ホームプロジェクターを発売するブランドとして、ヒューレット・パッカードは馴染みがないかもしれない。まずは、その企業概要から説明していこう。
■ ヒューレット・パッカード「HP」ブランドの歴史
ヒューレット・パッカード(以下、HP)の起源は、1939年にも遡ることができる。HPは、スタンフォード大学のクラスメートだったビル・ヒューレットとデイブ・パッカードによって1939年に創業された。創業当初の主力商品は音響技師が使う計測器であり、その品質が当時映画を制作していたディズニーに認められて大量に使用されたことにより、その名を世に知らしめることとなった。1970年代に入るとHPはコンピューター事業を手がけるようになり、世界でも大きなシェアを誇るコンピューターベンダーの一つとなった。現在では世界170カ国以上でビジネスを展開し、売上高799億ドル、14万5千人の従業員を抱えるほどの規模を誇る企業である。
国内では、1963年に計測機器メーカーの横河電機と合弁で横河・ヒューレット・パッカード(株)を設立。その後事業の主軸をコンピューターに移すにあたり、1995年には単独の日本ヒューレット・パッカード(株)に移行している。現在、国内で発売されている製品としてはコンシューマー向けの製品では、「PSC」シリーズを始めとするプリンター事業や、エンタープライズ向けの大型コンピューターなどで、その名前を耳にしたことのある方も多いだろう。
■ HPの映像事業とグローバルな「デジタルエンターテイメント」戦略
映像事業との関わりでは、コンピューターグラフィックシステムとの関わりも大きく、映画『シュレック』の制作などで有名なドリームワークスへの技術協力のほか、国内の映像プロダクションでもHPのシステムが使用されている例も多くあるという。また、最近では次世代DVD陣営のうちBlu-ray
Disc AssociationのBoard of Directorに名を連ねる一社として、大きな存在感を放っている。
プロジェクター製品の展開については、HPでは以前よりデータ用プロジェクターを2001年から販売している。これは、2002年にHPに合併されたコンパックコンピューターが発売していたもので、コンパックから発売されていた当時はDLPプロジェクターだけではなく液晶プロジェクターも展開していたが、HPブランド以降はDLPデバイスによる製品開発に統一された。データプロジェクター製品は、北米はもちろん世界各国で発売されている。国内では、重さ約1kgを実現してヒットしているデータプロジェクター「HP
Digital Projector sb21」、DLP方式を採用しながら直販価格99,750円を実現した「HP
Digital Projector vp6110」などがある。そして今回、満を持してホームプロジェクターシリーズの投入に繋げてきたのだ。
HPとコンシューマー向けAV機器との繋がりは、オーディオ・ビジュアル愛好家にとってはまだイメージしにくいかもしれない。しかし、今回投入されたホームプロジェクター製品は、HPが2003年より打ち出した世界戦略である「デジタルエンターテイメント」の一つにラインナップされるものだ。これは、HPのテクノロジーによって「デジタル機器で生活をより豊かにする」というコンセプトに基づいた戦略製品群であり、他にもプラズマテレビやリアプロジェクションテレビ、モバイルオーディオプレヤー、メディアセンターPCなども今後ラインナップに追加される予定であるという。国内では、その市場の特徴を考慮してプロジェクターからの投入となったのである。AV機器からスタートした家電メーカーが多い中、世界的なブランド展開を行うHPは総合PCベンダーとして、よりホームユーザーに寄った製品を展開する。今回のラインナップではスタンダードモデルのep7122、エントリーモデルのep7112に加えて、一体型ep9012もリリースした。次項では、最新モデルep7122、ep9012の2モデルについて、その魅力を詳しく見ていきたい。
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