OSとアプリの表示が一致せず
新型コロナウイルス感染症との接触記。COCOAアプリに課題あり
9月3日木曜日、朝5時頃にふと目が覚め、傍にあったiPhoneで時間を確かめようとしたら、通知センターに「COVID-19に曝露した可能性がある」旨の通知が表示されていた。
「COVID-19に曝露」というとなんだか難しそうだが、つまり、新型コロナウイルスの陽性者と、至近距離(1m以内)で15分以上接触した可能性があるという意味だ。
二度寝したいという気持ちは一瞬で吹き飛び、すぐに厚生労働省のCOCOAアプリを起ち上げた。
アプリの「陽性者との接触を確認する」ボタンをタップする。だが、「陽性者との接触は確認されませんでした」と表示され、先ほど見たはずの通知と一致しない。
ここで、起き抜けに見た通知をもう一度確認しようと、通知センターを呼び出すが、通知は既に消えており、再度見ることができない。仕事柄、なにか起きたらすぐスクショを撮ることが癖になっているのに、つい忘れてしまったことが悔やまれる。
だが記憶をたどると、通知に表示されていたアイコンは、iOSの「設定」で見た気がする。
「設定」を立ち上げ、該当の項目を探すと、すぐに見つかった。「接触通知」という項目だ。これは9月2日に提供開始された、最新のiOS 13.7から追加されたものだ。
「接触通知」の設定項目に入り、「接触チェックの記録」を押すと、日付が並んでいる。一番最近の日付を選ぶと、「一致したキーの数」に「1」と表示されている。
念のため他の日付も調べてみると、確認できたすべてのログで、キーの数は「0」だった。やはり接触があった可能性が高いと判断した。
■COCOAアプリとiOS/Androidとの関係
ここで、iOSやAndroidなどのスマホのOSと、COCOAアプリの関係を整理しておこう。
この春、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、アップルとGoogleというライバル同士が手を組んだことが話題となった。プライバシーを確保しながらBluetoothで接触状況の記録を取り、陽性判明者との接触状況を確認できる「Exposure Notification System」が開発されたのだ。
両社はiOSとAndroidに、同機能を組み込んだ。ただ、実際に接触記録を利用し、通知を行うのは、各国の保健当局などが配布するアプリだ。日本では厚生労働省がCOCOAを配っており、私も提供開始された初日からインストールしている。
今回の場合、iOSの接触記録と、COCOAの表示結果が明らかに食い違っている。COCOAのFAQを読むと、iOSでそのような結果が出ている場合にはメールで問い合わせをせよ、と書かれていた。すぐにiOSのスクリーンショットを取り、接触が疑われたハッシュ情報とともにメールを送った。
あとから知ったのだが、iOS版COCOAアプリで、通知と接触表示の結果が一致しないという報告が、その数日前から増えていたようだ。
■都道府県の相談窓口や保健所に問い合わせる
色々調べ、問い合わせを送ったのが午前6時30分頃。ここからどうしようかと、心を落ち着けて考えた。まず、自分の健康状況を確認する。発熱がないか念のため検温するが、平熱。倦怠感もない、咳もない。味覚障害もない。自覚症状は一切ない。まったくの健康状態と思える。
とはいえ、会社に行くことは出来ない。感染しているが無症状ということも十分に考えられるからだ。当日はリモートワークで勤務する旨を、会社にメールで送る。
家庭内感染の可能性にも思いを巡らせた。今まで家の中ではマスクをしていなかったが、おもむろに、なるべく飛沫防止効果の高そうなマスクを装着した。
さらに手を洗い、なるべく家族が触れそうなものには手を触れないようにする。7時を過ぎて起きてきた家族に、状況をかいつまんで説明し、あまり近くに来ないように注意する。もし自分が感染していたら、家族もすでに感染している可能性が高いが、できる限りのことはやっておきたい。
緩めの家庭内隔離をしたあと、次になにをしようか考えた。厚労省にメールで送った問い合わせは、すぐには返ってこないだろうと予想した(そして、その予想は正しかった)。
まず、都道府県の窓口に状況を伝えてみよう。私は埼玉県民なので、新型コロナウイルスの統一相談窓口に電話する。iOSとCOCOAの表示が食い違っている、と説明しても、意味を理解してもらえない。不安ならば近隣の保健所に電話を、と伝えられた。
言われたとおり、保健所に電話をして、同じ状況を伝える。ここでも、iOSレベルの通知とCOCOAの通知が一致していないということを伝えても、わかってもらえない。何か症状があるか聞かれ、全くないと伝えると、「『埼玉県 PCR 自費』というキーワードで、ヤフーなどで検索してください」と言われた。予想したとおりの対応だった。
COCOAで接触を確認できたら、公費でPCR検査が受けられる可能性がある。だが、何らかの不具合でCOCOAが機能していないと考えられる。問い合わせへの返信がいつ来るかもわからない。
これらの条件を色々と検討した結果、自費でも検査を受けることに決めた。会社にしばらく行けないとなると業務に支障を来すし、家庭内隔離をどこまでやるべきかの判断も難しい。陰性か陽性かをはっきりさせておきたい。
Googleで調べると、クルマで1時間以内の「ふじみの救急クリニック」というところで、24時間PCR検査を行っていると知る。自費でも1万円で検査してくれるらしい。もっと高いかと思っていたが、この9月から値下げ(?)したとのこと。アプリから、当日夕方の予約が取れた。
■あっけなく終わったPCR検査
なんだか落ち着かない気持ちで仕事をしながら、夕方になって妻が帰宅。クルマが使えるようになったので、そこから病院へ向かった。
PCR検査というと、巨大な病院の一角で行われていそうなイメージを持っていたのだが、行ってみたら驚いた。プレハブとパイプ、トタン屋根で組まれた、質素すぎる施設なのだ。野戦病院を見たことはないが、おそらくこんな感じかな、と思わせる見た目だ。ただしこのプレハブの中にCTスキャンも置かれているとのことで、見た目に似合わず高機能である。また受付も待つ場所も、いわゆる吹きっさらしで、密になりようがない。実は考えた末の設計なのかもしれない。
受付の方々もフレンドリーで、少し不安を抱えていた心が和んだ。フェイスシールドにマスク、ゴーグル、手袋などで防御は完璧なのだが、優しく声をかけてくれ、こちらを不安にさせまいという心遣いを感じた。
予約したアプリの画面を見せて、念のため名前などを自筆で記入。パイプ椅子を指差されて待つように言われたので座ると、ものの数分で、すぐに検査担当の方が来た。
検査そのものは、インフルエンザのそれと、基本的に同じだった。長めの綿棒を両方の鼻の奥に突っ込まれるので、少し不快感があるが、耐えられないほどではない。ものの30秒ほどで終了し、すぐに解放された。
■結果がわかったあとにアプリサポートから返信
病院から「検査結果は、次の日の15時までに、陽性の方だけに電話でお伝えします」と言われた。検査数が多いため、全員に電話はできないとのことで、それはそうだろうと納得する。
翌日の9月4日金曜日もリモート勤務を行った。家でビデオ会議に参加しているときに15時を迎え、陽性を告げる電話がなかったことに、少し安堵した。やはりというべきか、陰性だった。
そして、同じ金曜日の15時55分に、接触確認アプリサポートセンターから返答が来た。
メールには「接触チェックの記録内で一致したキーの数が1以上であるにも関わらず、アプリ上の表示が「陽性者との接触は確認されませんでした」と表示される事象に関しまして、現在調査中」と記載されていた。
また、「ご利用者様は、一致したキーの数が1以上ということで、陽性者との接触があった可能性がございます」とも書かれていた。正直、最初からわかっていたことで、問い合わせから33時間ほど経って返ってきた返事がこれか、と嘆息せざるを得なかった。
■誰でも使うアプリだけに素早い情報発信を期待
各所で指摘されているように、iOS版のCOCOAは、現在のところ、正常に動いていない可能性が高い。バグと断言しないまでも、少なくとも、私にメールで送られた程度の情報は、FAQに記載しておくべきだろう。それこそ、現在こういった問題があり、調査していることを、通知機能でアプリ利用者全員に知らせても良いくらいだと思う。
なお、Android版では上記のような問題は起きていないようで、COCOAアプリの「陽性者との接触を確認する」機能は正常に機能しているとのことだ。
COCOAは、多くの方が使ってこそ効果を発揮するアプリだ。アプリの修正を素早く行って欲しいという希望も当然あるが、それ以前に、誰でも理解できる情報発信を迅速に行って欲しい。
「COVID-19に曝露」というとなんだか難しそうだが、つまり、新型コロナウイルスの陽性者と、至近距離(1m以内)で15分以上接触した可能性があるという意味だ。
二度寝したいという気持ちは一瞬で吹き飛び、すぐに厚生労働省のCOCOAアプリを起ち上げた。
アプリの「陽性者との接触を確認する」ボタンをタップする。だが、「陽性者との接触は確認されませんでした」と表示され、先ほど見たはずの通知と一致しない。
ここで、起き抜けに見た通知をもう一度確認しようと、通知センターを呼び出すが、通知は既に消えており、再度見ることができない。仕事柄、なにか起きたらすぐスクショを撮ることが癖になっているのに、つい忘れてしまったことが悔やまれる。
だが記憶をたどると、通知に表示されていたアイコンは、iOSの「設定」で見た気がする。
「設定」を立ち上げ、該当の項目を探すと、すぐに見つかった。「接触通知」という項目だ。これは9月2日に提供開始された、最新のiOS 13.7から追加されたものだ。
「接触通知」の設定項目に入り、「接触チェックの記録」を押すと、日付が並んでいる。一番最近の日付を選ぶと、「一致したキーの数」に「1」と表示されている。
念のため他の日付も調べてみると、確認できたすべてのログで、キーの数は「0」だった。やはり接触があった可能性が高いと判断した。
■COCOAアプリとiOS/Androidとの関係
ここで、iOSやAndroidなどのスマホのOSと、COCOAアプリの関係を整理しておこう。
この春、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、アップルとGoogleというライバル同士が手を組んだことが話題となった。プライバシーを確保しながらBluetoothで接触状況の記録を取り、陽性判明者との接触状況を確認できる「Exposure Notification System」が開発されたのだ。
両社はiOSとAndroidに、同機能を組み込んだ。ただ、実際に接触記録を利用し、通知を行うのは、各国の保健当局などが配布するアプリだ。日本では厚生労働省がCOCOAを配っており、私も提供開始された初日からインストールしている。
今回の場合、iOSの接触記録と、COCOAの表示結果が明らかに食い違っている。COCOAのFAQを読むと、iOSでそのような結果が出ている場合にはメールで問い合わせをせよ、と書かれていた。すぐにiOSのスクリーンショットを取り、接触が疑われたハッシュ情報とともにメールを送った。
あとから知ったのだが、iOS版COCOAアプリで、通知と接触表示の結果が一致しないという報告が、その数日前から増えていたようだ。
■都道府県の相談窓口や保健所に問い合わせる
色々調べ、問い合わせを送ったのが午前6時30分頃。ここからどうしようかと、心を落ち着けて考えた。まず、自分の健康状況を確認する。発熱がないか念のため検温するが、平熱。倦怠感もない、咳もない。味覚障害もない。自覚症状は一切ない。まったくの健康状態と思える。
とはいえ、会社に行くことは出来ない。感染しているが無症状ということも十分に考えられるからだ。当日はリモートワークで勤務する旨を、会社にメールで送る。
家庭内感染の可能性にも思いを巡らせた。今まで家の中ではマスクをしていなかったが、おもむろに、なるべく飛沫防止効果の高そうなマスクを装着した。
さらに手を洗い、なるべく家族が触れそうなものには手を触れないようにする。7時を過ぎて起きてきた家族に、状況をかいつまんで説明し、あまり近くに来ないように注意する。もし自分が感染していたら、家族もすでに感染している可能性が高いが、できる限りのことはやっておきたい。
緩めの家庭内隔離をしたあと、次になにをしようか考えた。厚労省にメールで送った問い合わせは、すぐには返ってこないだろうと予想した(そして、その予想は正しかった)。
まず、都道府県の窓口に状況を伝えてみよう。私は埼玉県民なので、新型コロナウイルスの統一相談窓口に電話する。iOSとCOCOAの表示が食い違っている、と説明しても、意味を理解してもらえない。不安ならば近隣の保健所に電話を、と伝えられた。
