ORB(オーブ)ブランドでお馴染みのジェーエイアイ(株)は、メカトロニクスメーカーの(株)竹内電機製作所や、金属探知機専業メーカーの日本金属探知機製造(株)をはじめとする「オーブグループ」の設計開発・製造組立工場として、1977年に大阪府摂津市に設立されたハイテク総合技術企業である。主要製品は各種のセキュリティ機器や成型機コントローラーであるが、2003年から球を意味する「ORB」のブランドで独創的なハイエンドオーディオ製品やオーディオアクセサリーを相次いで商品化し、一躍オーディオ界で注目される存在となった。 ORBのオーディオ製品をざっと紹介すると、ハイエンドのアナログオーディオ愛好家向け製品としては、LPレコードの反りを修正するディスクフラッター(DF-01およびDF-02)、使い易くて高精度のデジタル表示針圧計(スタイラスフォースメーターSFM-1、SFM-2)、MC/MMカートリッジの振動系ダンパーを活性化して潜在能力を最大限に引き出すカートリッジエキサイター(CRE-1、CRE-2)、それにハイエンドレコードスタビライザーHP-SSの4品目がある。そして、アナログオーディオ機器にもデジタルオーディオ機器にも顕著な音質改善効果のある静電気除去ツールが、スタティックニュートライザーSN-01とデスタットハンディSN-02である。 音質重視設計の信号切り換え装置としては、ハイエンドマルチチェンジャーMC-333、マルチチェンジャーシステムMC-S1とMC101030、マルチチェンジャーMC-S0とMC-SSの5種類。AC電源タップは、ハイエンドタップシリーズの4個口(HT-4GとHT-4GG)、6個口(HT-6GとHT-6GG)、8個口(HT-8GG)の5種類。ケーブル類ではハイエンドフォノケーブルが1種類、ハイエンドラインケーブル(RCAタイプとXLRタイプ)が合計8種類、ハイエンドスピーカーケーブルが端子付き3種類と切り売り1種類、ハイエンドACケーブルが4種類ある。 小物アクセサリーとしては、3種類のハイエンドインシュレーター、4種類のハイエンドコンセントプレート、3種類のハイエンドACプラグとIECインレットプラグ、2種類のハイエンドACコンセントと1種類の2Pタップ、4種類のハイエンドラグ端子、そして1種類のケーブルロックなど、多岐にわたっている。 ORB製品は、このように音の入口から出口まで、そしてAC給電系に至るまで、ハイエンドオーディオ愛好家向けオーディオ機器やオーディオアクセサリーが豊富に揃っているのだ。 ジェーエイアイは精密機器メーカーなので、高度なハードウェア技術とソフトウェア技術を持っている。しかもセキュリティ機器や成型機コントローラー、金属探知機などオーディオ以外の分野も手掛けているので、そこから得た信号処理技術などのノウハウを活かした、オーディオ専業メーカーとは一味違う独創的な製品が多いのが特長だ。同社の精密電子機器などと同じ製造ラインを用いるなど、生産設備も非常に充実している。 製品づくりに関しては、音質劣化要因を理論的に突き詰めてその対策を講じるなど、理詰めで「本物志向」のオーディオ製品を開発しているのが特徴で、本物志向のオーディオ愛好家に支持されそうな力作製品が多い。 また、社長がアナログオーディオ愛好家であることから、アナログオーディオ用品にはとりわけ力を注いでおり、実体験の中で必要性を感じたものを企画・製造しているという。それゆえ、反ったLPレコードを平らなディスクに修正するディスクフラッター、ワンタッチで針圧が測れるデジタル針圧計、ダンパーが硬くなった古いカートリッジを新品当時のような音に生まれ変わらせるカートリッジエキサイター、レコード盤の帯電を除去して放電ノイズの追放と音質改善する静電気除去装置など、アナログオーディオ愛好家がこれまで待ち望んでいた、かゆいところに手が届く製品が多いのも大きな特徴である。 ジェーエイアイは「多分野にわたる高度な技術力」と「充実した製造設備」をもつ企業ゆえに、将来が非常に楽しみだ。 レコード盤は袋から出す際に摩擦帯電して静電気がホコリを吸い付けるし、再生中もレコード針や空気との摩擦で帯電し、音質を劣化させたり放電ノイズを発生する。静電気は物体どうしの接触、摩擦、剥離で容易に発生するので、CDやDVDなどの光ディスクも帯電し易く、CDプレーヤーのプラスチック製トレイも意外なほど帯電する。