優秀録音ハイレゾ音源レビュー

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今日だけの音楽

坂本真綾 ポップス FLAC WAV
96kHz/24bit
レーベル:FlyingDog 配信サイト:e-onkyo music

■高橋 敦レビュー
アルバムとしては前作から四年振りとなる、坂本真綾さんニューアルバム。まず好ましく感じたのは、その間に発表したシングルがこのアルバムには含まれていないということ。常にそれが正解というわけではなく今回はそれがよかったということだろうが、そこを切り離すことで、シングルもアルバムもどちらもそれぞれの個性をより強く打ち出せていると思う。そしてこのアルバムの個性とは、タイトルで明確に宣言されている「今日聴くのと、明日聴くのとでは意味が変わってしまう、今日だけの音楽」というコンセプト。それをキーワードとして坂本真綾さんご自身が書き上げたショートストーリーを受け、作家陣がそれぞれの解釈で様々な曲を作り上げたという。興味深く感じたのは例えば、ゲスの極み乙女。等で活躍する川谷絵音さんによる「ユーランゴブレット」。ならではの癖や川谷印とも言えるギターフレーズもあるが、しかし坂本真綾さんが歌うと坂本真綾らしさの方が勝って届いてくる印象だ。個性の塊のように思える川谷絵音さんの曲が実は歌う人次第で届くものが変わるような普遍性も備えているということに、遅ればせながら気付かされた。歌はいつ誰が歌うのかによっても意味が変わる。それは「今日だけの音楽」にも通じるところかもしれない。レコーディングやミックスのバランスはポップスとしてベストな形のひとつ!と言ってよいだろう。ややコンパクトにシェイプされた各楽器の音像が十分な余白を持たされて配置されており、音場の見晴らしが素晴らしくよい。なので歌の見え方も素晴らしく綺麗で、細かなニュアンスまでがしっかりと届いてくる。よほど特殊なサウンドを狙った個性はシステムで聴いたりしない限りは、良好なバランスで楽しめることだろう。そしてまた、いつかよほど特殊なシステムで聴くときが来たら、それもまた「今日だけの音楽」になる。
(FLAC 96/24にて試聴)

総合点 9.3
低域の伸び9.2点 高域の伸び9.3点 セパレーション9.3点 ディテール9.2点 透明感9.3点 空気感9.2点 質感9.2点 静寂感9.2点 残響 奥行き 音像 アタック