真空管アンプも新製品が多数登場
<HIGH END>山之内 正が聴いたミュンヘン・ハイエンド#2:パワーアンプの進化を実感&広がるアナログ再生
今年の「ミュンヘン・ハイエンド」で出会ったコンポーネントを振り返る第2弾は、アンプやアナログ関連など、スピーカー以外のジャンルの動向と注目機を紹介する(スピーカーを中心に紹介した第1弾はこちら)。
オーディオイベントでは、家庭で実現できない大規模なシステムが目を引く。巨大で高価なシステムはそれだけで話題を集めるし、ブランドの知名度を上げる効果も期待できる。しかし、ショウを盛り上げることだけを狙った展示は、その場では来場者を圧倒するかもしれないが、長く記憶にとどまることは稀で、多くの場合はすぐに忘れられてしまう。
一方で、ひたすら音を追い込んだ結果、システムの規模が大きくなってしまった例もある。もちろん価格も天井知らずだが、これまで体験したことがない音が出ていれば、その音は確実に記憶に刻まれる。
今回のミュンヘン・ハイエンドでは、パワーアンプの進化を実感させる音を複数のブースで体験することができた。フラグシップ級スピーカーの広帯域化とパワーアンプの進化は確実にリンクしている。その最前線を体験できる場でもあるのだ。
LINN(リン)は、昨年は「KLIMAX DSM」と「360 EXAKT」でシンプルなハイエンドシステムを鳴らしていたが、今年はパッシブ型の「360 PWAB」を6台(!)の「KLIMAX SOLO 800」で駆動する大規模なシステムを公開。新たに登場したモノラルパワーアンプの安定した増幅性能を強く印象付けた。
360 PWABは低域用に独立したパワーアンプ「Power DAC」を内蔵しているので、4ウェイスピーカーの各ドライバーユニットを専用のアンプで鳴らすマルチアンプシステムということになるが、超低域も含むすべての帯域で発音タイミングと音色が見事に揃い、クレッシェンドで到達する音圧の大きさと瞬発力は格別だ。3段スタックのKLIMAX SOLO 800は見た目のインパクトが強烈だが、小音量でも抜群のリニアリティと歪みの少なさを印象付け、360 PWABのポテンシャルの高さを再認識させられた。
Constellation(コンステレーション)は、新世代のRevelationシリーズに導入した新しいステレオパワーアンプでWilson Audio(ウィルソン・オーディオ)の「Sasha V」を鳴らしていた。少なくともサイズの上では現実的なサイズに収まっているが、部屋全体の空気を一気に動かす瞬発力のゆとりはモンスター級アンプに肉薄するものがある。
Sasha Vで聴くとパワーアンプの基本性能が瞬時に明らかになるという経験をこれまで何度か重ねている。特に超低域の歪みのない音色と正確なピッチの再現という視点で見たとき、このスピーカーからここまで次元の高い音を引き出すのは希有なことだと断言できる。
以前からこのショウで人気の高い真空管アンプについても注目機が続々登場しており、人気が衰えるどころか、さらに勢いが加速している印象を受けた。特にPILIUM(ピリウム)、RIVIERA(リヴィエラ)など南欧や東欧のブランドが強い存在感を見せるのはミュンヘンの地理的条件を考えれば当然のことだが、エアータイト、フェーズメーション、トライオードなど、遠く離れた日本メーカーの健闘ぶりも目を引く。
筆者が訪ねたときは再生していなかったが、フェーズメーションが初のプリメインアンプ「SA-1500」を公開したのは予想外だった。
多くのブースでLPレコードをメインソースの一つとして再生している光景は例年通りで、ミュンヘンではごく当たり前の選択肢となっている。数が多いだけでなく、レコードの価値を再認識させられるような鮮度の高さと膨大な情報量を実感させる例もあり、アナログオーディオが欧州のハイエンド市場を牽引する重要な役割を演じていると感じた。
トーンアームとフォノイコライザーアンプを新たに導入したVERTERE(ヴァルテレ)は、聴き慣れた音源から予想外の生々しい音を引き出してリスナーを虜にし、ソウルノートのブースでは光カートリッジ専用フォノイコライザー「E-3」がMAレコーディングスの名録音を別格というべき臨場感を伴って再現。ブースでデモンストレーションに参加していた同レーベルのタッド・ガーフィンクル本人もレコード再生の豊かな表現力に強い関心を寄せていた。
サエクが発表した新しいトーンアーム「WE-709」は、同社のWE-407/23を長く使い続けている筆者にとって大いに気になる存在だ。ラテラルバランス用のウェイトはWE-407/23やWE-4700よりも大型化され、ダブルナイフエッジ機構を構成する基本構造とパーツ類も含めて大胆にリファインしていることがうかがえる。インサイドフォースキャンセラーの機構も新しくなり、使い勝手も良さそうだ。
ラックスマンはデジタルとアナログそれぞれ強力な新製品を用意し、念願だったラインナップの拡充と刷新を同時に達成。「NT-07」とのペアを想定した「DA-07」は演奏会場の空気感まで伝える自然な再生音を獲得している。「PD-191A」と「E-07」の組み合わせからも同社が目指す表情豊かな描写の一端をうかがうことができた。この夏以降は国内のイベントでも体験できるはずなので、楽しみにしていただきたい。
オーディオイベントでは、家庭で実現できない大規模なシステムが目を引く。巨大で高価なシステムはそれだけで話題を集めるし、ブランドの知名度を上げる効果も期待できる。しかし、ショウを盛り上げることだけを狙った展示は、その場では来場者を圧倒するかもしれないが、長く記憶にとどまることは稀で、多くの場合はすぐに忘れられてしまう。
一方で、ひたすら音を追い込んだ結果、システムの規模が大きくなってしまった例もある。もちろん価格も天井知らずだが、これまで体験したことがない音が出ていれば、その音は確実に記憶に刻まれる。
今回のミュンヘン・ハイエンドでは、パワーアンプの進化を実感させる音を複数のブースで体験することができた。フラグシップ級スピーカーの広帯域化とパワーアンプの進化は確実にリンクしている。その最前線を体験できる場でもあるのだ。
LINNの弩級システムなどパワーアンプ進化の最前線を体験
LINN(リン)は、昨年は「KLIMAX DSM」と「360 EXAKT」でシンプルなハイエンドシステムを鳴らしていたが、今年はパッシブ型の「360 PWAB」を6台(!)の「KLIMAX SOLO 800」で駆動する大規模なシステムを公開。新たに登場したモノラルパワーアンプの安定した増幅性能を強く印象付けた。
360 PWABは低域用に独立したパワーアンプ「Power DAC」を内蔵しているので、4ウェイスピーカーの各ドライバーユニットを専用のアンプで鳴らすマルチアンプシステムということになるが、超低域も含むすべての帯域で発音タイミングと音色が見事に揃い、クレッシェンドで到達する音圧の大きさと瞬発力は格別だ。3段スタックのKLIMAX SOLO 800は見た目のインパクトが強烈だが、小音量でも抜群のリニアリティと歪みの少なさを印象付け、360 PWABのポテンシャルの高さを再認識させられた。
Constellation(コンステレーション)は、新世代のRevelationシリーズに導入した新しいステレオパワーアンプでWilson Audio(ウィルソン・オーディオ)の「Sasha V」を鳴らしていた。少なくともサイズの上では現実的なサイズに収まっているが、部屋全体の空気を一気に動かす瞬発力のゆとりはモンスター級アンプに肉薄するものがある。
Sasha Vで聴くとパワーアンプの基本性能が瞬時に明らかになるという経験をこれまで何度か重ねている。特に超低域の歪みのない音色と正確なピッチの再現という視点で見たとき、このスピーカーからここまで次元の高い音を引き出すのは希有なことだと断言できる。
世界的にもハイクオリティな真空管アンプが続々登場
以前からこのショウで人気の高い真空管アンプについても注目機が続々登場しており、人気が衰えるどころか、さらに勢いが加速している印象を受けた。特にPILIUM(ピリウム)、RIVIERA(リヴィエラ)など南欧や東欧のブランドが強い存在感を見せるのはミュンヘンの地理的条件を考えれば当然のことだが、エアータイト、フェーズメーション、トライオードなど、遠く離れた日本メーカーの健闘ぶりも目を引く。
筆者が訪ねたときは再生していなかったが、フェーズメーションが初のプリメインアンプ「SA-1500」を公開したのは予想外だった。
多くのブースでLPレコードをメインソースの一つとして再生している光景は例年通りで、ミュンヘンではごく当たり前の選択肢となっている。数が多いだけでなく、レコードの価値を再認識させられるような鮮度の高さと膨大な情報量を実感させる例もあり、アナログオーディオが欧州のハイエンド市場を牽引する重要な役割を演じていると感じた。
トーンアームとフォノイコライザーアンプを新たに導入したVERTERE(ヴァルテレ)は、聴き慣れた音源から予想外の生々しい音を引き出してリスナーを虜にし、ソウルノートのブースでは光カートリッジ専用フォノイコライザー「E-3」がMAレコーディングスの名録音を別格というべき臨場感を伴って再現。ブースでデモンストレーションに参加していた同レーベルのタッド・ガーフィンクル本人もレコード再生の豊かな表現力に強い関心を寄せていた。
日本メーカーから登場するアナログ新製品にも期待
サエクが発表した新しいトーンアーム「WE-709」は、同社のWE-407/23を長く使い続けている筆者にとって大いに気になる存在だ。ラテラルバランス用のウェイトはWE-407/23やWE-4700よりも大型化され、ダブルナイフエッジ機構を構成する基本構造とパーツ類も含めて大胆にリファインしていることがうかがえる。インサイドフォースキャンセラーの機構も新しくなり、使い勝手も良さそうだ。
ラックスマンはデジタルとアナログそれぞれ強力な新製品を用意し、念願だったラインナップの拡充と刷新を同時に達成。「NT-07」とのペアを想定した「DA-07」は演奏会場の空気感まで伝える自然な再生音を獲得している。「PD-191A」と「E-07」の組み合わせからも同社が目指す表情豊かな描写の一端をうかがうことができた。この夏以降は国内のイベントでも体験できるはずなので、楽しみにしていただきたい。