独自高音質化技術「K2HDプロセッシング」の詳細に迫る − エンジニアのノウハウで“その場で鳴っていた音”を再現
国内外の著名ミュージシャンの作品づくりに携わり、日本プロ音楽録音賞を数多く受賞している名門「ビクタースタジオ」が運営する、“スタジオ直営”のハイレゾ配信サイト「VICTOR STUDIO HD-Music(HD-Music.)」。いまや国内外の様々な曲がハイレゾで配信されるようになったが、同スタジオは独自技術を使い、過去の名盤まで遡ってハイレゾ化を行っているのが特徴だ。その技術は「K2HDプロセッシング」。いったいどんなものなのかを詳細に探っていくことにしよう。
■K2HDは失われたデータを補間する技術
まずは「K2HDプロセッシング」の基本についておさらいしよう。
K2HDプロセッシングとは、CD(44.1kHz/16bit)などのデータを最大192kHz/24bitまでアップサンプリング&ビット拡張できる技術。たとえばCD用マスターしかない音源も、ハイレゾ化することができるのだ。
楽器の音色や人の声は、基本の波形(基音=音程)と、それぞれ特有の高調波成分(倍音)が組み合わさっている。バイオリンの音とクラリネットの音が違って聞こえるのは、高調波成分の違いのためだ。なので、そのデータがきちんと収められているかどうかが、音色の表現に大きく関わってくる。
しかしCDなどの場合、収められる高調波データには限りがある。というのもCDフォーマットという規定された枠のなかに収めるために20kHz以上の波形はカットされてしまうからだ。そのため、楽器本来の音色や音質感が変化してしまう部分がある。この失われた波形を補間して元の波形に近づけるのが、K2HDなのだ。
■適当に補正するものではない。エンジニアのノウハウを元に技術確立
「でも失われた波形を補正するって、どうやって?」「元々無いものを適当につくるってこと?」と思われる方もいるはず。「K2HDプロセッシング」は、むやみやたらに波形を“ねつ造”するものではない。この波形補正を行うシステムには、これまでエンジニアたちが積み重ねてきたノウハウが活かされているのだ。
■その方法とは?
単純にサンプリングレートを上げるアップサンプリングの場合、ふたつのサンプル地点の中間点を中間値で穴埋めするようなかたちになる。そのため、音の波形には変化がない。またビット拡張も、たとえば16bitを24bitにする場合各サンプルの音量レベルを256倍するだけ。階調表現としては変わらず、単にアンプでボリュームを上げたのと同じことになる。
一方、「K2HDプロセッシング」の場合を見ていこう。CDフォーマットに収めるために20kHz以上の音をカットしたとしても、基音はそのまま残る。K2HDではその基音を基に、本来の倍音構成を想定して高調波を生成する。
それにはまず、44.1kHz/16bitのデータを192kHz/24bitで細かくサンプリング。各サンプリングポイントごとに、時間軸(タイムドメイン)と電圧軸を解析するアルゴリズムによって高調波を生成し、波形補正を行っていく。高調波の発生の仕方は楽曲により異なるため、生成する割合はパラメーターで調整される。
このアルゴリズムとパラメーターは、様々なサンプリング周波数の録音データ(アナログマスターテープなど)→そのデータをCDフォーマット(44.1kHz/16bit)に変換→K2HD処理→元の音源と波形的/聴感的な違いを検証、というテストを何度も行って確立されたものだ。つまり「K2HDプロセッシング」とは、非常にざっくりまとめると「マスターテープから様々なフォーマットにダウンサンプリングした場合音がどう変化するかのデータを蓄積。それを元に復元したデータに、エンジニアの聴感的なエッセンスを加えることで元の音質に近づける」というものだと言えるだろう。
データの蓄積・検証は、同スタジオが保有する膨大なアナログマスターテープを使って行われたものであるし、聴感的な検証は、日常的に録音に携わっているエンジニアが担当している。数々のマスタリング作業を行ってきたスタジオだからこそ実現できた技術。それが「K2HDプロセッシング」なのだ。
■アナログマスターがない音源もハイレゾで楽しめるキーとなる技術
