サブウーファー一体型のセンターユニットと小型ステレオスピーカーで構成されるコンパクトな2.1chシアターシステム「YSP-S350」。設置の問題をクリアにし、気軽に迫力のサウンドを楽しめるとともに、男心をくすぐる“遊べる”機能を多数搭載した本機を、ライター堀江大輔氏がレポートする。

執筆・堀江大輔(D☆FUNK)






テレビの画面が大きくなると、それに見合う音が欲しくなる。だが、テレビ周りのスペースは限られており、あまり物が置けない。そんな人にオススメのサラウンドシステムがヤマハの「YHT-S350」だ。

YHT-S350製品写真
 
     
  YHT-S350  


サブウーファーとAVアンプが一体になったセンターユニットと、コンパクトなスピーカーという2.1ch構成。センターユニットはAV機器とちょうど同じくらいのサイズで、テレビ台のなかにすっぽりと収まる。2本のスピーカーは縦にも横にも置けるレイアウトフリー設計。

サラウンドでは、ヤマハ独自のバーチャルサラウンド技術「AIR SURROUND XTREME」を採用。バーチャルでありながら定位感のある7.1chサラウンド再生できるのが特徴だ。


  YHT-S350スピーカー
 
         
  今回は実際に仕事場に持ち込んで1週間共に過ごしてみた。センターユニットはTVラックにぴったり収まった。大きく重量感のあるサブウーファーは置き場所に困りがちだが、本機はユニットに内蔵されているので設置面での敷居はかなり低い   小型サイズのスピーカーは縦置きにも横置きにも対応する。ちょっとしたスペースにも設置しやすい


 


テレビのサイズやテレビ台を選ばずに、最適な音響が作れるのもこのシステムならでは。リモコンを使った初期設定でフロントスピーカーの距離を設定できるので、これはスピーカー設置する時点で調整したほうがいい。

フロントスピーカーの間の距離が150cm以上なら「WIDE」、80〜150cmなら「NORMAL」、80cm以下なら「NARROW」を選ぶ。今回は32V型システムと組んだので、スピーカーの距離はだいだい90cm。「NORMAL」のままで試したがちょうどよかった。ちなみに「NORMAL」のまま、200cmくらい離して聴いてみた。そのままだとやっぱりセンターで中抜けする。「WIDE」に変えたらバランスが戻ったので、この効果は意外に高い。





さて、ではさっそく視聴に移ろう。まずは「ダークナイト」の冒頭、ジョーカーの銀行襲撃シーンを視聴した。映画は初っぱなから、ガラスが破られるシーンから始まるのだが、そこからドキっとさせられるくらいに迫力がある。重低音が効きながらも、音場がブワっと広がる。7.1chならではの、映画館のような広い空間ができあがるのだ。

音の響きや暗騒音などの情報量も多い。銀行に突入したとたん、音場が天井の高い空間にガラリと変わる。靴が床をキュッと踏み鳴らす音など、細かい音もリアルに拾いあげる。声に厚みもあり、強盗のマスク越しのこもった声が天井の高い空間に響くような表現も良く出ている。バスが銀行に突っ込んでくるシーンでは、音が割れるか?と思ったが、歪むことなくパワーを持って再生してくれる。

視聴の様子
 
     
  YHT-S350と32V型のテレビで映画やテレビ番組を視聴する筆者。音割れを覚悟していたが歪みはなし。このサイズと価格でなかなかやるなと唸らされる  

 





「MOVIE」「MUSIC」「TV PROGRAM」「GAME」の4つのサラウンドモードも用意されており、映画は当然「MOVIE」で視聴したのだが、「MOVIE」は重低音と空間のつながりを重視しているようで、重低音を維持しながら空間を一気に広げ、映画コンテンツならではのスケールの大きい音場を作り上げていた。

「MUSIC」の効果も大きかった。「MOVIE」では広がる方向にあった「MUSIC」モードに切り替えると、高音がすっと降りてくる。音楽番組では、音楽を聴くには出過ぎていた重低音も少し引いてきて、まとまってくれる。音楽を聴かせるようにテレビの前に音が集まってくるので、音楽番組も快適に楽しめる。

   
         
  「MOVIE」モードは後方の奥行きをより強く感じることができる音場モード。臨場感あふれるサウンドを楽しめる   「MUSIC」モードは左右の広がりを感じることができる音場モード。ライブ感を味わいたいときに最適だ  






センターユニットには、HDMI端子を3系統用意していて、BDレコーダーやゲーム機なども同時に接続できる。さらに、主要メーカー5社のテレビやレコーダーとHDMIリンクに対応(HDMIリンク対応機器一覧はこちら)。電源ON/OFFに連動したり、テレビのリモコンで「YHT-S350」の音量調整も行える。

YHT-S350背面端子
   
         
  背面端子部にはHDMI入力端子を3系統装備。BDレコーダー、ゲーム機を繋げてもまだ1系統余裕がある。これは有り難い!   シンプルなつくりのリモコン。サラウンドモードも簡単に切り換えることができる  

 


加えて、東芝の液晶テレビ“REGZA”の秋冬モデルや日立“Wooo”などの一部テレビでは、テレビで視聴中の番組のジャンルを認識して、自動的にサラウンドモードを切り替える「おまかせサラウンド」を装備(対応テレビはこちら)。これは録画したコンテンツにも有効。音楽番組や映画、バラエティなどに合わせて「MUSIC」「MOVIE」「TV PROGRAM」と本当に自動で切り替わっていく。

スポーツ中継に切り替えると、いったん「SPORTS」とセンターユニットの液晶部に表示がでて、その後「TV PROGRAM」となる。ああちゃんとジャンルを認識しているやとうれしくなる。野球中継を見ていたが、アナウンサーの声はきっちりセンターに定位し、観ている位置を取り囲むように歓声が広がる。この歓声が邪魔にならず、臨場感をわかせるように部屋に広がる。長時間視聴していてもまったく疲れないし、試合に集中できる。





野球中継などテレビ番組を観ているときに役に立つのが、本機に搭載されたユニボリュームだ。これは本編からCMに切り替わるときにボリュームを整える機能。「YHT-S350」を使い始めると、ボリュームは上げ気味になるので、本編の状態のままでいるとCMに切り変わった途端、とてもうるさく感じる。リモコンで設定を切り替えられるが、これは入れっぱなしでもいいと思う。




今回はスピーカーの大きさなどを考え、組み合わせるテレビはバランスを考えて32V型を用意したが、50V型でも十分使える広さとパワーを持った音を再現してくれる。

2.1chのコンパクト&お手軽なシステムなので、音も薄いのではと考えていたのだが、その予想は見事に覆された。大型テレビを購入したのに、音に迫力がないとお嘆きの方で、手軽にいい音が聴きたい。そんなニーズに確実に応えてくれるシステムだ。

■筆者プロフィール

堀江大輔(D☆FUNK)

オーディオ&ビジュアル系に強いデジタルライター。オーディオ&ビジュアル誌の編集を務めた後独立。オーディオ&ビジュアルを中心にデジタル機器の製品評価を数多くこなす。