マイクロピュア・サウンド 誕生秘話 

小林 パストラルシンフォニーのスピーカー「Audio Performance Monitor AP102」と「Micropure Cz102」を聴いて驚きました。すこぶる気持ちがいいのです。小型のブックシェルフとはとても思えませんね。

福田 聴いていただければ、はっきりと分かってもらえると思います。
 キャビネットが小さいと、問題なのはユニットの振動板負荷質量の低下と、内部の圧力の変化によってダイヤフラムにストレスがかかります。
 その問題を、ユニットの周辺にわずかな隙間を空けまして、キャビネット内部の圧力変化をコントロールしているわけです。ユニットの取り付け方法としては今迄なかったことですね。

小林 なかったというより、ユニットはバッフル板にきちんと締め付けて取り付けなければいけないし、隙間があって空気が漏れるようなことは、絶対にあってはならないわけで。

福田 スピーカー作りの基本中の基本でしたが、実はそうではなかった。やってみたらすごい効果を発揮するので、自分でも驚いています。この技術をマイクロピュア・サウンド・ヒーリング・テクノロジーと称しています。

小林 どんな研究から得た成果ですか。

試作室のテーブルサイドにある工具吊り。様々な工具がいつでも取り出せる工夫がされている。
パストラルシンフォニーの福田氏(左)と小林氏(右)

福田 いえ、偶然に発見したんです。6年か7年か前のことですが、家のテレビ用にサブウーファーを作ろうとしました。
 ユニットはJBLの2205です。でも、キャビネットが小さいためか望んでいる低音が出ない。音を出しながら取り付けネジを外したんですが、たまたまドライバーがフレームとバッフルの間に挟まったのですね。
 そうしたらなんと、いい低音がドスンと鳴り出したんですよ。なんだこれはと、びっくりしました。隙間を広げたり狭くしたりして音の変化を確かめながら。
 家に来ていた友人のベーシストも、「なんだこのすごいベースの音は」と一緒に驚いていました。

小林 PAエンジニアとしてのキャリアが、偶然の出来事の重要さを見逃さなかったのですね。ベーシストと一緒に。

福田 ユニットを取り付ける際は、普通パッキンを入れてマスジメをしろということになってますね。しかし、締めれば締めるほど、ユニット側にはキャビネットの共振がもろにかかってくる。これは特に微弱な減衰音にいいわけがない。

小林 マイクロピュアの技術が特許となったのは、ユニットのマウント方法に関してなのでしょうか。

福田 そうです。小さいことのようですが、音響の教科書に隙間を空けてはいけないと書かれているほど常識的な事でしたから、見つけにくかった現象だと思います。


革新の技術でスピーカーブランドを立ち上げる 

小林 パストラルシンフォニーのスピーカー「Audio Performance Monitor AP101」などは、ユニットが浮いていると考えていいんですか。

福田 そうです。エアパッキングの働きをする非常に微細な隙間があります。そこにはバスレフ効果はありません。バスレフダクトは別にあります。
 キャビネットも、コーンの振動をそのまま増幅するように振動すれば、弦楽器のボディのように有益なものになります。
 このようなマイクロピュア・サウンド・ヒーリング・テクノロジーのメリットは格段の音質グレードアップだけでなく、それがローコストでできること。つまりユニットの開発は必要ないのです。従来のユニットを、さらに良い音で鳴らすことができますから。

小林 グレードの高い、ハイエンドレベルの再現性には本当に驚いています。

福田 最初の頃はリサイクルショップへ行き、ミニコンを買ってきて、そのスピーカーで実験をしていました。つまり「ローコストでいい音が出せる技術」なんですよ。
 低音のスピードに遅れがなく、しっかりしてます。バスレフの反射音も遅れません。倍音もオクターブ五度もきれいに乗るので、きちんとした音のピラミッドが形成されます。したがってナチュラルな音で浸透力がある。