静電気測定器で身近な物を実測したら、LPレコード盤は千数百V、CDは数百V、CDプレーヤーのプラスチック製トレイは約千Vに帯電しているのが確認できた。 帯電すると再生音が抑圧感を伴い、音の輪郭が強調されて硬くてザラついた音になる傾向が、アナログディスクにもCDにも見られる。だから音が硬くてザラついて抑圧感があると感じたら、静電気を疑ってみる必要がある。 こういった静電気をイオン照射で中和し、低減させるのが静電気除去装置だ。ORBからは据え置き型のSN-01がすでに商品化されているが、これをハンディタイプにアレンジした新製品がデスタットハンディSN-02である。
外観は送風窓が付いた箱形で、手で持つ部分がやや細くなっており、側面の赤いボタンを押すと起動し、離せば停止する。電源は単3乾電池4本(6V)のDC電源駆動で、重さは370g。消費電流は実測0.7Aだったので、内部抵抗の低いアルカリ電池の使用が望ましい。 内部には円筒状アース電極と、その内部に放射状に6本配置された針状放電電極がある。動作中は両電極間に60kHzでピーク値約5000Vの高圧正弦波電圧を掛けてコロナ放電させ、+と-イオン、およびオゾンを発生する。そして電極の手前に置かれたモーター駆動ファンの風で、発生したイオンを後方に放出するという仕組みだ。オゾン濃度は、日本安全基準濃度値の半分(0.05ppm)以下なので心配ない。 使用法は、本機の裏面を帯電物に向け、10cmほど離した状態で赤いボタンを押し続け、帯電物に満遍なくイオンを含んだ風を吹き付ける。LP盤だと大きいので10秒程度かかるが、CDやCDプレーヤーのトレイなら5秒間吹き付ければ、千数百Vの帯電でも10V以下に低下する。ハンディタイプなのに除電効果は超強力だ。
帯電を除去したことによる音質改善効果は、アナログレコードもCDも同じ傾向である。再生音から硬さがとれて滑らかで潤いのある音になり、弦楽器やボーカルが非常に艶やかになる。またダイナミックレンジの上が延びて躍動感と開放感が増し、たいへんくつろげる音になる。意外だったのはヘッドホンの音質改善効果で、ヘッドホンの振動板や外装に5秒ほどイオン風をあてると、低価格ヘッドホンが高級ヘッドホンのように、マイルドで伸び伸びした高品位なサウンドに生まれ変わる。 絶縁物を用いたオーディオ機器やオーディオディスクは気付かぬうちに帯電し、静電気に起因する音質劣化が生じているのが現状である。ハンディ型のため使い勝手が高く、さまざまなものに効果を発揮するSN-02は、音にこだわるオーディオ愛好家にとって必需品と言えるだろう。 MCやMMカートリッジの振動系を加振して、ダンパーの劣化などに起因する応答性能低下を改善する針先加振器が「カートリッジエキサイター」である。
第2弾となる「CRE-2」は、初代のCRE-1を小型軽量化し、タイマーインジケーターLEDを青から赤に替え、加振周波数を2種類から1種類にして約半額にコストダウンした新製品。しかもDC/DCコンバーターを内蔵して電源が9Vの006P電池から1.5Vの単3電池1本になったので、電池寿命が延びて電池代も安上がりになった。実測した消費電流は、待機時で約30mA、加振時は200mA近く流れるので、内部抵抗の低いアルカリ電池の使用が望ましい。 CRE-2にはマイコン、アンプ、電磁駆動装置(アクチュエーター)、DC/DCコンバーターが内蔵され、正弦波で針置き台を加振する。CRE-1では周波数を600Hzと800Hzに交互に切り換えながら加振したが、CRE-2では発振回路を簡素化して、800Hzの連続加振となっている。 使い方は、まず停止したターンテーブル上に、本機をカートリッジと直角となる向きに置く。電源スイッチをオンすると、白色LEDが針置き台を照らすので、台に貼られた銀色円形シールの中央付近にカートリッジの針先を静かに載せる。そしてスタート/ストップボタンを押すと、白色LEDが消えて、5分ステップのタイマー用赤色LEDが順次点灯し、800Hzの正弦波でアクチュエーターが駆動されて、針置き台が8の字状に微振動する。これによりカートリッジの針先が加振され、振動系のダンパーなどがウォーミングアップされるという仕組みだ。また、このときカートリッジの出力をショートすれば、発電電力でコイル鉄芯の帯磁も解消されるという消磁効果もある。
