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公開日 2015/11/27 21:46

M2TECH、24種類のカーブに対応したフォノイコ内蔵A/Dコンバーター「Joplin MKII」など5機種

DSD対応D/Dコンバーターも登場
編集部:小澤貴信
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トップウイングは、同社が取り扱うM2TECHの新製品発表会を開催。デジタルフォノイコライザー兼A/Dコンバーター「Joplin MKII」など5機種を12月下旬より順次発売する。

・デジタルフォノイコライザー兼A/Dコンバーター
Joplin MKII」¥220,000(税抜) 2015年12月下旬発売
・電源ユニット
Van der Graaf」¥120,000(税抜) 2016年1〜3月発売予定

上段が「Joplin MKII」。下段が「Van der Graaf」。中段は同社のD/Aコンバーター「Young DSD」

・D/Dコンバーター
hiFace Evo Two」¥75,000(税抜) 2015年12月下旬発売
・クロックジェネレーター
Evo Clock Two」¥75,000(税抜) 2016年1〜3月発売予定
・電源ユニット
Evo Supply Two」¥60,000(税抜) 2016年1〜3月発売予定

上段より「hiFace Evo Two」「Evo Clock Two」「Evo Supply Two」

24種類のカーブを備えたデジタルフォノイコ搭載A/Dコンバーター「Joplin MKII」

Joplin MKIIはフォノイコライザー機能を備えたA/Dコンバーターで、PCを接続することなく単体でも使用できる。単体での使用時には、最大192kHz/32bitに対応。PC接続時には最大384kHz/32bitに対応する(対応スペックはPCのソフトに依存)。アナログ入力はRCAを1系統搭載。デジタル出力はUSB・同軸・光・AES/EBUを搭載する。幅広い入力インピーダンスに対応しており、MM/MCに加えて、高出力のMCカートリッジも組み合わせることができる。

「Joplin MKII」のデモンストレーションの様子

発表会はお茶の水のジャズ喫茶「ジャズオリンパス」で行われた

本機の最大の特徴は、デジタルフォノイコライザーとして、合計24種類ものイコライザー・カーブをはじめ、入力ゲインやフィルターなど多様なパラメーターの調整に対応している点だ。本機のカスタマーサービスおよび広報を担当するENZO j-Fiの嶋田亮氏は、「もし本機と同様の機能をアナログで実現しようとしたら、数百万円のシステムでも難しいでしょう」とコメント。デジタル領域だからこそ可能なイコライジング機能により、アナログレコードのサウンドを徹底的に追い込むことができることが本機の魅力と紹介していた。

ENZO j-Fiの嶋田亮氏

なお、本機は純然たるA/Dコンバーターであるため、例えばレコード再生で本機を用いる場合には、別途D/Aコンバーターを組み合わせる必要がある。嶋田氏は本機がA/D変換とD/A変換の両機能を備える、一般的なオーディオインターフェースとは異なることを強調していた。

嶋田氏はアナログレコードにおけるイコライザーカーブについても改めて説明。アナログレコードは原理上、記録できる周波数帯域に制限があり、盤面にはフィルターを通して高域は大きい音で、低域は小さい音で収録し、再生時にはイコライザーを使って元の信号波形に復元するという工程が必要になる。しかし、SPレコードからLPレコードに至る歴史において、初めてイコライザーカーブが「RIAA」に統一されたと言われるのは1954年で、それまではレコード会社などがそれぞれ独自のイコライザーカーブを用いていた。

RIAAカーブに統一されたのは公式には1954年だが、実際には1980年ごろまで様々なカーブが混在していたのだという

主要カーブの差を示すグラフ

しかも嶋田氏によれば、実際には1954年以降も地域やレーベルによってまちまちのカーブが用いられていたのだという。最終的にRIAAに統一されたのがいつ頃なのかについては諸説があり、M2TECHはそれを1975年頃、同じくトップウイングが取り扱うiFI-Audioは1980年以降と推測しているという。

レコード史においては様々なイコライザーカーブが登場してきたが、Joplin MKIIはLPレコード用として16種類、SPレコード用として4種類、さらにはオープンリール用として4種類のイコライザーカーブを用意している。用意されたカーブの種類は、以下の画像の通りだ。

Joplin MKIIのLP用のカーブ(16種類)


Joplin MKIIのSP用のカーブ(16種類)

Joplin MKIIのオープンテープ用のカーブ(16種類)

