公開日 2024/10/17 11:14
富士フイルム イメージングシステムズ松本社長、デジタルカメラとチェキを柱に好調な上期。さらなる事業拡大に手応え
2024年上半期の取り組みを語る
■デジタルカメラ、チェキともに新規ユーザー層拡大で好調持続
富士フイルム イメージングシステムズは、「2025年富士フイルムの年賀状概要発表会」を開催した。冒頭に登壇した代表取締役社長・松本考司氏が、2024年度上半期の同社の概況を、「デジタルカメラ」「インスタックス(チェキ)」「プリントサービス」の3点から説明した。
デジタルカメラは、ラインナップに「X100VI」「X-T50」「GFX100S II」が加わり、売上げは好調に推移。「需給のバランスが崩れたが、今年度に入り回復してきた」と説明する。ユーザー層拡大を目指したプロモーション活動を精力的に展開。GFXシリーズの体験促進に注力した「Hello GFX-2024-」は6都市で6,000名の来場者を集め、うち20-40代のユーザー比率が約6割、GFXシリーズが初体験となるユーザー比率が約7割を占め、「今後の事業拡大に手応えを感じている」と力を込めた。
昨年に続いて9月に開催された東京カメラ部とのタイアップ企画「東京カメラ部×FUJIFILM10選 - Colors Like Film -フォトコンテスト2024」では、昨年の7,000件を上回る8,000件の応募が寄せられた。本コンテストでアピールする独自の「フィルムシミュレーション」機能は、まるでフィルムを交換するような感覚で独自の色再現が楽しめるもので、クリエイティブプリントとともに、こちらも大きな手応えを感じているという。
幅広い年代層にわたってカメラに対する関心が高まるなか、富士フイルムのデジタルカメラ「GFX/Xシリーズ」のカメラ・レンズ選びや購入後の写真ライフを豊富な知識でサポートする2,000名を超えたX Conciergeによるダイレクトコミュニケーション、さまざまな手法を駆使したWEBコミュニケーションの双方を強化し、エンドユーザーのさらなる拡大を目指す。
好調に推移するチェキにおいても新規ユーザー層の拡大に力を入れる。Z世代に「mini LiPlay」「mini Link 3」、男性層に「mini 99」「WIDE 400」、カメラ・写真好き層に「mini Evo特別仕様モデル」など新製品を続々投入してラインナップを拡充。
同時にα世代に向けたガールズコミックイベント、Z世代にME:Iタイアップ企画、男性層にアウトドアイベント、カメラ・写真好き層にフォトコンテストなどを催し、ターゲットを明確にしてチェキに魅力を訴える。2大シーズンとなるクリスマス、年末年始を控え、「需要期を逃すことなく、多彩なプロモーションで盛り上げていきたい」と意気込みを示す。
さらに、「ビジネス用途もしっかりと増えてきている」とビジネス向けのinstax Bizアプリを用意。社内利用、飲食店、ホテル、ショッピングモール、観光地域振興、フェス、結婚式場、テーマパーク、スポーツチーム、コンテンツホルダーなどのBtoB市場におけるパートナーを拡大し、新しい分野の開拓を目指す。
■「写真幸福論 一生モノのフレーム店」に大きな手応え
プリントサービスでは、写真撮影や写真プリントを通じて人生の幸福度を高める、昨年8月に立ち上げた「写真幸福論」プロジェクトをもとに様々な展開を進めるなか、3月に代官山T-SITEで「写真幸福論 一生モノのフレーム店」を開催した。「写真幸福論のコンセプトはご理解いただけながら、それでは具体的にどうすればいいのか。そうした悩みにお応えするもの」と狙いを説明する。
「家に、幸せの居場所をつくろう」をテーマに、自宅のリビングなどに飾って幸せを感じていただける13名のクリエイターの作品を展示・販売。また、お客様に大切な1枚の写真をお持ちいただき、写真とそれにまつわるエピソードから、ぴったりな1冊をコンシェルジュがお薦めしてくれる催しも行われた。