針置き台の振動はスタートボタンを押してから15分経つと自動停止し、3つのタイマーLEDが点灯したままブザーが鳴って終了を告知するが、動作中にスタート/ストップボタンを再度押せば、途中で中断することもできる。 CRE-2の音質改善効果はCRE-1に引けを取らないぐらい顕著だ。振動系のダンパーが動き易くなるため、とりわけ低音楽器の躍動感と情報量が増強されてダイナミックレンジが上に延び、音量が上がって表情が豊かになる。そして加振時にカートリッジ出力をショートして消磁すると、中域から高域に掛けての躍動感、透明感、解像度が改善される。その効果は、30数年前に購入したアキュフェーズのMCカートリッジ「AC-1」で試したら超劇的で、購入時に味わった感動と興奮が蘇り、まさに「眠れる獅子が目を覚ました」という印象だ。つい最近入手したばかりのシェルター「Harmony」で試してみたら、低域の量感がより豊かになって、顕著な躍動感改善効果があった。 CRE-2は、古いカートリッジには振動系のダンパーを若返らせる効果、新品カートリッジにはエージングを促進してダンパーを熟成させる効果があり、カートリッジから潜在能力を余すところなく引き出してくれる。これはアナログ愛好家にとって必需品だ! ハイエンドディスクフラッター「DF-02」は、LPレコード盤の反りを修正する装置の第二世代機である。
初代機のDF-01は外観が黒で縦置き不可、タイマーは機械式で、外周部が盛り上がったグルーブガードつきLPレコード専用であった。それに対してDF-02は、外観がクリーム色になって保管時は縦置きが可能になり、タイマーは電子式で、操作コメントを表示する液晶ディスプレイも付いて使い易さが向上。重量盤LPのように、グルーブガードのないフラット盤が修正できる構造になった。 ディスクフラッターは、「常温では変形しにくいが適度に加熱すると軟化して変形し易くなる」という熱可塑性樹脂の性質を利用した反り修正機で、LPレコード盤の外周部とレーベル面を両側から押さえつけたまま盤全体を一定時間加熱してから徐冷し、反ったレコード盤をフラットな状態に修正するという仕組みだ。そして音溝に悪影響を与えないよう、盤の音溝部には機械が一切触れない構造になっている。というのは、音溝の部分まで押さえつけて加熱すると、盤に付着したゴミや猫の毛などが食い込んで音溝が変形する恐れがあるためだ。本体の上下に組み込まれたヒーターには、最大温度が65度の自動温度調整型半導体フィルムヒーターが採用されている。 対応ディスクは30cmLPレコード。25cmや17cmのLP盤と17cmEP盤は加熱部が音溝に触れるので適さないし、シェラック樹脂を使ったSPレコードは、シェラックが再加熱しても軟化しない熱硬化性樹脂なので適さない。
DF-02はマイコンを搭載し、操作手順が液晶ディスプレイに順次表示されるので、使い方は至って簡単。本体を水平な場所に横置きし、蓋を開けてセンターピンにLPレコード盤をセットして蓋を閉じる。電源を接続してパワースイッチを入れると、液晶にブランドやモデル名が表示されてから待機状態となり、「ディスクをセットしてMODEボタンで加熱を開始します」と表示されるので、MODEボタンを押す。すると「加熱中フタをあけないでください。残り1:30」という加熱画面に変わって加熱が開始され、それと同時に表示が5秒間点滅するので、点滅中にMODEボタンを押せば、加熱時間を1時間、1時間半、2時間、2時間半の4段階に切り替えることができる。初期設定は1時間半で、殆どの場合はこのままで良いそうだ。 設定時間が経過するとヒーターがオフになって冷却を開始し、冷却画面に切り替わって2時間の冷却時間をカウントダウンする。冷却が完了するとブザーが鳴って、液晶の表示は「完了!フタを開けてディスクを取り出して下さい」という終了画面になる。1回の処理で反り修正が不十分な場合は、この処理を再度繰り返す。加熱時間を長くするよりも、処理の回数を増やした方が効果的とのことだ。 反ったレコードは針圧が絶えず変動するので音質が劣化するし、ウーファーの振動板がふらついて見た目にもうっとうしい。反りディスクで悩んでいる人は、DF-02をお試しあれ!
|