小林 見事なのは減衰音の確かさ。

福田 従来のユニットマウント方法では、信号が減衰すると、キャビネットの共振と混ざって不正確なものになるんですね。

小林 ウッドのバスレフポートはくり抜き製なんですって。

福田 ダクトにはこだわります。倍音を正しく出すためのチューニングですが、音を聴きながらやりますので「調律」と言っております。まさしく楽器作りのアプローチですね。この調律がピタリと合うと、倍くらいの音量感が出てきます。
 管楽器で、俗にトウナリ(遠鳴り)というのがありますよね。音が遠くまで届く楽器を遠鳴りする良い楽器と言うのですが、これは倍音をきちんと出さないと不可能です。バスレフポートのチューニングにも同じように、楽器の調律のような高度なアプローチが必要なんですね。

小林 ユニットのマウント技術に戻りますが。さて、どのような方法で固定しているのですか。

福田 そこも重要なノウハウになりますが、点支持です。点支持の良さは振動モードの起点が明確になることです。

小林 どんなに微弱な音も密度を保ったまま再現する。しかも神経質な音ではない。マイクロピュアのスピーカーは、モニター用として最適でしょうね。

福田 パストラルシンフォニーというスピーカーブランドを立ち上げるためには、PAやスタジオエンジニア、音楽家の皆さんが強力な支援をしてくれています。さらには、非常に優れた木工・塗装技術を持つ高瀬木工さんやフジゲンさん(※楽器などの製造でも有名な日本の匠的技術者集団企業。パストラルシンフォニーのパートナーでもある)などの企業の存在無しには考えられません。ハンドメイドそのものですからね。

パストラルサウンドの試作&思索室

マイクロピュアは構造が単純なので、様々な分野のスピーカに応用が可能だ。同社ではフラットテレビ用薄型スピーカーや、オルガン、ベースなどの楽器・劇場用等も製作している。

写真は、東急文化会館閉館イベント「meets」プラネタリウムでの一コマ。本イベントでは「Micropure CR101」と「Audio Performance Monitor AP101」が使用され、好評を博していた。録音を担当したサウンドクラフト(株)の波田野氏は、「あれから、ボクの頭の中であの自然な音が離れません。」との感想を語ってくれた。


「ハイエンドショウ・トウキョウ2003」出展
ハイエンドショウ トウキョウ2003:http://www.hi-endshow.jp/
Phile-web スペシャルレポート:http://www.phileweb.com/event/hes-tokyo/2003/

Micropure Sound Healing Technology Speakers

 \280,000(1本)

●形式:2ウェイ・バスレフ型
●ユニット:Vifa社製 17cm コーテッドペーパーコーンウーファー、
      ScanSpeak社製 28mm ソフトドームトゥイーター
●能率:88dB/W/m
●定格周波数範囲:44Hz〜35kHz
●外形寸法:284W×572H×316Dmm(サランネット装着時、ターミナル突起分を含む)
●質量:11kg

 \OPEN(予想実売価格\250,000円前後(ペア))

●形式:2ウェイ・バスレフ型
●ユニット:13cm SEAS社製 コーン型ウーファー、
      28mm MOREL社製ソフトドーム型トゥイーター
●能率:89dB/W/m(8Ω)
●上限再生周波数:25kHz(-10dB)
●外形寸法:194W×303H×234Dmm
●質量:6kg

 \298,000(ペア)

●形式:2ウェイ・バスレフ型
●ユニット:13cm SEAS社製 コーン型ウーファー
      20mm SEAS社製 ソフトドーム型トゥイーター
●能率:90dB/W/m(8Ω)
●定格周波数範囲:53Hz〜25kHz
●総ナラ単板製キャビネット使用
●外形寸法:182W×291H×245Dmm
●質量:4.75kg
*V2復刻版にて生産継続決定。時期バージョン開発は無期延期

Pastoral Symphony
パストラルシンフォニー
 http://www.micropure.jp

 〒191-0052
 東京都日野市東豊田3-3-11
 Tel&Fax:050-7509-3701


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