース-2:RoHS指令適合 柔軟性PVC(外層)、外径:16.5mm
●シールド:0.12mm α-導体撚合せ編組
●仕上がり外観:ナイロン糸編組、外径17.5mm
Approx
●最大導体抵抗:4.5Ω/km
●最小絶縁抵抗:2500 MΩ_km
●耐電圧:AC.3000 V/1 min |
|
通常、高品位電源ケーブルは導体や接触部の純度や構成、メッキ処理などがポイントになるが、新製品は新しい視点から生まれている。
新素材α-導体(OCC素材)の高密度導体を採用し、伝送特性に影響をもたらす絶縁材には、振動と外部からのノイズを遮断し柔軟性を合わせ持ったカーボンパウダー混入の高機能PVCを用いた2重シース構造。これによりハイスピードとリアルな音の再生を実現した。
|
|
Alpha
PS-950-18。フルテックの最高級電源プラグ/インレット「FI-50M/FI-50」を使用している |
プラグ/インレット部分は、特注で20AモデルのFI-52シリーズに変更することも可能だ |
接続プラグ部には、発売以来好評を得ているフルテックの最高級プラグ「FI-50M(R)」と「FI−50(R)」を採用。プラグのハウジング部はステンレス合金からの削り出しで、内部には制振性のある特殊樹脂を採用。外側はカーボンファイバーで仕上げた3層構造とした。また、ケーブルクランプ部分には重厚で制振特性を持つ特殊金属を採用し、強力な制振効果を発揮する。
プラグの電極部には高伝導性を有する純銅を採用。ロジウムメッキ処理をした上でαプロセス処理を施した。さらに、独自の「ショートリング機能」を装備。プラグ内部のブレード部と導体の接続部から発生する乱れた電磁不要輻射を吸収し音質を向上させている。
|
|
|
不要な輻射ノイズをリング効果で吸収しアースに落とす「ショートリング機能」を採用 |
ボディ部はナノ・サイズのセラミックパウダーとカーボンパウダーを混入したナイロン+グラスファイバーで電磁振動を効果的に吸収 |
ハウシング部にステンレス合金削出しを用いることでダイナミクスが向上する |
ケーブルは通常使用している状態でも常に電磁不要輻射が発生し、電位の乱れが生じるものだ。中でもいちばん電磁不要輻射が発生する部分は、ケーブルを曲げたり折ったりしている部分。Alpha PS-950-18に採用された「ショートリング機能」は、それらの電磁不要輻射を「リング効果」で吸収しアースに落とすことにより、電位を安定させることができる。さらに、プラグに採用されているFI-50シリーズのステンレス&カーボン・ハウジングはボディ内部のブレード部と導体の接続部から発生する乱れた電磁不要輻射や電磁振動を吸収するため、音質を向上させる効果は絶大だ。この電源ケーブルは、圧倒的な静寂と入力ソースの細部まで克明に描く忠実度をもたらしてくれた。
|
|
|
ハウシングのカーボンは6層のクロスカーボン仕上げ |
特殊形状で接触面積を向上させ確実なケーブルホールドを実現
|
コードクランプ部にもステンレスパーツを採用した強力な制振構造。スタビライザー効果も発揮。 |
従来、本格的な安定化電源による電源環境の向上が最善とされてきが、新製品ではそれらの効果を遙かに凌駕。あたかも発電所とコンポーネントがダイレクトに結ばれたような爽快な世界が出現した。更に、安定化電源のような独特のキャラクターがなく、コンポーネント機器に高純度の電力エネルギーが供給される瑞々しい印象である。
