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【短期集中連載】ノイズ対策の新常識(1)ノイズ源を知ろう

「良い音は、正しいノイズ対策から」。デジタル時代の音質改善術を探る

公開日 2021/05/01 07:10 鈴木 裕
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■携帯電話や無線機器の爆発的普及がもたらす見えない“悪影響”

オーディオを取り巻く環境は年々悪くなっている。特にノイズ関連だ。高周波のノイズが壁コンセントの電気に乗ってやってくるし、空中を飛び交う電磁波は増え続けている。日々増え続ける電源や電磁波の高周波のノイズがオーディオ機器に働きかけて、再生音の足をひっぱっているのを否定するわけにはいかない。

温水洗浄便座などオーディオに悪影響を与えるノイズ源は年々増えている。どういったノイズ源にはどういった対策が有効かをひとつずつ解説していく

筆者はこの問題に5年程度は取り組んで来ている。それは学究的なものではなく、一人のオーディオ好き、音楽好きとして、家の中の配電盤の中からオーディオ機器に至るまでの電気の流れを考えて対策したり、電磁波からシールドするオーディオケーブル類などを投入してみてはその「ある/なし」を再生音を聴いて判断。

効果があるとすればその変化率の大きさや、効果はあるけどネガの部分も持っているとか、値段のわりに効果が薄い、というようにひとつひとつをテストしてきた。もちろん、その中で結果がいいものはそのまま対策として残し、積み重ねてきた。

結論から言えば、そうしたノイズ類の影響をなくしていくと、オーディオの音の純度は相当に上がっていく。「純度が上がる」と書くと、「きれいな音になる」と誤解されるかもしれないが、元の音楽が激しく迸るようなロックであれば、その迸り方が激しくなるし、皮膚や骨格、内蔵に感じられるような低音を含んでいれば、そうした(耳ではなく)カラダへの“圧”の感じが強くなる。

もちろん清澄できれいな音は清澄できれいな音として。あたたかみのある心地よい音は、その度合いが高まる。要するに、元の音楽ソフトに録音されているものに対して忠実度の高い再生だが、ノイズ成分を除去していくことによって付帯音のない、音楽そのものを楽しめるようになる。

■目に見えない高周波ノイズは、音楽本来の感触を失わせる

目に見えない、耳にも聴こえない、しかしオーディオの質を下げてしまう。だからこそ高周波の問題はやっかいだ。

たとえばスマホにイヤホンを装着して音楽を聴いている時に、そのコードにPC関連のUSBケーブルが近づくと、ザジーとかピピピーといったようなノイズが聴こえることがある。それはたしかにPC関連のわかりやすいノイズの一部だ。しかし高周波はそういったノイズらしい音としては聴こえないのに、再生音の質を下げる働きをもたらしてしまう。言うまでもなく高い周波数で、その音自体は聴こえない帯域の成分だからだ。

しかし、聴こえる周波数の音楽の音に対して悪い影響を与える悪い力を持っている。たとえば、高域を歪みっぽくさせていたり、本来のやわらかく耳あたりのいい音の感触を失わせる。あるいはサウンドステージとして見えてくる空間の透明度を下げたり、本来は離れて定位する音像をくっつけ、癒着させ、解像度を低下させる。

「歌の歌詞はわかるし、とりあえずのサウンドは聴けますよ」と感じている方も多いと思う。その体感は尊重したいが、対策した再生音と比較すれば、上記の弊害は間違いなく発生している。悪質な業者がなにかの健康被害をネタに脅しているようで恐縮なのだが、何の対策もなしに心地よく音楽を聴くのは難しい時代になってしまった。これは大げさな物言いでも詐欺でもなく、残念ながら事実だ。

■冷蔵庫やパソコン、オーディオ機器そのものからもノイズが発生している

自宅のオーディオ機器がそういったノイズの影響を受けているかどうかを確認するのにはどうしたらいいか。まず、計測機器を使うのは現実的じゃない。高価だし、専門的な知識も要る。専門家が再生音を聴けばわかるのだが、一般の人だとその良い状態を知らないと判断はつかないだろう。なんとなく、パッとしないなとか、音が気持ち良くない、とは体感しているはずなのだが。

でも大丈夫だ。「大丈夫」という言葉が適切かどうかわからないが、多くの一軒家やマンションにおいて、ノイズの影響を受けていないオーディオは、ほぼない。あなたのオーディオは間違いなくノイズを影響を受けている。家の中に以下のような家電等があれば、ノイズを発生させているのだから。

どこの家庭にも間違いなくある冷蔵庫、これも大変なノイズ源のひとつ。24時間付けっ放しが前提のため、最初に取り組みたい対策ポイントのひとつだ

エアコンも大きなノイズ源だが、さすがにエアコンなしで暮らす訳には行かない。鈴木氏の試聴室でも電源対策を施し悪影響を減らす工夫をしている

1.エアコン、冷蔵庫、蛍光灯、IH調理器、電子レンジ
2.電気ポット、トイレの洗浄器付き便座、電子レンジ、冷蔵庫
3.LED照明
4.ルーター、PC
5.扇風機、換気扇、CDプレーヤー、洗濯機
6.CDプレーヤー、USB-DAC、ネットワークプレーヤー
7.電源アダプターを使っている家電ほぼ全部

これらは何のククリで分けているかというと、
1.インバーター電源を搭載しているもの
2.マイコンを搭載しているもの
3.LED照明が持つ交流電源を直流に変換するPWM変調回路からのノイズ
4.コンピューター関連。デジタル信号自体や信号を処理する際に生まれるノイズ
5.モーターからのノイズ
6.音楽をコーディングした音楽のデジタル信号自体がデジタルノイズ
7.電源アダプターの多くが採用するスイッチング電源の影響

といった要素を持っている。エアコンや冷蔵庫は家庭内の必需品であるし、(6)のように、オーディオ機器そのものがノイズ源となってしまうこともある。もちろんそれぞれの家電として対策をしているものもあるし、何らかの規制をクリアしているはずだ。そもそもノイズは一定ではなく、さまざまな周波数成分やピーク電圧などがあるだろう。

しかしオーディオの音という繊細なものに対しては充分な規制値ではないように感じるし、これだけたくさんの要素があると重なり合って複合的な影響を与えてしまうこともある。さらにここに、空中を飛び交う電磁波の問題も絡んで来る。

ということで、次回以降、なるべく費用のかからないやり方から、オーディオアクセサリーの投入まで、いろんな段階での対策をお伝えしていこう。

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▶▶▶集中連載(3)ノイズ対策の新常識:ストリーミングにも効く! アクセサリーの効果的な使い方を徹底解説

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