アメリカのケーブル専業ブランド「WIREWORLD(ワイヤーワールド)」から、Higth Speed with Ethernet(HDMI Verl.1.4)に対応したHDMIケーブルが誕生した。最新の“Series 6”から、今回は最高峰モデルとなる「PLATINUM STARLIGHT」と「SILVER STARLIGHT6」の実力を、評論家の林正儀氏がテストした。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
世界のトップブランドに名を連ねる、米・ワイヤーワールド社の誕生は1992年に遡る。ブランドが船出して間もなく20年となるが、主催者であるデビッド・ザルツ氏の卓抜した探究心のもと、独自のフラット構造に磨きをかけた高品位ケーブルを数多く開発し続けてきた。 同社独自のフラット構造の特長は、何本もの導体を板状に並べることで、「ひきまわしの際に伸長や圧縮によって各導体の長さが変化しない」という優位性にある。一般の丸型ケーブルと比較して、信号のロスやクロストーク、タイミングエラーなどを徹底して抑制できる点が決定的に違う。同社のHDMIケーブルでは「Series 5.2」からフラット構造が採用されているが、そのHDMIは、2006年のCESで「INOVATIONS AWARD」を受賞した製品であるのはファンにとってはお馴染みかもしれない。 そして3D元年の幕が開けた2010年、いよいよHDMIケーブルの後継モデルとされる「Series 6」から、シリーズは「PLATINUM STARLIGHT」「SILVER STARLIGHT6」「STARLIGHT6」「ULTRAVIOLET6」「CHROMA6」「ISLAND6」という6つのラインナップが登場する。今回のSeries 6では、フラグシップとなる「PLATINUM STARLIGHT」が新たに加わり、全製品が「High Speed with Ethernet(HDMI Ver.1.4)」に対応しており、また全モデル20Gbpsを越える高速伝送を可能としている。 シリーズの“トップ・2”といえる、上級モデルの「PLATINUM STARLIGHT」「SILVER STARLIGHT6」の2製品は、HDMIの最新規格で規定された、HDMIケーブルのHigh Speed規格として求められる伝送速度「10.2Gbps」の、3倍にあたる「30Gbps」のスーパースペックを最速値で達成している。
ここで少し最新のHDMIケーブルのトレンドについてもおさらいしておこう。BDのフルスペック映像やHDオーディオに対応したHDMI Ver.1.3以降あたりから、HDMIケーブルもようやく画と音の“クオリティ”について本格的に語られるようになり、各メーカーが腕を奮った製品を世に送り出してきた。長尺ケーブルの安定した伝送性能を特徴にうたうメーカーもあれば、極力色づけのないピュアな伝送を身上とするメーカー、あるいはハイCPがウリというメーカーもある。そこでは19本の細線とパケット伝送という、限られた条件下での伝送能力が試されることとなった。 HDMIケーブルのスペックをめぐる争点は、詰まるところ伝送スピードにあるのだが、素材や構造そのものによっても画と音のクオリティが異なってきて、表現力に違いが生じてくる点もAVファンには楽しみ甲斐のあるポイントだ。 線材には高純度OFCや銀コートをかけたものや、銀のソリッド線を用いるのが上級HDMIケーブルの昨今におけるトレンドだ。ケーブルの構造としては、厳重なシールドや振動対策なども重視されるファクターだ。いよいよ3D&イーサネット伝送のHDMI Ver.1.4時代を迎え、各ブランドがしのぎをけずる中で、ワイヤーワールドのさらなる挑戦に期待が高まるばかりだ。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ワイヤーワールドのHDMIケーブル「Series 6」に共通する特長は薄型フラット構造である。実際のケーブルサイズでは上位の2モデルは「厚さ5.0mm×幅17.5mm」で、「STARLIGHT6」以下のモデルは「厚さ4mm×幅18mm」。「PLATINUM STARLIGHT」のケーブルを手に取った感触はとてもしなやかだ。先ほど一般的なケーブルでフラット構造を採用することのメリットを述べたが、細線が多数集中するHDMIケーブルの場合、さらにフラット構造によるアドバンテージが得られそうだ。プラグ部分でのロスや有害反射なども極小に抑えられるだろう。 このフラット構造に加え、最高位のPLATINUMとSILVERには特許技術である「DNA(Delineated Neutralizing Array) Helix Design」が採用されている。同社のスピーカーケーブルやラインケーブルをご存じであればわかると思うが、「DNA Helix Design」とは、電気の流れを中性化・正確にする螺旋配列構造だ。