壁面コンセントから電源ケーブルの電力の流れが高品位化されると、次なるテーマは電力を各コンポーネント機器に分岐するコンセント・ボックスである。一般家庭で用いられているテーブルタップでも電力の分岐は可能だが、再生音の品位にこだわると多くの課題が出現する。現在、高品位コンセント・ボックスとして高く評価されている製品は、インレットと多数のコンセントを単純に結んだ構成である。一部に電力エネルギーに重畳する外来雑音を積極的に取り去るフィルター(低域通過型)を装備した製品もあるが、理論的な正しさに反して聴感的に好ましい評価は得られていないことが多い。その原因がフィルターと周辺環境にあることを解明したフルテックは、新たに高品位フィルターを搭載した「f-TP615」を開発した。
|
電源タップ
f-TP615 ¥73,500(税込)
[製品データベース]
*発売時には製品カラーが変更される場合があります |
|
【SPEC】 |
●電圧:125V AC 50/60Hz
●電流:15A
●コンセント:6口
●本体材質:アルミ合金
●外形寸法:約250W×127H×70D mm
●質量:1.2Kgs Approx. |
|
50/60Hzの通過帯域の品位を重視して外来雑音を抑圧する新開発のラインフィルターは、インレットと一体化されたAC1501として登場。加えて、ボックス内の電磁的な環境を整える電磁波吸収材GC-303や新開発のアーキシャル・ロッキング・システムによる処理を施している。ボックスは6Pタイプ。コンセントは、独自の開発になるα導体・金メッキ処理の接合部/ナノサイズのセラミックスを混入したナイロン+グラスファイバー支持部/ポリカーボネート材のカバーで構成されている。高剛性の筐体部を含め全ての金属部には、超低温処理と特殊電磁界処理によるフルテック独自のαプロセス処理が施され、内部配線にはα-22ワイヤー(3.8mm平方、12AWG)の極太ケーブルが採用されている。
|
|
|
写真内左にある黒いブロックが新ラインフィルター。内部配線にはα-22ワイヤーを採用し、電源の流れをスムーズにしている。本体底部には同社の電磁波吸収剤「GC-303」を使用。非接触でのノイズカットを可能にした |
|
筐体底部から電源コンセントのセンターを押し上げることで、各コンセントの固定性を高め振動によるノイズを低減する「アーキシャル・ロッキング・システム」。その制振効果は一目瞭然だ |
従来のフィルター付きコンセント・ボックスの再生音の印象として定着しているイメージは、フィルター効果は認められるものの帯域の拡がりや音の立ち上がりが甘く生気や躍動感に欠ける、というものである。しかし、f-TP615の再生音は、それらの固定概念とは対照的なパターンで、フィルター・タイプの新しい世界を構築している。広々としたレンジの拡がりと帯域内に濃やかな音の粒子を一杯に詰め込んだ高密度なフラット・バランス、音の立ち上がりに対する反応もハイスピードで躍動感も充分。新たに開発されたオーディオ・グレードのフィルターの効用も絶大で、雑音レベルで決まる音が立ち上がる底が深く、独特の静寂感がもたらされる。電磁波吸収材やコンセントの中心をボルトで押し上げるアーキシャル・ロッキング・システムも明快な音像定位とクリーンな音場再現に大いに貢献している。デリケートなプレーヤーやプリアンプなどにとくに有効な製品と言えるだろう。
|
■執筆者プロフィール |
斎藤宏嗣 Hirotsugu Saito
武蔵工業大学電気通信科卒。電機メーカーのエンジニアとして高周波回路とVTRの開発を担当ののち、オーディオ専門誌に執筆を開始する。エンジニアとしての経験を生かした管球アンプの製作で注目を集める。デジタルオーディオにも実験段階から深く関わり、「デジタルオーディオの第一人者」の呼び声が高い。ソフトの録音評でも高い評価を得ており、実際に録音のアドバイザーとして関係した作品はアナログ録音時代から現在に至るまで数多い。スキー、柔道、フライフィッシング、料理、ラジコン、アマチュア無線、フラウトトラベルソやリコーダーの演奏など多くの趣味を持ち、そのどれもが趣味の範疇を超えた腕前を持っているという評判である。 |
|