過去の音源、たとえばデジタル録音黎明期の音源などでは、そもそも現存するマスター自体が44.1kHz/16bitであることも多い。そういった音源も「K2HDプロセッシング」を使うことで、失われてしまった音を補間することができる。
単純に数字的スペックを上げるのではなく、元の音、つまり「その場に存在していた音」に近い音を再現できる ―これが、「K2HDプロセッシング」の大きなメリットだと言えるだろう。
■K2HDは失われたデータを補間する技術
まずは「K2HDプロセッシング」の基本についておさらいしよう。
K2HDプロセッシングとは、CD(44.1kHz/16bit)などのデータを最大192kHz/24bitまでアップサンプリング&ビット拡張できる技術。たとえばCD用マスターしかない音源も、ハイレゾ化することができるのだ。
楽器の音色や人の声は、基本の波形(基音=音程)と、それぞれ特有の高調波成分(倍音)が組み合わさっている。バイオリンの音とクラリネットの音が違って聞こえるのは、高調波成分の違いのためだ。なので、そのデータがきちんと収められているかどうかが、音色の表現に大きく関わってくる。
しかしCDなどの場合、収められる高調波データには限りがある。というのもCDフォーマットという規定された枠のなかに収めるために20kHz以上の波形はカットされてしまうからだ。そのため、楽器本来の音色や音質感が変化してしまう部分がある。この失われた波形を補間して元の波形に近づけるのが、K2HDなのだ。
■適当に補正するものではない。エンジニアのノウハウを元に技術確立
「でも失われた波形を補正するって、どうやって?」「元々無いものを適当につくるってこと?」と思われる方もいるはず。「K2HDプロセッシング」は、むやみやたらに波形を“ねつ造”するものではない。この波形補正を行うシステムには、これまでエンジニアたちが積み重ねてきたノウハウが活かされているのだ。
■その方法とは?
単純にサンプリングレートを上げるアップサンプリングの場合、ふたつのサンプル地点の中間点を中間値で穴埋めするようなかたちになる。そのため、音の波形には変化がない。またビット拡張も、たとえば16bitを24bitにする場合各サンプルの音量レベルを256倍するだけ。階調表現としては変わらず、単にアンプでボリュームを上げたのと同じことになる。
一方、「K2HDプロセッシング」の場合を見ていこう。CDフォーマットに収めるために20kHz以上の音をカットしたとしても、基音はそのまま残る。K2HDではその基音を基に、本来の倍音構成を想定して高調波を生成する。
それにはまず、44.1kHz/16bitのデータを192kHz/24bitで細かくサンプリング。各サンプリングポイントごとに、時間軸(タイムドメイン)と電圧軸を解析するアルゴリズムによって高調波を生成し、波形補正を行っていく。高調波の発生の仕方は楽曲により異なるため、生成する割合はパラメーターで調整される。
このアルゴリズムとパラメーターは、様々なサンプリング周波数の録音データ(アナログマスターテープなど)→そのデータをCDフォーマット(44.1kHz/16bit)に変換→K2HD処理→元の音源と波形的/聴感的な違いを検証、というテストを何度も行って確立されたものだ。つまり「K2HDプロセッシング」とは、非常にざっくりまとめると「マスターテープから様々なフォーマットにダウンサンプリングした場合音がどう変化するかのデータを蓄積。それを元に復元したデータに、エンジニアの聴感的なエッセンスを加えることで元の音質に近づける」というものだと言えるだろう。
データの蓄積・検証は、同スタジオが保有する膨大なアナログマスターテープを使って行われたものであるし、聴感的な検証は、日常的に録音に携わっているエンジニアが担当している。数々のマスタリング作業を行ってきたスタジオだからこそ実現できた技術。それが「K2HDプロセッシング」なのだ。
■アナログマスターがない音源もハイレゾで楽しめるキーとなる技術
過去の音源、たとえばデジタル録音黎明期の音源などでは、そもそも現存するマスター自体が44.1kHz/16bitであることも多い。そういった音源も「K2HDプロセッシング」を使うことで、失われてしまった音を補間することができる。
単純に数字的スペックを上げるのではなく、元の音、つまり「その場に存在していた音」に近い音を再現できる ―これが、「K2HDプロセッシング」の大きなメリットだと言えるだろう。