■スピーカーらしくない未来的なフォルムに釘付け

「これがスピーカー?いったいどこから音が出るの?」これが私の母の第一声でした。私は今回のレポートの前にちょっと予習をしておいたので「これとこれがスピーカーで、“タイムドメイン理論"って音を良くする工夫でこんな形をしてるんだって」とは言ってみたものの、良い音で音楽を楽しむのにもやはり“理論"が必要なんですね。

私は現在高校3年生、やっと受験から開放されて今年から待望の大学生です。母はピアノの先生で、私の音楽の先生でもあります。小さな時からピアノの音を聞いて育った私は、聴くのも弾くのもピアノの曲が大好きです。普段聴く音楽もクラシックのピアノ曲が比較的多く、特にドビュッシーが大好きで、将来は大学でケルトの研究をしたいとも思っています。

もちろんジャズやポップスも聴きますが、葉加瀬太郎や加古隆などのクラシックがかったものも多いです。今回は、私の誕生日と少し早い入学祝を兼ねて両親に買ってもらったiPod CLASSICが、この“タイムドメイン理論"でいったいどんな音がするのか、とても興味津々でした。

初めてホームページでスピーカーを見た時に、まずびっくりしたのがあの変わった形でした。頭の部分はラグビーボールの形と言われていますが、未来的と言うのか宇宙船かあるいは何かのアンテナのような…。母と同様、このスピーカー、いったいどこから音が出るの? と思ってしまいました。

頭の部分はピアノのようなぴかぴかの黒、スタンドの部分はやはりピアノの黒とクロームのツートン、そしてiPodを立てるソケットがスタンドの正面に。ソケットにiPodを立てて、ぐるっと周りから見てみると、あっ、このクロームは私のCLASSICの裏側のクロームといっしょなんだ。確かにこれを見たら紛れもなく「made for iPod」がなるほど、と納得できました。特にななめ後からの姿はすごくかっこいいなと思って気に入ってしまいました。いかにもスピーカーと言う姿をしていないので、ためしにいろいろなところに置いてみたら、どこに置いてもとってもおしゃれです。

MXSP-4000.TDと蓼沼さん。斜め後ろからの姿が特にお気に入りという(写真は拡大します) 「どこに置いてもおしゃれ」とMXSP-4000.TDのスタイルを大絶賛(写真は拡大します)

早速音を出してみました。リモコンはとても便利だなと思いましたが、私の手には少しサイズが大きいようです。ボタンも必要最小限の機能だけで使いやすいですが、もう一回りぐらい小さかったらもっとよかったと思います。それと、できたらスピーカー本体の音の大きさがわかると良かったと思いました。

■目の前からスピーカーが消えたような不思議な感覚

ドビュッシーの「月の光」から。出だしのふわっとしたピアノの音がなんだかとても自然に、まるで部屋の空気の中に染み込んで広がっていくように聞こえました。初めは音を小さくして聴いてみましたが、最初に驚いたのはボリュームの大小に関係なく音のバランスがほとんど変わらないことでした。小さな音の時でもしっかりとした「ピアノの音」を聞かせてくれます。だからボリュームを小さくしていても曲のイメージが崩れないで、きちんと音楽の空間を作っているように感じました。これは特にオーケストラを聴いた時に感じました。楽器の一つ一つの音がはっきり聞こえるので、まるで私の目の前に小さなコンサートホールが広がっているようです。これはスピーカーが小さいことの良い所でしょうか。

それにスピーカーが金属のような色だったのでもっとキンキンした音が出るのかなと思っていましたが、全くそんなことはありません。クラシックを聞いたときの母の印象は「音の広がりは確かに良いんだけど、大音量になるとオーケストラの音の厚みがちょっと弱いかな…。ボーカルは良いけどピアノは音が少し割れる印象だね」。やはり少し厳しいです。

音に耳を傾けていると、目の前からスピーカーが消えてしまったような錯覚に陥るのだという(写真は拡大します)

私も母が言うように、ボーカルは確かに良いと思います。元ちとせを聴いてみました。ちょうど元ちとせが中心にいて、その周りに音の世界が広がっているイメージ、ステージが目の前に広がっているって様子がとても印象的です。少しずつボリュームを上げていくと、こんな小さなラグビーボールなのに私が思っていた以上に低音が出てくることにはびっくりしました。低音と言えば、私のパソコンのスピーカーは、大きな音を出そうとすると正面の穴から“ボスボス"という音がひどくなります。でもこのラグビーボールは、後向きに穴が開いているせいで相当大きな音を出しても“ボスボス"が全然気になりません、こんなところも工夫されているんですね。

両側のスピーカーがこっちを向いていないので音の空間がスピーカーを中心に自然に広がって、正面から外れたところにいてもきちんと両方のスピーカーの音を感じられる、これは今までのスピーカーとは全然違うこの形だからかな、と思いました。左右に置く普通のスピーカーのように、目をつぶった時にそれぞれの楽器がどこにあるかと言うことよりも、水彩画を見ているように音楽の世界に「浸って感じさせてくれる」楽しみ方は、このラグビーボールの方が上手だなと思いました。“ふわっと"、“すうっと"…、あまりうまくは言い表せませんが、私の目の前からスピーカーが消えてしまったような音楽の世界はとても不思議な音の広がりと空間です。

このスピーカーはiPod以外の再生装置も外部接続ができるらしいので、私の持っているMDをつないで見ました。これもなかなか良いです。ただ曲によっては、というよりも録音によってキンキンした感じの曲では“COMFORT"ボタンをポチッとすると、ベールをかけたように音の刺激がなくなって聴きやすくなります。「音の粒立ちが…」と父は言いますが、私は全然OKです。

■PCMとMP3の音の差が明確にわかった

PCM録音した曲は予想外でした。やはりいい音です。本当はPCMもMP3もあんまり差がないと思っていたのに、このスピーカーは正直です。通学中に聴いていた曲を家でも気軽に聞こうと思ったらiPod、ゆっくり落ち着いてあるいは気合を入れて音楽を聴こうと思ったらCDをつないで、などと再生装置の使い分けができるのが良いと思います。

最近いろいろなiPod用のスピーカーがありますが「デザインがモダンなのでどこにでも置けるし、どこで聴いても音に偏りがない、見ても聴いても、こういうおしゃれなスピーカーはありそうでないよなあ」とは父の感想です。でもどんなスピーカーもやはり「音楽を楽しむ」って言うところが一番大切じゃないかと私は思います。機能やデザインも大事なところかもしれないけれど、私がやっとこれから一番したかったこと、聴きたかった音楽のために、こんな癒し系のスピーカーがあったんだなぁ、と本当に感激しています。