DVD、ハイビジョンと映像ソースが多様化するにつれて、I/P変換、スケーリング、ノイズ低減などの映像処理を受け持つビデオプロセッサーの重要性があらためてクローズアップされている。 家庭用機器でもハイビジョンを視聴・録画する機会が増えるとともに、DVDビデオの画質改善も依然として大きなテーマであり、ビデオプロセッサーのさらなる性能向上を求める声は日増しに高まっている。DVDプレーヤー、ディスプレイなど映像機器で採用例が多いファロージャのDCDiは完成度の高いプロセッサーだが、10bit処理対応の新プロセッサーが登場しておらず、現行チップはハイビジョン信号に対応していないなど、いくつかの制約が指摘されている。 そうした状況のなか、マランツは、これまで搭載例のないまったく新しいビデオプロセッサーを、VP-12S3の次世代機に相当するDLPプロジェクターに搭載することを決断した。この新しいプロセッサーの性能はDCDiを確実に、しかも大きく上回っており、仕様から見る限り、その画質改善効果は中途半端なものではあり得ない。現在開発が進められている最新モデルが市場に導入された時点で、大きな反響を巻き起こすことは必至だ。技術の新規性という視点で見ると、おそらく数年に一度の改革といっていい。
新しいビデオプロセッサーは、カナダのジェナム(Gennum)社が開発した「GF9350」である。ジェナム社は放送機器用半導体メーカーとして豊富な実績があり、HD対応の放送機器のほか、データ通信機器にも多くの製品を供給しているという。マランツとはVXP9350の開発を介して共同作業を進めてきた経緯があり、マランツの次世代DLPプロジェクターに載る同チップにはマランツの社名も刻印される。ジェナムにとって民生機市場への展開は初めてのことであり、マランツとの提携、共同開発はメリットが大きいはずだ。
3番めの技術は「ファインエッジ」と呼ばれる補間処理技術で、文字通り輪郭再現の最適化、特にジャギーの改善に絶大な効果を発揮するという。ジェナム社によると、ファインエッジ処理を行っても分解能の低下がほとんど見当たらず、既存技術との差はかなり大きいと思われる。動解像度の改善はスクリーンが大きいほど、また映像信号の解像度が上がるほど顕著に効いてくるので、実際の効果に期待が高まる。
4つめに「フィデリティエンジン」と呼ばれるノイズ除去・ディテールエンハンスアルゴリズムを積んでいる。1画素単位で4-4-4処理を行うというから、まさに気が遠くなるような演算量だ。GF9350の演算速度の速さを実証する技術のひとつといってよい。シュートをつけることなくディテールの切れを改善することと、中間輝度周辺で目立ちやすいノイズを効果的に抑えることが目的で、こちらも「ファインエッジ」同様、オリジナルの映像信号に含まれる情報を犠牲にすることなく、大きな効果を発揮することが期待できる。サンプル画像を見ればその効果の大きさは一目瞭然だ。