革新の映像美。松山凌一が感じたZ3500シリーズの実力 革新の映像美。松山凌一が感じたZ3500シリーズの実力

Z3500の高画質化は東芝設計人の人力の賜物


『実力のレグザ』が新しいZ3500シリーズに与えられたキャッチフレーズである。私はそれを『人力のレグザ』と読み替えている。ここに至って東芝テレビ設計陣の力が高画質となって顕在化したからにほかならない。

薄型平面ディスプレイの時代を迎え、東芝はいち早くメタブレインプロという映像エンジンを開発した。映像信号処理からパネル制御を含む総合的なデジタル回路であり、その能力の高さは業界屈指と誰もが認めた。しかしその驚異的な回路の能力をもってしても、すぐさま東芝のテレビが最高画質の地位に登りつめることはなかった。ときに息を呑むほどに美しいショットを見せることはあるのだが、暗部の多いショットで充分なコントラストが得られず、青のかぶりが気になってしまう傾向が見られた。テレビ設計陣は黒輝度が低く、しかも黒の明るさにムラのない、120Hz駆動パネルの完成を待ち望んだ。

東芝はパネルメーカーを支援し、辛抱強くその性能向上を働きかけた。一年、二年――。パネルは段階を踏んで性能を上げてきた。黒輝度が下がりコントラストが向上した。その段階でメタブレインプロは真価を発揮し始めたが、最良のコントラストに漕ぎつけるにはもう一段の輝度アップが必要と思われた。

ミニマルデザインを追求。気品あるフォルムを実現した(写真は拡大します)

当時のレグザに対して「美しい画を見せてくれるが、コントラス優先の映画プロモードで見ると画が暗く、力感が足りない」と、筆者は何度となく指摘した。「映画プロモード」はブラウン管時代以来、テレビ設計陣が何百本という映画を観、フィルム映像の特性を研究し、テレビ映像技術との整合性を追求した結果、ようやく手にした得がたいノウハウである。そのノウハウがいま一歩発揮できないもどかしさ。それは筆者に指摘されるまでもなく、技術者のものでもあったろう。

TOSHIBA
地上・BS・110度CSハイビジョン液晶テレビ

42Z3500
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●画面サイズ:42V型 ●パネル:フルHD倍速10ビット広色域IPS ●表示画素数:1920×1080 ●受信チャンネル:地上/BS/110度CSデジタル×2、地上アナログ×1 ●主な入力端子:HDMI×3、i.Link×2、D4×2、S×2、コンポジット×4、LAN×3(HDD専用1)、USB×2(HDD専用1) ●消費電力:292W(待機時0.6W) ●外形寸法:1020W×699H×352Dmm(スタンド込) ●質量:28.4kg(スタンド込)

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フィルム特有の味をテレビで表現する「映画プロモード」


フィルムのラチチュードは一部、テレビ技術が理想とするリニアなガンマ部分もあるが、暗部にかけてだらだらと伸び、明部も肩のなだらかな曲線になっている。最近のハリウッド映画はビデオやディスク販売の金額比率が高まり、テレビで最適なコントラストが得られるよう、可能な限り、フィルムのリニアなガンマ部分を使って撮影される。暗部や明部は照明によって補助され、スタジオで撮影される映像はあたかもCMのようにきれいな映像になっているのである。その傾向は撮影時のみならず、デジタル変換され、編集仕上げのポストプロにおいても補整が施されるので、なおのことテレビ映像とのマッチングがよくなる。大衆的に人気のあるファンタジー作品などはCG合成がほとんどなので、コンピュター映像と家庭用テレビのコントラストの落差は専門の技術者によって補整されフィルム化される。端的にいえば、最新のハリウッド作品はデジタル化の段階でテレビ鑑賞を前提にコントロールされているといっていいのだ。

しかし、世界の映画表現をリードするハリウッドの懐は深い。フィルム表現の深さを身につけた監督や撮影監督たちは、フィルム特性のすべてを使い切って映像を作ろうとする。大きなテーブルを広げて、表現の幅を拡大したいのである。巨匠クラスでいえば、スコセッシ、スピルバーグ、イーストウッドしかり。彼らの作品をテレビで100%表示することは、いまも難しい。その困難さを理解し、自分たちの作るテレビで何とか応えたいと努力したのが「映画プロモード」に携わった東芝の技術者なのである。

高水準パネルを遂に手にし見事な階調表現を実現


話が少しややこしくなったので、もとに戻ろう。レグザZ3500シリーズは遂に設計陣の求める水準のパネルを手にしたと思う。完璧とはいえないまでも、「映画プロモード」がいきいきと動作し始めたのである。

Z3500の試聴を重ねた後、私は設計陣を前に、思わず「映画プロモードの復活」と感想を述べた。これまでだって懸命に努力してきたことを承知の上でいうのだが、それは東芝の復活を意味していた。誰もがその凄さを認めるメタブレインプロ回路を有しながら、製品としては最高画質を標榜できない悔しさをついに乗り越えたと思った。

東芝の半導体技術の結晶であるパワー・メタブレイン。階調表現力、動画応答性の大幅な進化を遂げた(写真は拡大します)

