• ブランド
    特設サイト
公開日 2006/12/29 11:49

カモミールボイスの持ち主・藤田恵美 − インタビュー1<録音の話>

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

藤田恵美さん(photo by 川村容一)
「ひだまりの詩」で知られるル・クプルのボーカリスト・藤田恵美さんは近年、ソロ歌手として、世界を舞台に活動している。特筆すべきは香港、台湾、韓国、シンガポールなどアジア圏のオーディオファンから絶大な人気を得ていること、そして、この11月に日本でも発売された『camomile classics』が、優秀録音盤ということで我が『オーディオアクセサリー』誌でも評論家たちに評価されたことである。そんな藤田恵美さんに注目し、同誌124号でインタビューを行ったが、このファイルウェブには、そこで掲載し切れなかった貴重なお話を4回にわたって綴ってみようと思う。

『カモミール』シリーズはアナログ録音にこだわっている。ニーブの48chのテープにマルチ収録し、その後デジタル化、プロトゥールズを使用しているが、アナログの質感にこだわった、素のままのサウンドに仕上がるよう意識して作られた。

3作目にあたる『camomile classics』は2カ所で録音している。メインは東京都千代田区の一口坂スタジオで、3、5、8曲は六本木のサウンドシティで録音している。


一口坂スタジオ2フロア図
一口坂スタジオはスタジオ2を使用。「SOUND LOCK 」に恵美さん(ボーカル)が、「BOOTH A」にピアノ、「BOOTH B」にギター、「BOOTH C」にベース、そして「MAIN STIDIO」の一角(図むかって右下の角)にバイオリンが位置をとった。

ふつうはブースの扉を閉めてそれぞれマイクで録っているものをモニターしながら演奏するが、ギターやピアノだけの録音時にはボーカルは扉を開け放して録音した。

「扉を開けたときの録音と、扉を閉めたときの録音の音を聴き比べてみたときに、開けて録った方がいい、と感じたんです」と恵美さんはいう。

「歌の色合いは、歌っているその瞬間に作っています。だから、その色付けを表現したいんです。」 そんなこだわりは、一発録りに近い録音をしたことや、リズムの基準を“クリック”と呼ばれるリズムキーパーではなく、恵美さんの歌に他のミューシャンが合わせるという方法をとったことからもうかがえる。

プロデューサーの奥野秀樹氏によると「ポップスは原音再生、という概念が難しい。ミックスで変わってくるから。恵美さんの歌はアコースティックな歌であって、その場で録ったときの感じが大事なんです。」恵美さんはミキシングの段階でチェックするという。“歌った瞬間の色付け”が生きているか。違和感があれば納得するまでエンジニアと話し合うそうだ。

マスタリングは名手、保坂弘幸氏。ミックスダウンされたマスターテープから、曲順の変更、曲のレベル、イコライジング、フェードイン・フェードアウトなどのクロスフェード作業、音圧調整、曲間の編集等を行い、最終形のCDカッティング用マスターテープを作る。その段階でも恵美さんはチェックをするという。

「マスタリングエンジニアの方は、マスタリングの時点で初めて聴くわけです。来たものに対して自分の感性をそこに乗せるのです。ですから、マスタリングエンジニアの感性はとても大事。私も聴かせていただいて、パターンAよりパターンBのほうがいいですね、などというようなやりとりをします。今ヒットする傾向としては、聴き手を振り向かせるために、派手にリバーブをかけたりします。でも私は素朴なものが好きなのです。こう歌いたかった、というものが遠くにあるように感じたら、そのようにエンジニアの方にお伝えしますね。」

そんなこだわりができあがった作品の音に表れる。派手ではなく、素朴さにこだわった音に、ぜひ耳を傾けてみてほしい。<続く>

(オーディオアクセサリー編集部)

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 楽天ブラックフライデーでJBLの超人気サウンドバー「BAR 1000/800」が激安!プロも驚く革新的モデルはどんな音を鳴らす?
2 評論家が厳選!マランツ「MODEL M1」でPolk Audio/KEF/TAD/Harbethのスピーカーを鳴らす
3 ビクター新ワイヤレスヘッドホン「HA-S99N」速攻レビュー! 評論家が「もう驚きでしかない」と高評価した魅力とは?
4 ボーズ、McIntosh Groupを買収。マッキントッシュ、ソナス・ファベールが傘下に
5 レグザが100型クラス大画面4Kテレビを拡充する理由とは? 目黒蓮の特別コメントも
6 パナソニック「2023年度 優秀ご販売店様謝恩会」を開催。21店が栄誉に輝く
7 山之内 正氏によるエソテリック×アキュフェーズ×マランツ比較試聴会、「ハイエンドオーディオ&アクセサリーショウ2024」で開催
8 オーディオファイル待望の物量投入型プリメインアンプ!デノン「PMA-3000NE」をクオリティチェック
9 B&Wの音は “信頼に値する重要な指標”。音元出版の新試聴室に「802 D4」が導入されたワケ
10 新開発ユニットを巧みに操る懐深いサウンド。ELAC「Debut 3.0」フロア型/ブックシェルフ型を聴く
11/22 10:41 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.194
オーディオアクセサリー大全2025~2026
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2024年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX