世界初のBD/HDDハイブリッドカメラ、HITACHI「DZ-BD7H」

8月2日、日立製作所が発表した世界初のBDビデオカメラ「DZ-BD70」「DZ-BD7H」。“撮る”“見る”“残す”すべてを通して1,920×1,080のフルハイビジョン設計を実現し、記録容量7.5GBの8cm BD-R/-REを記録メディアに世界で初めて採用した新世代ビデオカ メラが登場した。

記録メディアにBlu-ray Discを採用したことで、1,920×1,080画素とフルHD解像度のMPEG4 AVC/H.264映像を、最大約60分記録することができる。光ディスク1枚で、約1時間のフルハイビジョン映像を記録できるBlu-ray Discは、群雄割拠の続くハイビジョンビデオカメラ向け記録メディアの有力な選択肢になることは確実だ。

今回、製品の発表に合わせ、マクセルが8cm BD-Rメディア「BDR60.1P」、8cm BD-REメディア「BDRE60.1P」の2製品を発表、世界最速の8月10日に発売を開始した。言うまでもないことだが、世界初のメディアを採用したビデオカメラに対応するには、同時にメディアの技術開発も欠かせない。今回は、その開発段階から8cm Blu-rayディスクのサンプルを提供して、実用化をバックアップしてきたマクセルの取り組みに注目してみよう。

BD-Rメディア「BDR60.1P」 BD-REメディア「BDRE60.1P」

記録メディアの歴史を振り返ってみると、8cmのビデオカメラ向け光ディスクメディアの実用化には、常にマクセルのDVDメディアが貢献してきた。

2000年8月に発売された日立のDVD-RAM対応のビデオカメラ「DZ-MV100」。世界で初めて8cmのDVDメディアを採用したDVDカムと同時に、マクセルはカートリッジ入り8cm DVD-RAM「DRMS-V28R.1P」を発売している。

2003年には新型DVDカムの登場に合わせて丸形ホルダーを採用した8cm DVD-Rメディア「DRH30.1P」、8cm DVD-RAMメディアの「DRMH60.1P」をリリース、2005年には遂にノンカートリッジで使用できる8cm DVD-R「DR60HG.1P」、8cm DVD-RAMの「DRM60HG.1P」を発売、といった具合だ。

DVDメディアのなかでも、ビデオカメラ用8cmメディアは、特にマクセルが得意とするこだわりの分野なのである。

そして今回、最新のBDビデオカメラ「DZ-BD70」「DZ-BD7H」の登場に合わせて発表されたマクセルの8cm BD-Rメディア「BDR60.1P」、8cm BD-REメディア「BDRE60.1P」。これらの製品を開発するにあたって、マクセルが特に2つの新技術を導入したことに注目したい。

マクセルが8cm BDの開発で導入した一つ目の技術は、8cm BD専用の「MHSS:Maxell High Stabilized Spin技術」(高精度回転安定技術)だ。

MHSS技術によるインバランスの効果を示したグラフ。数値が小さければ小さいほどディスク重量の偏りが小さく、安定した回転が可能になる。マクセルの8cmBD-Rメディアの場合、ディスク重量の偏りはBDの上限値の1.00g・mmを遙かに上回る性能を実現している

8cmディスクは、12cmのディスクと比べ、より高い技術水準が求められる。その背景には、ディスク重量の偏りの小ささを示すインバランスに高い性能が必要なことが挙げられる。例えば12cm DVDメディアではインバランスの規格上限値が「2.50g・mm」であるのに対して、8cm DVDメディアは「1.00g・mm」と60%も高い精度が規定されている。こういった要求精度の高さが、単純に12cmディスクの流用では8cmのディスクの製造が難しい要因となっていたのだ。

BDメディアについても同様の規定が設けられている。マクセルの8cm BDメディアは、インバランス値の規格上限値の要求する性能を優にクリアする高い精度を実現。インバランス特性の良さは、振動の影響を受けやすい屋外撮影時のカメラの安定動作のほか、ディスク読み取り精度を安定させ、読み取り時のドライブへの負担を小さくすることが期待できる。インバランス性能の悪いディスクは、読み取り精度の補正のため消費電力が増加する要因となり、最悪のケースではレーザーのブレによってディスクへの書き込みエラーにも繋がると考えられる。今回マクセルが導入したMHSS技術は、振動発生を抑えて安定した撮影環境を実現するビデオカメラの要求に合致した技術なのである。

もう一つの技術は、マクセルのBDメディアとして初めて採用された、記録面を保護する「HGハードコート」の採用だ。

例えば、秋の運動会シーズンに屋外でディスクを交換する際、ディスク交換時に記録面に手を触れてしまい指紋が付くことが想定される。ディスクにとって指紋は読み取りエラーとなる要因の一つで、大きな指紋が残った状態では記録エラーになってしまう。この指紋を拭き取る際にも、本来は柔らかい乾いた布を使う必要があるが、慌ててティッシュペーパーなどで拭き取ろうとして、余計に記録面にキズが付いてしまった、といったトラブルは、多くの方が経験したことがあるのではないだろうか。

「HGハードコート」では、これらのトラブルを大幅に軽減してくれる。ディスク表面が油脂を弾くことでベッタリと付いた指紋も簡単に拭き取れ、油性マジックのインクを弾くほどの耐性を実現している。ディスク自体の硬度についても水準より大幅に高めているため、例えば砂が付いた手でディスクを扱うような状況でも、読み取りエラーに繋がるキズを軽減する。また、ホコリの付着も防ぐ帯電防止加工もなされている。

【左がハードコートなしのDVD、右が今回の8cmBD】人工指紋液スタンプ後表面写真 (300gf、10秒間転写)
耐指紋性を評価するため、人工指紋液をスタンプした後に撮影した表面写真。BDでは指紋が粒状に弾かれており、拭きとりやすくなっている
【左がハードコートなしのDVD、右が今回の8cmBD】
油性マジックで書き込んだ後の表面写真。DVDは拭き取り不可能だが、BDはインクが弾かれており、拭き取ることができる
【左がハードコートなしのDVD、右が今回の8cmBD】磨耗輪試験後(JIS K7204) ディスク表面写真 試験条件/ 磨耗輪:CS-10F 荷重:250gf 回転数:10回
摩耗輪で250gfの加重を10回かけたときの表面写真。激しく表面が傷んだDVDに比べ、BDはほとんどキズが付いていないことがおわかりいただけるはずだ

HGハードコートの帯電防止効果を示したグラフ。BDのHGハードコート品は10分程度で帯電圧が20%以下まで落ちているが、DVDは時間が経過してもほとんど変化がない

これら「HGハードコート」技術の集大成によってもたらされるのは、ディスクの取り回しの良さだ。指紋やキズ・ホコリ・ヨゴレが付着しにくいうえに、もし付着した場合にも乾いた布などを使って気軽に拭き取れる。これだけの準備をしてあれば、屋外でも安心してディスクを取り扱えるはずだ。

最後になるが、今回日立から発表されたBlu-rayカメラ「DZ-BD70」「DZ-BD7H」のパッ ケージに1枚のメディアが同梱されていることをご存じだろうか。実は、この添付されているメディアは、マクセルによって開発製造された「BDRE60.1P」と同じディスクなのだ。8cm BDメディアを採用した製品として世界初の製品に、カメラ標準として指定されたことの意味は大きい。

二度と撮影チャンスの訪れない大切な映像を撮影するビデオカメラだけに、使用するメディアも特に信頼性を重視して選びたいものだ。8cmディスク開発に長い歴史を持ち、「MHSS技術」「HGハードコート」と最先端の技術を投入したマクセルのBD-R/BD-REメディアであれば、その信頼に応えてくれるはずだ。

DZ-BD7HとBD-Rメディア「BDR60.1P」を使って、実際に屋外での撮影を行った
(左)BD-RのセットはこれまでのDVDと同様。特にBDだからといって注意すべきことはない (右)実際に撮影を敢行。移動しながらの撮影でも、終始安定したディスクの読み書きが行えた
【関連リンク】
マクセル発表のニュースリリース
日立マクセル
Phile-webニュース【マクセル、ビデオカメラ用8cm BD-R/-REディスクを8月10日に発売】
Phile-webニュース【日立、世界初のBD+HDDハイブリッドカメラ“Wooo”「DZ-BD7H」など発売】

折原一也 Kazuya Orihara

埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。