そのときZ3500は『オール・ザ・キングスメン』(スティーヴン・ザイリアン監督)のオープニングショットを映し出していた。カメラはベッドに横たわったジュード・ロウの顔を俯瞰でとらえ、ゆっくりとトラックバックする。カラーを極力抜いたモノクロに近い映像。かなりナロウなコントラストながら、力感がぎりぎり保たれる顔の明るさ。暗い色だがうっすらと赤味を感じさせる枕。見事な階調の表示。この映画の映像は、逆光を絶妙に使って人物を浮き立たせ、顔の明暗を少し深く取ってハイコントラストに仕上げる設計をしている。色は肌の質感をうっすらと残す程度に薄められ、原色系の色が浮いてくることはほとんどない。しかし暗部の微妙な色合いや黒は非常に重要な要素だ。肌色が残る程度にまで色は抜かれるが、肌色を構成する赤や緑は最暗部で若干だが残る。それを黒くつぶすようでは「映画プロモード」とはいえない。この暗部はそれが表示されるだけのやわらかさがなければならない。色として残らなくとも輝度の階調が残らなければ、映像全体のコントラストがきつい印象になり、撮影者の意図が阻害される。Z3500の映画プロモードはその意図をしっかりと描写し続けたのである。

パワー質感リアライザーの映像検出の的確さに感嘆

Z3500の主観的な記述はこのぐらいにして、この映像を作り上げている技術を設計陣に代わって簡潔に紹介しよう。まずは「パワー質感リアライザー」と名付けられた技術が凄い。『オール・ザ・キングスメン』で私を感嘆させた描写は、すべてこの技術によるのではないかと思わせるほどだ。肌色を含む中間色が沈み込まないようコントロールする技術である。同じ技術は輝度にも活かされ、雪景色のようなハイライト映像、夜景の暗部映像にも使われており、その映像検出の的確さには唸らされる。逆光映像や暗い背景に埋もれがちな黒髪の階調描写にもこの技術が使われ、綿密かつ自在なアルゴリズムが働く。


【効果なし】

【効果あり】
「パワー質感リアライザー」の効果を示すイメージ。中間色が沈み込まないようコントロールされ、みずみずしい肌色の再現を可能にしている(写真は拡大します)


【効果なし】

【効果あり】
夜景についても黒色がつぶれてしまうことなく、緻密な暗部表現ができる点も「パワー質感リアライザー」の特長だ(写真は拡大します)

加えてこの映像検出技術は「パワー・ディテールリアライザー」ともなり、ヒストグラムを使ったダイナミックシャープネスという技術をも生み出している。その効果はフィルム映像の暗部解像度の甘さにも効くようで、暗部のS/Nの良さとすっきりしたエッジに反映しているようだ。もちろんその効果は暗い映像ばかりでなく明るい映像にも効いているので、ビルの窓、木立の葉のそよぎなどに著しい。ただしその効き目が過度になると映画撮影者の意図に反するときもあるので、映画プロモードでは節度を保っている。

最高の「実力」を備えたエポックメーキングな製品


最後になったが、Z3500のフィルム表示技術にも触れておく。Z3500はフィルムソースについてプレーヤー側の24P表示に対応し、BSデジタルや地上デジタル放送の映画番組についても5-5フィルムモードで表示する機能を持たせている。これによりフィルムの1コマが2つのフィールドに分かれる副作用がなくなり、フィルムと同じ動きが保障される。また、フィルム特有のフリッカーを除くスムーズモードも持っており、補間映像生成技術にも最新の配慮(フルHD・モーションクリア)がなされている。他にもパワー・メタブレインの技術は数々あるが、それらはカタログやWEBで確認されたい。

東芝の新しいテレビディスプレイZ3500は、エポックメイキングな製品になったと思う。冒頭で私は「実力のレグザ」を「人力」と読み替えたが、ここで改めて「実力」と置き換えよう。このキャッチフレーズは決して東芝の独りよがりではなく、ついにZ3500が実力を備えたことを示しているからである。この記事で私は「映画プロモード」だけを取り上げたが、日常視聴に使われるであろう「テレビプロモード」も申し分のない映像になっていると思う。

家庭用テレビディスプレイとして最高の映像検出技術を持ち、それによってダイナミックに最適映像を作り出すことにかけて、東芝がトップランナーの位置に躍り出たことを誰よりも喜びたい。

【背面端子】


背面には、LAN HDD、USB HDD専用端子を各1系統搭載。最大8台まで使用可能(写真は拡大します)
【レグザ番組表・ファイン】

表示範囲は7チャンネル6時間(6チャンネル6時間表示も選択可能)。高精彩フォント、5段階の文字の大きさ調整で読みやすい(写真は拡大します)
【ミニ番組表】

番組を見ながら他の番組をチェックできるミニ番組表。7チャンネル2時間分を表示する(写真は拡大します)

【レグザリンク】


レグザリンクのイメージ。レグザリモコンで外部機器がひとつになる(写真は拡大します)
【レポート】
松山 凌一(Ryoichi Matsuyama)

映画製作の世界からスタート。製作者の視点をもってオーディオビジュアル評論を展開する。円谷プロの特撮テレビ映画「ウルトラマン」の撮影にも参加。その後、コマーシャル製作に転向し、松下電器、森永乳業など大企業のテレビコマーシャルを手掛けた。シネフィルムからデジタルVTRまで、広範な知識をバックボーンに活躍する。主な著書に『ビデオカメラの楽しみ方 機種の選定から撮影・録音・編集の基本と応用まで』(日本文芸社刊)などがある。

Z3500シリーズ ラインナップ
<57V型>地上・BS・110度CSハイビジョン液晶テレビ
57Z3500
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<52V型>地上・BS・110度CSハイビジョン液晶テレビ
52Z3500
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<46V型>地上・BS・110度CSハイビジョン液晶テレビ
46Z3500
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<42V型>地上・BS・110度CSハイビジョン液晶テレビ
42Z3500
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<37V型>地上・BS・110度CSハイビジョン液晶テレビ
37Z3500
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東芝 REGZAのホームページ http://www.regza.jp/
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