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レビュー
優秀録音ハイレゾ音源レビュー
Theory of evolution
イヤホンズ ポップス 無 FLAC WAV48kHz/24bit
レーベル:キングレコード 配信サイト:e-onkyo music
■高橋 敦レビュー
三人の声優による音楽ユニット、イヤホンズの3rdアルバムは、完全新曲、過去曲「進化版」のリメイク曲、シングル曲が混在する構成だ。イヤホンズは声優ユニットとしては珍しいことに、キングレコードのいわゆる「本体」ではなく、ももクロや特撮など各分野の個性派が揃う内部レーベル「EVIL LINE RECORDS」に所属。そちら所属となった理由は定かではないが結果的に、既存の声優楽曲らしさにはとらわれず新しい形での声優ならではの音楽表現にまで挑戦していく、独立部隊的に自由度の高い先鋭的な声優ユニットとして成長してきた。本作収録「記憶」はそれを特に象徴する楽曲。一人の女性が幼少期、学生時代、大人、それぞれの季節の記憶を振り返る様子を、それを想起させる環境音等も使ったトラックの上で、歌ともラップとも朗読とも演技とも、どれかひとつには分類できないような絶妙なニュアンスで表現していく。「声を使った表現」のスペシャリストでありオールラウンダーである声優だからこそ成立させられる楽曲だ。例えば大人の時期を振り返る長久友紀さん担当ブロックは、リズムに合わせてリズミカルに語ると言うよりは、大人の落ち着きと少しの疲れを感じさせる静かなモノローグに含まれる少しのリズムがトラックのリズムと自然に溶け合うような印象。そのような絶妙さだ。サウンド面では前述の環境音等の処理が注目ポイント。まさに記憶の中にある音のように、イコライジングやリバーブの処理でセピア色に少しぼやけさせられており、それでいてやはり記憶の中にある音のように妙に鮮明にも感じられる。そのおかげで、環境音や風景音を組み合わせてトラックを構築するというトリッキーなものでありながら、全体としてはそのトリッキーさが際立ちすぎない。声の表現からトータルでの完成度まで実に見事だ。
(FLAC 48/24にて試聴)