Joplin MKIIにはデジタル領域でこうした多様なイコライザー・カーブを用意されているため、そのレコードが本来必要とするべきものを選択して再生することができるというわけだ。ただ、個々のアナログレコードで用いられた「正確なイコライザーカーブ」は、年代が古くなるほど不明確なものもあり、正確な情報がない限り、測定などを行っても正しいカーブを知るのは難しいという。Joplin MKIIは再生中もリモコンで各種カーブを切替ることができるので、「聴感で正しいカーブを探るのもアナログレコード再生の楽しみ方なのでは」(嶋田氏)とも紹介されていた。

調整可能な項目の一覧

なお、イコライザーカーブ以外にも調整可能なパラメーターが多数用意されている。具体的には、入力ゲイン、入力インピーダンス、サンプリング周波数、ビットレート、ハイパスフィルター、ローパスフィルター、MPXフィルターなどだ。本機はこうした高度なデジタル処理を行うためにFPGAを搭載。アナログステージには現時点で入手できるPGA(Programmable Gte Array)を採用したとのことだ。

なお、嶋田氏は本機がDSDに非対応である理由にも言及。イコライジングはDSDネイティブのΔΣ領域では行うことが原理的にできず、マルチビットPCMで行うことになる。一方アナログでイコライジングを行おうとしたら数百万円規模のシステムが必要になる。「DSDにあえて対応しなかったのは、レコードへの愛情を突き詰めた結果、多様なイコライザーカーブをレコードに合わせて選択できることがより重要と考えたからなのです」と紹介していた。

Joplin MKII(上から2段目)は本体ディスプレイに選択したカーブ名が表示される

本機のリモコン

同時に発表されたVan der Graafは、Joplin MKIIやUSB-DAC「YOUNG DSD」と同サイズの電源ユニットで、すべてのM2TECH製品に電力を供給することが可能。超低ノイズを実現しており、出力に応じて出力電圧を選択する機能を備えている。

DSD対応のD/Dコンバーターなど「EVO TWO」シリーズの3機種も登場

hiFace EVO Twoは、コンパクトなコンポーネントシリーズ「EVO TWO」のD/Dコンバーター。USBオーディオクラス2.0に準拠しており、384kHzまでのPCMと11.2MHzまでのDSDに対応する。嶋田氏は「DSDに対応したD/Dコンバーターは現時点では非常に珍しいのでは」と話していた。入力はUSBおよび同軸デジタルを搭載。出力はHDMI端子によるI2S、光、同軸、AES/EBUを備える。384kHz PCMや11.2MHz DSDはI2S出力のみに対応。HDMI端子によるI2S入力はPS Audioなどの製品が採用しており、いわゆる通常のHDMI端子との接続には対応していない。

秋のヘッドホン祭 2015に出展されていたEVO Twoの3機種

各モデルの端子部。上から「hiFace Evo Two」「Evo Clock Two」「Evo Supply Two」

外部クロック入力用端子も搭載。また後述するEVO Clock Twoと組み合わせた際のクロックスイッチング自動化のためのクロック情報をやりとりする光デジタル端子も備える。

Evo Clock Twoは、ワードクロックおよびマスタークロックを生成するクロックジェネレーターで、10MHzクロックに対応したことが大きな特徴。嶋田氏は「10MHzクロック対応で75,000円という価格を実現した製品は世界的にも希有」と紹介していた。本機はマスタークロック生成のために高品位なTCXO(温度補償推奨発振器)を 2基搭載。フェイズ・ノイズが低いのが特徴で、結果的にジッターを極めて低く抑えることがきたという。

EVO Supply Twoは、EVO Twoシリーズ専用の電源ユニット。低ノイズのディスクリート・コンポーネント・レギュレーターから、クリーンな電流を供給する。3つの電源端子を備えており、各出力は過電流から保護される仕様となっている。

トップウイング代表取締役の佐々木原幸一氏

発表会の冒頭ではトップウイング代表取締役の佐々木原幸一氏が挨拶。「M2TECHはイタリアのピサに拠点を持つオーディオブランドで、USB端子に直挿しするUSB-DDC「hiFace」は、ハイレゾブームの黎明期を牽引した製品と言えます。同社は非常に斬新なエンジニアリングを特徴としていて、新製品の導入に合わせて、今一度このブランドを積極的に紹介していこうと考えています」と述べていた。

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