そして、さまざまな作品の額装で人の想いに寄り添ってきた額装コンシェルジュが、お客様の大切な1枚の写真にピッタリな一生モノのフレームをその場でカスタマイズ。写真はその場でプリントされ、額縁におさめた仕上がりを体験することができた。もちろん、そのまま購入して持ち帰ることも可能だ。
「このイベント通じてわかったことが2つある」と語る松本社長。「ひとつは、写真はプライベートなもの。人に対して話しをすることがあまりなく、こういう場で話しをすることで、幸せな感じが出てくるということ。もうひとつは、自分だけのカスタマイズされたオリジナルなものが欲しいというニーズは非常に強く、額縁をしてあげることで非常に喜んでいただけたこと」と今後もこうした取り組みに注力していく構え。
また、東日本大震災時に写真洗浄の活動を行った同社は、1月に地震の発生した能登地域において、前記の一生モノのフレーム店を実施した。「我々も何かできないかと考えた。『こういう活動をやってもらうことで元気が出る』とのお言葉もいただき、年内に輪島でもう一度やらせていただこうと思う。この活動をずっと続けていきたい。ビジネスとして写真を増やしていく一方で、幸せを増やしていくのも大事なこと」。
幸福感を広げる製品・サービスとして、1枚の写真に想いを込め、時間をかけて作り上げていく体験にもつながる、10色のマット台紙と2種類のフレームと写真を合わせながら作品作りができる+preciousシリーズ「frame #002」の発売を準備中だ。
2025年賀状に対しては、「写真って何のためにあるんだろうということを考えていきたい。年賀状は送り手の想いをより乗せることができる。儀式とか儀礼とかではない。つながるきっかけにもなる。より想いを深く伝えられるサービスとして、今年は作り手がもっと自由により楽しく、写真に想いを込められる年賀状作りをサポートしていく」と訴えた。
■グローバルで一挙に拡大する需要が引き起こす製品供給遅延
なお、質疑応答において、なかなか解消されない製品供給の問題について以下のような回答があった。
「インバウンドのお客様が製品を買われていて、国内のお客様には正直、製品が渡りづらい状況が起こっていた。しかし、円高によりそこがある程度ブロックされはじめ、需給が安定してきて、国内のお客様にもお買い求めいただけるようになってきている。X100VIなどはまだ厳しい状況にあるが、バックオーダーについては順次緩めているところで、安心していただければと思う」と状況が改善しつつあると説明した。
「インスタックスのフィルムも同様で、外国人の転売ヤーが買い占め、買い回っていて、それでなかなか購入できないこともあった。しかし、2本パックを1本パックに変え、メインに展開して供給力を増やせるようにしたので、店頭でもだいぶ並ぶようになってきた。できる範囲で努力をしており、ご理解いただきたい」。
長引く製品供給問題の根本原因として松本社長は「これは私個人の見解となるが」と前置きし、次のように述べた。
「我々は今回、色々なことで写真について調べる機会があったが、スマホが登場した結果、何が起こっているのかというと、“撮る”というハードルが物凄く低くなり、写真を撮る行為が誰でも簡単にできるようになった。しかも、それがグローバルで裾野が広がり、ちょっとエモい写真を撮りたいという人がチェキやフィルムカメラに、さらにもっと奥行きのあるキレイな写真を撮りたい人がミラーレスカメラに流れている」とかつてない状況にあることを指摘。
「グローバルで一挙に需要が物凄く増えたということが、製品供給の問題のベースにあるのではないかなと見ている。供給が追いついていない。設備投資を含めて時間がかかるところがあり、ご迷惑をお掛けしている。わかりやすい例を出すと、チェキはこれまで韓国でブームになり、中国でブームになり、そのブームが日本に来た。何れも地域限定のブームだったが、今はチェキ人気も一斉にグローバル化している」との見方を示した。