「DEEPBLACK」が実現する未知の世界を探る 今まで見たことのない黒がエプソン・EMP-TW2000には、ある プロフィール&画質レビュー

エプソン製3LCD液晶プロジェクターの新製品はひときわ大きな注目を集めることが多いが、それには理由がある。同社が生産するパネルはもちろんのこと、3LCD方式の光学ブロックなど、新製品に導入する最先端技術への関心が高いためである。

開口率を改善した新世代D7パネルを積むEMP-TW2000も注目の的だ。なにしろオートアイリスONの状態で50,000対1(ダイナミックモード/オートアイリスON時)という驚異的なコントラストを実現した話題作。どうやってその離れ業を達成したのか、興味は尽きない。

今回の技術的ハイライトは、エプソンが「DEEPBLACK」と名付けた黒領域の光漏れを極小に抑える技術である。黒領域の光の振動の乱れを抑えるために、液晶パネルとその近傍にある光学部品について、詳細なシミュレーションを繰り返すことで、最適な構造や配置を追求した。いくつものパターンがあるなか、最適な解を見極める作業は困難を極めたというが、その成果は非常に大きく、圧倒的な高コントラストの実現に貢献することになった。

DEEPBLACKテクノロジー。従来よりも偏光を緻密に制御して光漏れを抑えこみ、高コントラストを実現
DEEPBLACKテクノロジー。従来よりも偏光を緻密に制御して光漏れを抑えこみ、高コントラストを実現


アイリス機構をオフにした場合のネイティブコントラストは5,000対1に及ぶというから、前作のEMP-TW1000に比べて黒の輝度は3分の1低下している計算だ。黒の深みが増すのもうなずけるのだが、そこまで深い黒を表現する領域では、検証や測定のプロセスも従来のセオリーが当てはまらない。測定器の精度ぎりぎりの暗さのなか、計器類のLEDの仄かな照明さえも暗幕で覆い、迷光を徹底的に排除して実験室を漆黒の空間に変え、作業を進める必要があったという。

ネイティブコントラストの数値を紹介したのは、本機のシアター系モードではオートアイリス機構オフがデフォルトになっているためである。本機のオートアイリス機構は高速かつ自然なレスポンスを実現しているとはいえ、シーンごとに明るさを変えるという概念自体に疑問を感じる映画ファンは少なくない。本機のネイティブコントラストは映画館のスクリーンの水準をすでに越えており、オートアイリスに頼らずとも、十分な明暗差の表現ができるのである。

シアター系モードは従来通り3種類あり、その用途も基本的には変わっていない。エンジニアが推奨するほぼ万能の映画モードが「シアター・ブラック2」、画質をマニアックに追い込む際のリファレンスとして機能するのが「シアター・ブラック1」で、いずれも映画に照準を合わせている。「シアター」は音楽を含む広範囲な舞台作品を想定しており、ランプモードも「高」がデフォルトだ。

「シアター・ブラック2」で映画を再生すると、前作と明確に異なる2つの進化を実感することができた。まずは漆黒表現が凄みを増していること。これはどんなシーンを観てもひと目でわかる本機の顕著なメリットだ。もう一つは色の微妙なトーンが豊かになっていることで、特に青の色調は明らかにフィルムに近付いている。リビングモードでは抜けの良い青(ブルージーンズの青など)をいかにも高純度に描写するのに対し、シアター系ではシアン寄りの深い青をフィルムに忠実なトーンで描き出す(『キング・アーサー』の氷上の戦闘シーンが好例)。単に抜けが良いだけの映像は、最初は強いインパクトを残すが、本機の映像はそこで終わることがない。映画をじっくり楽しむこだわり派が納得する表現を身に着けていることに、本機の非凡さがある。

Newエプソンシネマフィルタにより広い色再現領域を確保
Newエプソンシネマフィルタにより広い色再現領域を確保 接続端子部。HDMI端子は2系統。他にコンポーネント端子も用意(写真は拡大します)

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