|
コンパクトブックシェルフスピーカーの人気モデル、B&W「686」 |
せっかくフルサイズのスピーカー端子が用意されているのだから、今回は他のスピーカーでも聴いてみた。
まずはB&Wのエントリーブックシェルフ「686」。元気いっぱいだった付属スピーカーと較べると音の張りが適当に緩み、より自然な響き方をする。
ボーカルは肌理が細かくなり、余韻の消え際まで描き切る。シンバルも荒っぽさが薄れ、繊細な質感や響きの描写に踏み込む。
ベースも厚みを持つようになり、存在感をぐっと増す。ただ輪郭は少しだけ薄くなるが、気になるほどではない。また付属スピーカーは音が全体的に前に来ていたが、こちらでは音場に奥行、深みを感じられるようになった。
つまりは、686というスピーカーの特質・実力をしっかりと引き出せているということ。このアンプ部の力と素直な出力はなかなか侮れないようだ。
|
KEF「iQ3」も売れ筋ランキングの常連モデル。同軸ユニットの定位感もしっかりと引き出す |
もう少し大きめのブックシェルフ、KEF「iQ3」に換えてみる。すると、これまたこのスピーカーの良さをそのまま感じられる、大きな鳴りっぷりだ。ベースラインが重みを増し、ドラムスの抜けも自然で勢いがある。ピアノの硬すぎない音色と厚みも好感触。ギターのカッティングのクリーントーンにも厚みがある。シンバルのハードヒットはきめ細かく華やか。
ジャズボーカルのアカペラの場面では歌声のボリューム感が適切。空間全体に広がるような存在感を出しつつ、下手に緩めた音像にはしない。スピーカー自体の特性もあろうが、アンプの制動力も十分なレベルにあるということだろう。KEFと言えば同軸ユニットによる確かな定位感も売りだが、そこもしっかり引き出してくれる。シンバル一枚一枚の配置を感じられる精度だ。
では、と調子に乗って、さらに大柄なJBL 4307を接続。しかしこれも問題なく鳴らしてくれた。
音像は全体的にやや大柄になり、ドラムスは全てのパーツが一回り大口径になったかのような迫力だ。この小さなアンプが大口径ウーファーを適当に操り、ベースラインにも重みと確かさを与える。ピアノのコードもチャキッと立っていてしかも厚みもある。
|
大型のJBL「4307」も無理なく鳴らすことができた |
音をズバッと前に飛ばしてくるところやボーカルの抑揚の付け方などはまさにJBL的。アップテンポのジャズなど再生すれば、「JBLで聴くジャズ!」の醍醐味を味わえる。ハイファイ感(音場の透明度など)はB&WやKEFに一歩譲るが、問答無用の説得力が溢れる音だ。
様々なスピーカーをつなげてみたが、どれもスピーカー自体の特性が素直に出ていた。ということはアンプ側に余計なクセがなく、駆動力も十分なレベルに達しているということだ。汎用的なスピーカー端子の搭載は決してこけおどしなどではなく、実際にスピーカーのアップグレードに対応できるだけの力を持ったアンプである。
なお、無線伝送の安定性は非常に良好だった。試聴室は無線LANが多数混在するオフィスビル内にあるのだが、そのような環境でも音切れは全く発生しなかった。
|