HOME > レビュー > ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 − 「イン・リオ / リー・リトナー」

ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 − 「イン・リオ / リー・リトナー」

公開日 2015/01/27 10:30
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

イン・リオ / リー・リトナー
WAV/FLAC 96kHz/24bit ¥3,240(アルバム)/¥540(単曲)
http://hd-music.info/album.cgi/460


今回のビクタースタジオ・セレクトは「イン・リオ / リー・リトナー」。多くの方が抱いているイメージであろう、エレキギターでの軽快なフュージョンサウンドとは一転し、ガットギターをメインにブラジリアンリズムを取り入れたアルバムだ。サウンド解説にもあるように、演奏しているミュージシャンやブラス・ストリングアレンジャー、エンジニアに至るまで、今では(予算的に?)実現不可能な超一流の面々が揃っている。

併せて、メイン楽器がアコースティックという事もあり、楽器の音の質感は勿論、当時レコーディングされたスタジオやブースの空気感までもが十分に楽しめる。

この作品は、アナログテープからのハイレゾ化。アナログテープであれば何でも音が良いとイメージされがちだが、実はそうではなく、テープを扱うエンジニアの経験値があってこそなのだ。

アナログテープの取り扱いは非常にデリケートで、記録された情報のポテンシャルを最大に生かすには、録音時に使用したレコーダーで再生するのがベストだ。しかしそれは難しいので、別途テープに幾種類かの信号を録音し、なるべくレコーディング時の状態と同じになるよう再生レコーダーを調整する。それでも、レコーダーの個体音質差やテープ自体の経年劣化等でままならないケースもあるため、最後はテープを扱うエンジニアの熟練した経験値や累積されたノウハウが頼りになってくる。この作品では、そういった部分をマスタリングエンジニアの力量で見事にクリアしているのだ。

また、CDなどでは部分的に歪みっぽかった2曲目「サンワン・サンセット」のエレキピアノが、このハイレゾ版では気にならなくなっているのがお分かり頂けるだろう。これも隠れたエンジニアの技。音づくりやサウンドメイクに加え、随所にマスタリングエンジニアの隠れた力がうかがえる傑作である。



袴田 剛史 氏
ビクタースタジオFLAIR所属マスタリングエンジニア


レコーディングエンジニアからキャリアをスタートし、レコーディングでは数多くのスタジオワークを経験。併せて外部での武者修行を含む、楽器の鳴りから音響空間の響きまで知り尽くすホール録音を体得。更には編集室の“虎の穴”に籠り、誰をも凌駕するエディティングワークを習得。これら総てにおいて「現役」として、レコーディング〜エディット〜マスタリングのどの部分にでも人一倍高いスキルでワンランク上の音楽づくりをサポートする。

複雑化するシステムと多様化し続ける機材への驚くべき対応力・順応性を持ちながらも、原音再生の「アナログっぽさ」をも、自らのものとする超本格派。

人当たりの柔らかさとは裏腹に、数えきれないシチュエーションであらゆる生音を経験し知り尽くした肌と耳は一級品。そして音には驚くほど頑なで頑固。

2007年よりスタートの「K2HDマスタリング」主宰。これまでに手掛けた1,000タイトルを超えるK2HDシリーズで絶賛を受け、そのサウンドメイクのスタイルを不動のものにした。そのピュアな耳への評価は高く、国内だけに留まらず海外からのオーダーも数多い実績を持つ。アジアの高音質CD界では教祖的存在。

FLAIR唯一のDAW “SADiE” の使い手でもある。マスタリングルームに収めきれない幅広いスキルが、進化し続ける新たな音楽づくりには欠かせない。「VICTOR STUDIO HD-Sound.」の殆どの作品を手掛ける、ビクタースタジオの“ハイレゾマスター”だ。


<袴田氏からのコメント>
「イン・リオ/ リー・リトナー」はアナログテープからハイレゾマスターを作成しています。テープの状態が非常に良かったので、音づくりもそうですが、まずは録音されているマスターの魅力を最大限に引き出すように心掛けました。アナログレコードやCDで既にリリースされていますので、その時のイメージそのままに、更に広がりや奥行を感じて頂けるように努めました。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE