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公開日 2008/09/03 09:35
【ファーストインプレッション】録画・クオリティ共に新次元に到達 - 性能を大幅に向上させる新ラインナップ
ソニーのBDレコーダー2008年モデルのフルラインナップが遂に出揃った。新製品として登場するのは、“シアターを堪能する”style X、“思い出を楽しむ”style L、“番組を楽しむ” style Tの3ライン。
このうち、やはり注目したいのは最高画質のフラグシップ機“style X”「BDZ-X100」。今回は本機を中心に、旧機種からの変更点やスペック・機能の効果について見ていこう。
BDZ-X100はデジタルダブル録画・1TB HDD内蔵のフラグシップ機だ。AVCエンコーダーも1,920×1,080のフルHD記録に対応。初のHDMI2系統出力としたこともホームシアターファンに嬉しい設計だ。
EPG情報を使って、流行の番組を雑誌風に表示する“x-みどころマガジン”を初搭載。例えば「ドラマ最終回特集」「音楽ライブ特集」などトレンドを掴めるのは面白い。昨年から引き続き“気になる検索”“x-おまかせ・まる録”といった簡単便利な録画機能、“おまかせチャプター”“ダイジェスト再生”などを搭載し、再生・編集の高機能ぶりは相変わらず。さらに“連続ドラマ一括ダビング/転送”でアーカイブの操作性も向上、HDDからBDへの高速ダビング中の同時動作制限も大幅に緩和した。
フラグシップのstyle Xはシリーズの全機能を網羅した「全部入り」の側面もあり、録画番組をウォークマンやPSPに持ち出す“おでかけ転送”“BDダイレクトダビング”も可能になったUSB端子の装備、HDVのビデオカメラ連携、DLNAサーバー機能とまさに至れり尽くせりだ。また、テレビ連携のBRAVIA Linkも08年モデル版として強化されている。
●ソニーの独自技術の数々を用いた新高画質回路“CREAS”
ソニー2008秋の新モデルの目玉は、BDレコーダー/プレーヤーとして新たなステップを踏み出した新次元の高画質・高音質の設計にある。非常に多機能、しかも多くがソニーの独自開発技術を盛り込んだもののため、技術の解説に加え、事前内覧で確認したファーストインプレッションを交えながら紹介したい。
2008年秋の新BDレコーダー高画質化のキモは、全機種共通で搭載する“CREAS”(クリアス)と命名された新高画質回路だ。特に高画質を追求したstyle X以外でも、独自の技術をふんだんに投入したこの回路だけで、ソニーの2008年秋モデルは大きな高画質化を果たしている。
一つは“HDリアリティエンハンサー”による14ビット階調創造。元々8ビット階調のテレビ放送、BD-ROMの映像を、“CREAS”の働きによって14ビット階調化。この際に”HDリアリティエンハンサー”は、画面の画素単位で画面の平たん部、エッジ、テクスチャ、ノイズ、字幕、肌などを判別して処理する。
実際の映像で効果を確認すると、デジタル放送での効果は言うに及ばず、静止画でも的確に輪郭点を検出して処理し、一枚ヴェールを脱いだような水準にまで引き上げる。BDビデオでも、フィルムグレインのノイズ感は元の雰囲気を保ちながら、特徴点解析型の処理で人物やオブジェクトについては鮮鋭感や立体感を引き出す。単純な階調拡張技術や輪郭強調技術とは異なり違和感もなく、常用してもいい出来映えだ。
14ビット階調に拡張した後のステップには、プロオーディオの世界で用いられる技術をビデオに応用した“SBM”(Super Bit Mapping)処理が行われる。通常は8ビット階調、DeepColor出力を使用しても12/10ビットまでしか映像信号の出力は行えない。このため、14ビットの映像を12/10/8ビットのいずれかに落とす必要があるのだが、このとき、視覚特性とHDディスプレイの特性を利用し、人間の視覚感度の低い高周波数帯域に量子化誤差を拡散させて(ノイズシェーピング)、ノイズ感を出さずに12/10/8ビット化する。
技術デモとして視聴した映像では、グラデーション表示の滑らかな階調、漆黒に浮かぶダークグレーのロゴなど、従来再現しづらかった映像を表示できる。この秋発売のBRAVIAのようなハイスペックなテレビでその真価を発揮するはずだ。
クロマアップサンプリング処理も盛り込まれ、色信号を422から444へ適応変換することで、色のキレが高まった。
また、最後になるが全モデル共通のAVC録画の画質向上も忘れてはならない。録画は全機種が1,920×1,080のフルHD解像度に対応、さらにHigh Profileへも対応と、旧機種とは一線を画す水準にまで高画質化されている。この進化だけでも大きなポイントなのだが、改めて検証の場を設けていきたい。
●BD-ROM再生のクオリティ向上にも繋がる「DRC-MF v3」
最上位のstyle Xは、更にこれらの回路と同時に”シアターを堪能する”モデルとして、新BRAVIAの上位シリーズBRAVIA XR1/X1シリーズと同じ“DRC-MF v3”を搭載する。従来からの、インターレース映像から変換する際のクオリティ向上のみならず、“DRC-MF v3”は1080p映像の高画質化にも対応。精度をさらに向上させ、さらに動きMPEGの動きノイズ低減、プリ・オーバーシュートの低減やディティール部のリアリティ向上も行える。
自然番組に良く見られる、ゆっくりとズームやパンするような映像で、画面にチラ付くようなノイズを見事に解消し、1フレームごとが、静止画が連続した画面のようにピタリと止まる。地上デジタル放送の宿命として半ば受け入れていたMPEGノイズまで、映像回路の働きで解決していく。デジタル放送を単純に録画、再生するレベルから一歩踏み出した、先進的なアプローチと評価できる。また、同機能はBD-ROM作品を含む1080/24pの映像にも適用できる。style Xは、真のシアター向けモデルとしての位置づけを明確にしている。
また音質向上のため、style XはBDZ-X90をベースに、更なるクオリティを追求した設計を盛り込んだ。style Xは専用シャーシを採用し、アナログ回路を専用基板化したのはもちろん、4mm厚のアルミ天板を採用。「HDMI出力ジッタノイズ低減システムPLUS」や低ジッタ型・ロスレスデコードエンジンのノウハウを投入するなどの処理を施し、同社のTA-DA5400ESとも接続して音決めが行われている。
Xシリーズの登場は約1年ぶりながら、この進化の大きさは驚異の一言に尽きる。昨年のBDレコーダーを、BDとデジタル放送の「スペックを引き出す」モデルとすれば、今年の新モデルは「スペックを超える」真の高画質に挑んだモデルであると言って良い。今年は機能・画質・音質すべてで最高水準を追求するソニーの快進撃に期待できよう。
(折原一也)
■執筆者プロフィール
折原一也 Kazuya Orihara
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
このうち、やはり注目したいのは最高画質のフラグシップ機“style X”「BDZ-X100」。今回は本機を中心に、旧機種からの変更点やスペック・機能の効果について見ていこう。
BDZ-X100はデジタルダブル録画・1TB HDD内蔵のフラグシップ機だ。AVCエンコーダーも1,920×1,080のフルHD記録に対応。初のHDMI2系統出力としたこともホームシアターファンに嬉しい設計だ。
EPG情報を使って、流行の番組を雑誌風に表示する“x-みどころマガジン”を初搭載。例えば「ドラマ最終回特集」「音楽ライブ特集」などトレンドを掴めるのは面白い。昨年から引き続き“気になる検索”“x-おまかせ・まる録”といった簡単便利な録画機能、“おまかせチャプター”“ダイジェスト再生”などを搭載し、再生・編集の高機能ぶりは相変わらず。さらに“連続ドラマ一括ダビング/転送”でアーカイブの操作性も向上、HDDからBDへの高速ダビング中の同時動作制限も大幅に緩和した。
フラグシップのstyle Xはシリーズの全機能を網羅した「全部入り」の側面もあり、録画番組をウォークマンやPSPに持ち出す“おでかけ転送”“BDダイレクトダビング”も可能になったUSB端子の装備、HDVのビデオカメラ連携、DLNAサーバー機能とまさに至れり尽くせりだ。また、テレビ連携のBRAVIA Linkも08年モデル版として強化されている。
●ソニーの独自技術の数々を用いた新高画質回路“CREAS”
ソニー2008秋の新モデルの目玉は、BDレコーダー/プレーヤーとして新たなステップを踏み出した新次元の高画質・高音質の設計にある。非常に多機能、しかも多くがソニーの独自開発技術を盛り込んだもののため、技術の解説に加え、事前内覧で確認したファーストインプレッションを交えながら紹介したい。
2008年秋の新BDレコーダー高画質化のキモは、全機種共通で搭載する“CREAS”(クリアス)と命名された新高画質回路だ。特に高画質を追求したstyle X以外でも、独自の技術をふんだんに投入したこの回路だけで、ソニーの2008年秋モデルは大きな高画質化を果たしている。
一つは“HDリアリティエンハンサー”による14ビット階調創造。元々8ビット階調のテレビ放送、BD-ROMの映像を、“CREAS”の働きによって14ビット階調化。この際に”HDリアリティエンハンサー”は、画面の画素単位で画面の平たん部、エッジ、テクスチャ、ノイズ、字幕、肌などを判別して処理する。
実際の映像で効果を確認すると、デジタル放送での効果は言うに及ばず、静止画でも的確に輪郭点を検出して処理し、一枚ヴェールを脱いだような水準にまで引き上げる。BDビデオでも、フィルムグレインのノイズ感は元の雰囲気を保ちながら、特徴点解析型の処理で人物やオブジェクトについては鮮鋭感や立体感を引き出す。単純な階調拡張技術や輪郭強調技術とは異なり違和感もなく、常用してもいい出来映えだ。
14ビット階調に拡張した後のステップには、プロオーディオの世界で用いられる技術をビデオに応用した“SBM”(Super Bit Mapping)処理が行われる。通常は8ビット階調、DeepColor出力を使用しても12/10ビットまでしか映像信号の出力は行えない。このため、14ビットの映像を12/10/8ビットのいずれかに落とす必要があるのだが、このとき、視覚特性とHDディスプレイの特性を利用し、人間の視覚感度の低い高周波数帯域に量子化誤差を拡散させて(ノイズシェーピング)、ノイズ感を出さずに12/10/8ビット化する。
技術デモとして視聴した映像では、グラデーション表示の滑らかな階調、漆黒に浮かぶダークグレーのロゴなど、従来再現しづらかった映像を表示できる。この秋発売のBRAVIAのようなハイスペックなテレビでその真価を発揮するはずだ。
クロマアップサンプリング処理も盛り込まれ、色信号を422から444へ適応変換することで、色のキレが高まった。
また、最後になるが全モデル共通のAVC録画の画質向上も忘れてはならない。録画は全機種が1,920×1,080のフルHD解像度に対応、さらにHigh Profileへも対応と、旧機種とは一線を画す水準にまで高画質化されている。この進化だけでも大きなポイントなのだが、改めて検証の場を設けていきたい。
●BD-ROM再生のクオリティ向上にも繋がる「DRC-MF v3」
最上位のstyle Xは、更にこれらの回路と同時に”シアターを堪能する”モデルとして、新BRAVIAの上位シリーズBRAVIA XR1/X1シリーズと同じ“DRC-MF v3”を搭載する。従来からの、インターレース映像から変換する際のクオリティ向上のみならず、“DRC-MF v3”は1080p映像の高画質化にも対応。精度をさらに向上させ、さらに動きMPEGの動きノイズ低減、プリ・オーバーシュートの低減やディティール部のリアリティ向上も行える。
自然番組に良く見られる、ゆっくりとズームやパンするような映像で、画面にチラ付くようなノイズを見事に解消し、1フレームごとが、静止画が連続した画面のようにピタリと止まる。地上デジタル放送の宿命として半ば受け入れていたMPEGノイズまで、映像回路の働きで解決していく。デジタル放送を単純に録画、再生するレベルから一歩踏み出した、先進的なアプローチと評価できる。また、同機能はBD-ROM作品を含む1080/24pの映像にも適用できる。style Xは、真のシアター向けモデルとしての位置づけを明確にしている。
また音質向上のため、style XはBDZ-X90をベースに、更なるクオリティを追求した設計を盛り込んだ。style Xは専用シャーシを採用し、アナログ回路を専用基板化したのはもちろん、4mm厚のアルミ天板を採用。「HDMI出力ジッタノイズ低減システムPLUS」や低ジッタ型・ロスレスデコードエンジンのノウハウを投入するなどの処理を施し、同社のTA-DA5400ESとも接続して音決めが行われている。
Xシリーズの登場は約1年ぶりながら、この進化の大きさは驚異の一言に尽きる。昨年のBDレコーダーを、BDとデジタル放送の「スペックを引き出す」モデルとすれば、今年の新モデルは「スペックを超える」真の高画質に挑んだモデルであると言って良い。今年は機能・画質・音質すべてで最高水準を追求するソニーの快進撃に期待できよう。
(折原一也)
■執筆者プロフィール
折原一也 Kazuya Orihara
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。