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ルームチューニングはマルチチャンネルソースの鑑賞にも当然応用することができる。今回はGAC-700においては、コーナーへの設置だけでなく、2本を横にしてスピーカーの背後に置くスタイルを試してみた。各製品の組み合わせパターンについての詳細はこちら

 


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GAC-500をスピーカーの脇に配置し、スピーカの一次反射をおさえた。音にナチュラルさと質感が加わり、エネルギーも十分。空間の広がりも豊かに感じられ、高い効果を得ることができた。

 


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リアスピーカーが鳴らす音のチューニングは重要な要素の一つとなる。今回はGAC-600をスピーカー脇、リスナーサイドの位置に置いてみた。音場空間全体に一体性をつくりだすことができた。

 


円筒形のGAC-800(\28,000)
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マルチチャンネルの音場空間に磨きをかける

ルーム・チューニングをマルチチャンネルに応用するとどうなるだろうか。部屋の基本特性をよくするという意味でなら、2chの場合と同じでいいということになる。しかしサラウンドの場合にはもう少し考えなければならない要素が残っている。映画では正面にスクリーンが広がっている。この反射量はばかにならず、音響的に決して嬉しいものではない。だからといって隠してしまうわけにもいかないから、それなりの対策を立てなければならないのである。

もうひとつはサラウンド・ソース特有の要素で、映画に限らずマルチチャンネル・オーディオでも周囲全体から音が来るようになっている。つまり先にも触れたが、映画の音場なりホールの残響なりといったものは、もともとのソースに入っているということだ。だから部屋の反射は本来必要ないのである。むしろかなりデッドにしておいた方が好ましいとも言える。ただそれでは音そのものが痩せてしまうので、ある程度の反射音は残しておかなければならない。

まずGAC-500を4枚背後に積む。GAC-700も前方コーナーに残す。また天井の四隅に配置したGAC-900もそのままにしておく。これらは部屋の基本的な特性をコントロールするものだから、2chと同じでいいのである。ここで一番気になったのは、セリフが下寄りで音調全体もこもった感触になることだ。音楽音の分離もやや悪い。センター・スピーカーが床からの反射をかなり拾っているのが大きな原因だが、これは置き台を使って多少持ち上げることで解決した。吸音材とは無関係な話ではある。しかし音全体のこもりはそのままだし、効果音などの切れもいまひとつ。スクリーンの反射が利いているようだ。

GAC-500や600を使うとスクリーンにかかってしまうので、三角柱のGAC-700を2本横にしてスピーカーの背後に置く。スクリーンの下である。床と壁との角を埋めた形になる。これが意外な効果を上げた。音圧が上がり、セリフが非常に透明で鮮明になる。こもりが取れてすっきりした印象だ。音楽音も通りがよく、身辺音も自然になる。サブウーファーの曇りもなくなるようだ。このため衝撃音の切れがよくなる。オーディオではオルガンの低音からこもりが消える。チェロやパイプの高域は艶が自然で余韻にも無理がない。横方向の距離感がもっと出ると申し分ないが前後の奥行は正確だ。それにこれは左右の壁面の問題でもある。この手法は2chでも有効かもしれない。

続いてGAC-500を2枚スピーカーの脇に置く。スピーカーの一次反射を減少させるためで、2chの場合よりも余計に反射を抑える意図である。これは効き目が高く、オルガンの低音が全くぼけなくなる。多少量感は吸われるが低音の存在感が明瞭になり、響きの距離感が正しく出てくる。映画でも自然音が非常に静かで緻密になり、身辺音も含めて過剰な響きがなく、大変ナチュラルだ。セリフにも余分な膨らみがなく、質感が緻密に出る。表情も細かく、音数が増えた印象だ。衝撃音も鮮明でぱりっとしている。濁りがなく明瞭でディテールが細かい。エネルギーも不足しない。空間がよく広がり奥行も深い。

最後はGAC-600をリスナーのサイドに置く。奥行と広がりが深くなり、空間性が上がる。部屋全体の空間的な一体性が出てくる。できればGAC-600は左右対称を避けて、高さを変えながら何枚か設置したいところだ。サラウンドの出方が大きく変わるはずで、どれくらい使うかは部屋に合わせて調節するとよい。

GACシリーズの使い方は無限に広げられる

GACシリーズはルーム・チューニングが手軽に行える有用なアクセサリーである。形状も適確にツボを押さえた何種類かが用意され、さまざまに組み合わせることで効果を高めることができる。もちろん扱いやすさも機動性を高めている。ここでは試聴に使わなかったが、円筒形のGAC-800という製品も用意され、部屋のコーナーやスピーカー間に置くことで音質制御が可能だ。特にスピーカーの間に置くと、左右の干渉が減少し分離が向上する。円筒形だからこそ得られる効果である。

最初はコーナーだけ、あるいは壁一面だけでもいいのだ。とりあえず導入してみれば、自分の部屋がどんな音だったのか認識することができるはずである。特にスピーカーやアンプなど機材を替えてもどうしても音がよくならない、販売店で聴いたのとどうしても違うといった場合には、部屋の音響を考えてみる必要がある。案外手近なところに思わぬ落とし穴があるものである。GACシリーズの活用で簡単に解決するケースがきっとあるはずだ。