公開日 2022/07/22 16:17

iPhoneが圏外でも通信可能に? アップルが「緊急通信システム」特許取得【Gadget Gate】

災害時に通信確保、多くの人命を救うため
多根清史
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
大規模な災害や緊急事態の最中といった、通信が必要な状況のときほど、インフラの故障や障害物による遮断などが起こりがちである。アップルが、そうした電波が届かない場所まで通信範囲を広げられる、緊急通信システムの特許を取得したことが明らかとなった。

Image:Gorodenkoff/Shutterstock.com

本特許は主に警察や救急隊員といったファーストレスポンダー(初期対応者)を対象としており、かつての911事件でも、世界貿易センタービルにて被害者の命を救えた可能性がある技術だ。すなわち本来なら通信網でカバーされているはずの大都市等で、地下街や瓦礫が通信を遮っている場合である。

この特許は、通信圏内にあるiPhoneやiPad等から、圏外にあるデバイスに通信を中継する方法に関するものだ。法的には、法執行機関が携帯電話の通話を傍受する権限を付与されている「合法的傍受」(Lawful Intercept)を基盤としている。

そして技術的には、デバイス同士が基地局やWi-Fiアクセスポイントを経由せず、直接に通信経路を確立できる「近接サービス」(ProSe)に基づいている。ProSe通信には、周波数の利用率を向上させ、全体的なスループットと性能を底上げし、電力消費が節約できるなど多くの利点があるという。

より重要なことは、ProSe通信を使うことで、一方の端末が携帯通信ネットワークを使えない場合にも、公共安全ネットワークを提供できるということだ。すなわちモバイル端末(iPhone)等の中継デバイスを経由して、圏外にあるモバイル機器をセルラー通信網に繋げることができる。

とはいえ中継点となるモバイル機器も、セルラー通信網に繋がらなければ機能し得ない。アップルの特許は、それを複数のiPhone同士で中継することで解決しようという方向だ。

Image:Apple/USPTO

こうした状況の例としては、公共安全要員(消防士など)のグループが挙げられている。その1人以上の機器が圏外にある場合(屋内やトンネル内など)でも、ProSe通信サービスを使って互いに通信を取り合い、セルラー通信網との接続も確保できるというわけだ。他のメンバーが圏外にいたとしても、たった1人が圏内にいればリレーでき、グループ内や外部とやり取りが続けられる。

この特許の説明は、第一に合法的傍受、第二に緊急通信システムに向けられているが、同じ技術が民生用のiPhoneに実装されてもおかしくはない。それは、すでに可能となっているテザリング(インターネット共有)を事実上拡張することになるだろう。

今年の「iPhone 14」は衛星通信に対応し、圏外でもSOS発信できるとの予想もある。近年のApple Watchも転倒検知や心房細動の検出など「命を救う」ことに重点が置かれており、iPhoneもそちらの方向に向かうのかもしれない。

Source: PatentlyApple
via: 9to5Mac

テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」のオリジナル記事を読む

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 BRAVIAが空飛ぶ時代? 動画コンテンツの楽しみ方に押し寄せた大きな変化を指摘するソニーショップ店長。超大画面はさらに身近に
2 ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
3 Nothing、最大40%オフのウィンターセール開催
4 LG、世界初のDolby Atmos FlexConnect対応サウンドバー「H7」。オーディオシステム「LG Sound Suite」をCESで発表へ
5 「ゴジラAR ゴジラ VS 東京ドーム」を体験。目の前に実物大で現れる“圧倒的ゴジラ”の臨場感
6 衝撃のハイコスパ、サンシャインの純マグネシウム製3重構造インシュレーター「T-SPENCER」を試す
7 AVIOT、“業界最小クラス”のANC完全ワイヤレス「TE-Q3R」。LDAC、立体音響にも対応
8 ソニー「WH-1000XM5」に“2.5.1”アップデート。Quick AccessがApple Music/YouTube Musicに対応
9 「HDR10+ ADVANCED」が正式発表。全体的な輝度向上、ローカルトーンマッピングなど新機能も
10 クリプトン、左右独立バイアンプ機構のハイレゾ対応アクティブスピーカー「KS-55HG」新色 “RED”
12/19 11:02 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX