新製品批評
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ユニットどうしのつながりに優れ、音調に一体感が高い

▲「このサイズで、空間をここまで再現できるのは立派」と井上氏

CDはフロント・スピーカーだけで聴くことになるが、このスピーカーの再現性の高さをいっそう実感することができる。スリムなトールボーイ・スタイルでありながらバランスが非常によくとれているのが印象的だ。ユニットどうしのつながりに優れ、音調に一体感が高い。

ジャズはリミッターやコンプレッサーを一切使用していない録音だけに低域の再現力が問われるが、ウッドベースの最低音域まで破綻なく対応し音色にもにじみがない。両エンドをそれほど強調した鳴り方ではないが、ピチカートのタッチを明確に捉え、弾みのいい音調を形成している。ピアノの質感も輪郭が明瞭で響きに厚みがある。高域の感触も伸びやかで、芯がしっかり詰まっていながら硬質になることもなくまた音色がふやけない。立ち上がりが速くエネルギーもきちんと備えている。総体に軽快な再現性だが、音調が上滑りになることはない。

見かけからは意外な心の強さを備えている

ボーイソプラノの透明感も自然に出ている。ハーモニーの分離がよく、余韻が伸びやかでこもりがない。声のディテールを細かく捉え、表情の再現がいたって素直だ。低音の把握もしっかりして弾力的な質感を得ている。

からっとした音調も特質と言ってよく、声楽では余韻がべったり絡むことがなく声の質感が明快だ。ピアノのタッチにもくっきりした輪郭がある。スピードが速く瑞々しい響きを備えているが、それによって不明瞭になることはない。足が地に着いた安定感がある。

オーケストラでも安定度が高く、楽器の分離がいい。それだけ鮮明な描写だが質感が刺々しくなることはなく、細部に潤いのあるニュアンスを常に含んでいる印象だ。響きの整理がよく、大音量でも混然とすることがない。そして盛り上がるに連れて大きなスケールを示す。鮮烈さとダイナミズムを備えた再現性と言ってよく、見かけからは意外な芯の強さを備えた音調である。