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Report : 美崎 薫


■ 増える雷被害

今回、技術的な説明を行ってくれた木村氏(写真左)。雷による被害の原因やその解決策を研究するスペシャリストだ
電子情報機器が高性能化し、ネットワーク(電話線)につながるようになって、雷の被害は拡大している。

オーディオテクニカのテクニカフクイ技術課に在籍する木村富至マネージャーによれば、落雷による機器の被害の原因は、大きく分けると、(1)電子機器が電源コンセントと電話回線につながるようになったこと、(2)機器の省電力化が進んだ結果、一時的な大電流に弱くなったことが挙げられるという。

電子機器が電話端子につながるようになった、というのは、まさに現在のインターネット状況下におけるコンピュータやBS/CSチューナー、ハードディスクレコーダーなどが該当する状態だ。


■ 雷被害をもたらす「誘導雷」の仕組み

なぜ被害が起こるのだろうか? その仕組みはこうである。

<図はクリックで拡大>
「雷が直撃しない限り大丈夫」ということは無い。雷が起こす電磁波が電線内に大電圧を発生させるからだ
電源線は電柱で、電話線は家庭の前に入る保安器で、それぞれアースされている。雷が直接落ちた場合(直雷という)には、家庭に入る前にアースされていて、被害は家庭には及ばない。問題になるのは、雷が空中を走るときに、そのまわりに発生する「誘導雷」なのである。

落雷で電源線や電話線に、「誘導雷」による高電圧が発生し電流が流れる。この過渡的、瞬間的な電圧・電流変動による電流を「雷サージ電流」と呼ぶ。「誘導雷」は、電柱から家庭に入る引き込み線や屋内配線のケーブルに直接発生してしまう。発生した電流は、屋内配線から家庭のなかの機器を通り、それが電話線につながって保安器まで一気に流れてしまうのである。引込み線や屋内配線のコードに電流が発生し、それが機器のあいだを駆け巡るために、結果として機器を壊してしまうわけだ。

NTTの保安器のアースは、非常に性能が良いため、電流は電源線から機器を通ってNTTの保安器へと流れる。保安器がつながっていなければ、このような流れは起こらないのだが、そうはいっても多数の機器が動いている現状で、雷のときだけ電話線を切断するのは、手間もかかる作業で現実的ではない。

電子機器の省電力化は文字どおりの理由である。かつての真空管などの場合には、電子チップに較べれば、相対的に高電圧や大電流に強かった。電力不足が叫ばれ、地球環境から見ても省電力はよいことなのだが、こと雷対策という点では、弱いところもある。


■ 実体験してわかる雷の怖さ

実際に、筆者自身も、1997年ごろに、雷被害に遭ったことがある。コンピュータとモデムでインターネットをしていたら、突然雷が鳴り出した。雷がやんだら、モデムが動かなくなってしまっていた。

被害が及んだのがモデムだけだったのは、不幸中の幸い、というところかもしれないが、それにしても、さっきまで使えた機器が、あっという間に使えなくなってしまうというのは、結構ガックリくるものである。ガックリくるだけでなくて、場合によっては、被害金額も大きなものになってしまうだろうし、なによりそれによって間接的に仕事や趣味を一時的に中断しなければならなくなったりする精神的なショックも大きい。


<写真はクリックで拡大>
筆者が使用していたお札タイプのバリスター型の雷防止器
それ以来、雷には気をつけるようにしているのだが、気をつけるといっても、「地震・雷・火事・おやじ」というけれど、特に前のふたつは、天災だから、起こってしまえばしかたないとあきらめるものなのかと思っていたのだ。

辛うじて、注意しようという心構えがあったので、小さなお札タイプの雷防止器を使っていた。雷が天災で防ぎようがないものだとしても、気休めでもないよりはマシだと思ったからだ。経験に学ばなければ、進歩はない。

だがこのお札タイプは、1〜2度の誘導雷で効果が無くなってしまうし、対策はされていると思うが、使っているバリスターの故障モードは短絡した後開放だから、運悪くすると短絡の状態で発熱する可能性もある。そりゃあ、危険過ぎて使えない。しかも、木村富至マネージャーは、「雷には通りやすい道があるので、いちど落雷の被害に遭ったところは、くり返し起こりやすい」とおっしゃるのであった。泣きっ面に蜂とは、このことだ。一度落雷に遭っている拙宅では、また起こる可能性があるわけだ。一度ならず、二度までも起こったのでは、たとえ天災といえども困ってしまう。防げるものなら防ぎたいと切に思うのであった。


1.  急増する雷被害の実態に迫る!
2.  SURGE BUSTERで安心AVライフ