先に結論だけ言うと、最新機種の映像には強い感銘を受けた。いままでの画質改善のなかでも、一番大きく本質的な変化といっていい。その詳細を書く前に、まず今回のモデルチェンジについて、具体的な中身をいくつか紹介しておこう。
写真からすぐわかる通り、外見は従来機とほとんど変わっていない。注意深く見ると仕上げ色が明るいホワイト調になり、レンズが少しだけ長くなっている。実際にレンズは本機のために新設計されたもので、従来より焦点距離を長くし、ズーム比とレンズシフト量もそれぞれ拡大したという。天井が高い部屋でも天吊りが容易になるなど、設置しやすさはさらに磨きがかかっている。
ズーム比は1.45倍になって投射距離の範囲が拡大し、レンズシフトは上方向に画面の高さ分まで移動できるようになった。いずれも普通ならレンズ性能に影響を与える変更だが、今回は定評ある画質を確保するために非球面レンズを新たに導入するなど、コニカミノルタのレンズ設計陣が尽力したという。なお、投射距離を短くしたい場合は、従来型レンズを継承したVP-13S1を選べばよい。
そのほか、外見からわかる変化はデジタル映像入力がDVIからHDMIに進化したことだが、HDMIの方がコネクタが細いので、これも設置しやすさに貢献する改善といえる。
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ビデオプロセッサーGF9350
マランツがジェナム社と共同開発した最新ビデオプロセッサー。ハイビジョンとDVDの両方で最高水準のパフォーマンスを発揮する希少なデバイスとして、映像機器メーカーが熱い視線を寄せる |
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TruMotion
HD技術でプログレッシブ変換を最適化処理すると、従来のアプローチ(下写真)より輪郭が出て、解像感も上がる(上写真) |
さて、VP-12S4の最大の注目点は、画像処理の「頭脳」ともいえるビデオプロセッサーに、強力無比の最新素子を投入したことである。ビデオプロセッサーとは、プログレッシブ変換や解像度変換など、重要な画像処理を一手に受け持つLSIのことで、その性能がプロジェクターなど映像機器の画質を大きく左右するとされている。
本機は、カナダのジェナム社製の最新ビデオプロセッサー「GF9350」を搭載しているが、このプロセッサーは、マランツとジェナム社が3年をかけて共同開発を重ねてきたものだという。ジェナム社のプロセッサーを選んだ理由について、本機の開発を担当した横尾氏は「ジェナム社は放送機器向けの高度な技術をもつ企業で、優れた技術開発力を感じました。その可能性にかけたわけです」と、3年前を振り返る。
GF9350の技術的特徴は、ハイビジョン信号に対応したIP変換やフル10bit処理など多岐にわたるが、それらはまさにマランツが長年求めていたものだった。放送機器領域から家庭用機器分野への業務拡大を計画していたジェナム社と、完成度の高いビデオプロセッサーを探していたマランツ。その両社の3年前の出会いがなければ、本機が生まれることはなかっただろう。
ところで、GF9350を採用することによって、映像にはどんな違いが出てくるのだろうか。他のプロセッサーに比べてどんな利点があるのか、ジェナム・ジャパンの三浦氏に尋ねてみると、「ハイビジョンも含めた自然な映像再現力、輪郭のギザギザを目立たなくすること、ノイズを効果的に抑えることなどが、目に見えて優れている利点です」という答えが返ってきた。どれも画面が大きくなるほど効果がわかりやすく、動きへの応答性が優れたDLPプロジェクターでは、特に目立ちやすい内容ばかりだ。映像調整の項目が豊富で、それを登録するメモリーが18個も用意されている点も、こだわりの強い映画ファンには嬉しい機能といえる。
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