例えばスピーカーケーブルでは並行配列構造の斜線型を採用して成果をあげているわけだが、その応用でHDMIに相応しいノウハウが注入されているものと思われる。パテントの関係でPLATINUM、SILVERの内部構造はまだ明らかにされていないが、後日あらためて公開される機会を楽しみに待ちたい。 興味深いのが上位2モデル間で、導体と端子カバーが異なる点だ。PLATINUMが銀線ソリッド線×24本とカーボンファイバーコネクターを用いている一方、SILVERではシルバークラッドOFC(無酸素銅)×24本とダイキャストアルミ製コネクターが採用されている。端子処理については、どちらも金コートのシルバーターミナルを奢った豪華版と呼べる仕様である。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
映画のリファレンスソフトは『アバター』、それに見慣れた『ダークナイト』『ベンジャミン・バトン』などを選んだ。音楽ものではマイケル・ジャクソンの『This is it』ほか、多数のソフトで検証したが、さすがにこのクラスのケーブルともなると映像・音声ともに格違いのリアリティであり、圧倒的臨場感に感嘆する。2製品とも目が覚めんばかりの高速伝送だ。きめの細かなキャンバスに、存分に細密画を描いてゆく印象である。音声にしてもS/Nが驚異的に高く、研ぎ澄まされたような空気感が漂う。一気に頂点まで登りつめた感じである。
「SILVER STARLIGHT6」の傾向から評価すると、画像の明るさと黒サイドの強靱なしまりなどDレンジ的なメリハリの効いた逞しさにハッとさせられる。『アバター』では漆黒の宇宙をバックにした星のまたたきや、飛行船の精密なディテール描写は感動的で、視力そのものがあがったような感覚だ。惑星パンドラの色鮮やかな風景も見所だ。一段とハリがあって輝かしく、高めのコンラストで描く音楽のステージや、『ダークナイト』のクールなキレ味感も存分に楽しませた。 全般にアップ・テンションで持ってくるSILVERに対して、「PLATINUM STARLIGHT」はフラグシップの貫禄というべきか、すべての画質要素が“高い峰”にある。表情に余裕があって黒レンジがぐんと広く、陰影と色のグラデーションが実にキメ細やかなのだ。パンドラの深い森が一層奥行き深く、精霊が舞い降りるシーンの色の透明度はまさに天国的だ。『ダークナイト』のタイトな切れ味感も演出しながら、一方で『ベンジャミン・バトン』の女優の柔らかな肌の色あいや、シルエットの美しさなど、シネマライクな味わいを満喫させる。高次元でのオールラウンダーといえるだろう。
音も画とほぼ同じ傾向である。鮮度の高いスピード感やパワーの漲るSILVERに対して、PLATINUMはすりぬけるシャープさを保ちながら、空間全体の緻密さを上手にバランスしている。 『アバター』の空中バトルは、SILVERではメリハリ感があり、戦闘機の方向感がビシっと明快だ。音楽BDもボーカルが熱く、リズムがたってサラウンドの広がり感も力強い。一方のPLATINUMは、描写が丁寧で彫りが深く、音場の立体感にすぐれる。どんな微弱音にも反応するしなやかさがあり、大音量のシーンでも分離が鮮明。遠近感がひじょうに精密で、3D映像に相応しいサラウンド設計だと実感するリアリティだ。音楽のステージに豊かな深さの表現力があり、『This is it』ではマイケルと、ギタリストのオリアンティのかけあいを奥で見守るメンバーたちとの距離差まで生々しく実感させた。 映像・音声ともにさすがにツートップの表現力は“群を抜く”としかいいようがなく、一般HDMIケーブルの次元を越えたところでの比較となった。それぞれに魅力があるので、もし手元の環境の両方を導入するのであれば、好みの作品などで使い分けるのもよいだろう。 最後に「Series 6」の他の製品にも触れておこう。伝送速度の最速値は「STARLIGHT6」が28Gbps、「ULTRAVIOLET6」が25Gbps、「CHROMA6」が23Gbps、「ISLAND6」が21Gbpsとなる。全モデルでその数値を公表しているのは、良質なケーブルを手がけたワイヤーワールドの自信の現れだろう。採用導体は「STARLIGHT6」がシルバークラッドOFC(6N)、「ULTRAVIOLET6」がシルバープレーテッドOFC(6N)。さらに「CHROMA6」がOFC、エントリーモデルとなる、「ISLAND6」がElectroiytic銅となる。もちろん、全モデルが3D&High Speed with Ethernet対応だ。「Series 5.2」からは内部構造を中心に導体サイズを変更するなどして、さらに性能の向上も図られている。改めてワイヤーワールドHDMIのラインナップの豊富さと、優れた技術力に感心させられる。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|