言われたとおり、保健所に電話をして、同じ状況を伝える。ここでも、iOSレベルの通知とCOCOAの通知が一致していないということを伝えても、わかってもらえない。何か症状があるか聞かれ、全くないと伝えると、「『埼玉県 PCR 自費』というキーワードで、ヤフーなどで検索してください」と言われた。予想したとおりの対応だった。
COCOAで接触を確認できたら、公費でPCR検査が受けられる可能性がある。だが、何らかの不具合でCOCOAが機能していないと考えられる。問い合わせへの返信がいつ来るかもわからない。
これらの条件を色々と検討した結果、自費でも検査を受けることに決めた。会社にしばらく行けないとなると業務に支障を来すし、家庭内隔離をどこまでやるべきかの判断も難しい。陰性か陽性かをはっきりさせておきたい。
Googleで調べると、クルマで1時間以内の「ふじみの救急クリニック」というところで、24時間PCR検査を行っていると知る。自費でも1万円で検査してくれるらしい。もっと高いかと思っていたが、この9月から値下げ(?)したとのこと。アプリから、当日夕方の予約が取れた。
■あっけなく終わったPCR検査
なんだか落ち着かない気持ちで仕事をしながら、夕方になって妻が帰宅。クルマが使えるようになったので、そこから病院へ向かった。
PCR検査というと、巨大な病院の一角で行われていそうなイメージを持っていたのだが、行ってみたら驚いた。プレハブとパイプ、トタン屋根で組まれた、質素すぎる施設なのだ。野戦病院を見たことはないが、おそらくこんな感じかな、と思わせる見た目だ。ただしこのプレハブの中にCTスキャンも置かれているとのことで、見た目に似合わず高機能である。また受付も待つ場所も、いわゆる吹きっさらしで、密になりようがない。実は考えた末の設計なのかもしれない。
受付の方々もフレンドリーで、少し不安を抱えていた心が和んだ。フェイスシールドにマスク、ゴーグル、手袋などで防御は完璧なのだが、優しく声をかけてくれ、こちらを不安にさせまいという心遣いを感じた。
予約したアプリの画面を見せて、念のため名前などを自筆で記入。パイプ椅子を指差されて待つように言われたので座ると、ものの数分で、すぐに検査担当の方が来た。
検査そのものは、インフルエンザのそれと、基本的に同じだった。長めの綿棒を両方の鼻の奥に突っ込まれるので、少し不快感があるが、耐えられないほどではない。ものの30秒ほどで終了し、すぐに解放された。
■結果がわかったあとにアプリサポートから返信
病院から「検査結果は、次の日の15時までに、陽性の方だけに電話でお伝えします」と言われた。検査数が多いため、全員に電話はできないとのことで、それはそうだろうと納得する。
翌日の9月4日金曜日もリモート勤務を行った。家でビデオ会議に参加しているときに15時を迎え、陽性を告げる電話がなかったことに、少し安堵した。やはりというべきか、陰性だった。
そして、同じ金曜日の15時55分に、接触確認アプリサポートセンターから返答が来た。
メールには「接触チェックの記録内で一致したキーの数が1以上であるにも関わらず、アプリ上の表示が「陽性者との接触は確認されませんでした」と表示される事象に関しまして、現在調査中」と記載されていた。
また、「ご利用者様は、一致したキーの数が1以上ということで、陽性者との接触があった可能性がございます」とも書かれていた。正直、最初からわかっていたことで、問い合わせから33時間ほど経って返ってきた返事がこれか、と嘆息せざるを得なかった。
■誰でも使うアプリだけに素早い情報発信を期待
各所で指摘されているように、iOS版のCOCOAは、現在のところ、正常に動いていない可能性が高い。バグと断言しないまでも、少なくとも、私にメールで送られた程度の情報は、FAQに記載しておくべきだろう。それこそ、現在こういった問題があり、調査していることを、通知機能でアプリ利用者全員に知らせても良いくらいだと思う。
なお、Android版では上記のような問題は起きていないようで、COCOAアプリの「陽性者との接触を確認する」機能は正常に機能しているとのことだ。
COCOAは、多くの方が使ってこそ効果を発揮するアプリだ。アプリの修正を素早く行って欲しいという希望も当然あるが、それ以前に、誰でも理解できる情報発信を迅速に行って欲しい。