「iV」はハードディスクにハイビジョン映像を録画できるリムーバブルメディアであり、その特徴として、小型であること、著作権保護機能を持っていることなどが挙げられる。これらについて、説明していこう。

一般的なデスクトップパソコンで使われるハードディスクのサイズは3.5インチだが、「iV」ではノートパソコンでよく使われる、より小型な2.5インチサイズのハードディスクを使用している。そのため、そのカートリッジのサイズは80mm×110mm×12.7mmとごくコンパクトになっている。

「iV」の内部構造。カートリッジにはガラス繊維を配合したプラスチックを採用し、耐衝撃性や耐熱性を高めている

著作権保護については「SAFIA(サファイア)」という著作権保護技術を採用している。これはDpa(社団法人デジタル放送推進協会)にも認定された規格であり、デジタル放送を録画可能な、初めてのリムーバブルハードディスクユニットなのだ。

また、耐衝撃性については、間違って落下したときのダメージを低減するよう、カートリッジ外装をガラス繊維で強化するとともに、アンチショックフレームを採用するなど、さまざまな工夫がされているとのことだ。ハードディスクは衝撃に弱いのが一般的だが、これなら家庭で安心して使うことができる。

シャーシは異物の侵入を防ぐ密閉構造を採用。内部の空気を清浄化する循環フィルターも設けられ、信頼性を高めている 落下などによる衝撃を吸収するアンチショックフレームを採用している

「iV」にはブルーレイと比較した場合、いくつものメリットがある。まずはその大容量による省スペース性だ。「iV」は現時点で最大で250GBという容量を持つが、これは1層のブルーレイディスク(25GB)の実に10倍にもなる。「iV」の容積はブルーレイの一般的な10ミリケースとそれほど大きな差はない。同程度の容積で10倍の容量があることになり、最大で約10倍もの省スペース性を持っていることになる。

250GBの「M-VDRS250G.A」 120GBの「M-VDR120G.A」

さらに、ハードディスクだけにダビング速度が速い。250GBのユニットの場合、データ転送速度は665Mbpsとなる。一般的な2倍速のブルーレイ(72Mbps)と比較すると約9倍程度高速になる。

そして、簡単に取り外し、整理して保管ができる大容量メディアであるため、使い勝手の上でもさまざまなメリットがある。たとえば、家族一人一人がそれぞれ「iV」を持つことで、パーソナルな録画ライブラリーを作ることができる。カセットの色は現在はホワイトのみだが、「将来的にはカラーバリエーション展開を考えている」とのことなので、近い将来に、自分の好みによって色を選べるようになりそうだ。

そして、今後「iV」対応の再生環境が広がれば、どこでも持ち運んで再生することができる。リビングで見られなければ、自室で見るというように、場所にしばられない活用ができるわけだ。また、通常のハードディスクレコーダーでは内蔵ハードディスク以上の容量を録画できないが、「iV」であればカセットを交換することで、いくらでも容量を拡張することができる。このように「iV」はブルーレイと比較しても、さまざまな利点を持っていることになる。
Woooの2008年モデルは全機種録画対応。「iV」ポケットは本体のサイドやチューナー部などに設けられている
この「iV」によるソリューションはまだ始まったばかりであり、今後、さまざまなかたちに発展する可能性を秘めている。まずiVカセット自体の容量に関しては、来年には320GB、2010年には500GBと大容量な「iV」が発売される予定になっている。価格も低下し、1ギガバイト(GB)当たりの単価も下がることでお買い得感も増し、より購入しやすくなることと思われる。

また、著作権保護機能を搭載していることにより、コンテンツ配信業者が、ブロードバンド回線を使ったコンテンツ配信に利用することも可能だ。「iV」を使って、コンビニやキオスクの端末でハイビジョンコンテンツが購入できる日も来るかも知れない。

現在、「iV」に対応した録画・再生機器には、日立の「iV」ポケット付き薄型テレビ“Wooo"や、「iV」ポケット搭載の地デジチューナーユニット「IV-R1000」などがあるが、今後も対応プラットフォームは拡充されていく予定だ。同社によれば、「カーナビなどに採用していただければと考えている。試作機がCEATECなどに出品されていたが、「iV」があればドライブも楽しくなるのではないか」と、車載用機器への展開も見据えている。
マクセルが近く発売する予定の「iV」プレーヤー
新プラットフォームの具体的な製品として、近く「iV」プレーヤーがマクセルから発売される予定になっている。

この「iV」専用プレーヤーは、単にテレビに接続し、「iV」に保存された番組を再生するだけの製品ではない。USBやLANポートを搭載しており、パソコンに接続して動画を再生したり、外付けHDDとして活用したりすることもできる。また、逆にパソコンで作ったハイビジョンムービーをiV対応プレーヤーで再生することもできるなど、幅広い活用が可能だ。

このプレーヤーがあれば、リビングの「iV」対応「Wooo」で録画した「iV」を自室に持っていき、自室のテレビやパソコンで再生するというような使い方が手軽にできるようになる。そして、そのサイズもA4以下(198mm×162.6mm×26mm)とごくコンパクトで、持ち運びも楽なので、必要に応じて家族みんなで使うこともできるだろう。

この「iV」対応プレーヤーの登場により、再生環境が広がることで、「iV」の利用環境は飛躍的に向上し、その本領を発揮することになるだろう。