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公開日 2011/01/21 00:00

いよいよ国内でも開始、ソニー独自VOD「Qriocity」の完成度とは?

ファイル・ウェブ編集部:風間雄介
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ソニーが、独自のVODサービス「Video On Demand powered by Qriocity (“キュリオシティ” ビデオオンデマンド)」を1月26日から国内でも開始する(関連ニュース)。

サービスのトップページの画面イメージ

VOD Qriocity(Qriocityには音楽配信サービスも存在するので、本稿ではこの略称を使用する)は昨年4月に米国で開始していたが、いよいよ同サービスが日本に上陸することになる。アップルもiTunes Storeでの映画配信を国内で開始しており、この分野での争いが激化することは間違いない。

iTunes Storeの映画配信はPC/Mac、iOS端末のほか、Apple TVを使えばテレビでも楽しめる。対するVOD Qriocityは、国内でのサービス開始時点ではBRAVIAでしか使用できない。

このようにターゲットデバイスが異なるので単純に比較するのは無理があるが、価格体系など似ている面も少なくない。参考までにiTunes Storeの情報も織り交ぜながら、VOD Qriocityのファーストインプレッションを記してみたい。

■コンテンツ数は200タイトルでスタート

VODサービスで重要なのは、提供されるコンテンツの量と質、そして価格だ。

まず「量」について見てみよう。VOD Qriocityでは、オープン当初に200タイトルを揃えるとのことだが、これはやはり少ないと言わざるを得ない。iTunes Storeがスタート当初に1,000タイトルを用意していたことと比べても見劣りする。

ただし、もちろんタイトルは今後、順次拡充されていく予定だ。米国では、昨年4月に約200タイトルでスタートしたものが、今年1月の段階では1,000タイトル程度にまで増えたという。

人気コンテンツがどれだけ揃うかもポイントだ。ハリウッドメジャーでは、20世紀フォックス、ユニバーサル・ピクチャーズ、パラマウント・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、ワーナー・ブラザースが国内のVOD Qriocity向けに作品を提供する。

参考までに海外では、MGMスタジオやウォルト・ディズニーもVOD Qriocityに参加しているが、国内での提供については未定となっている。ちなみにウォルト・ディズニーの大株主はアップルCEOのスティーブ・ジョブズ氏だ。

■ソニー独自の工夫でコンテンツの質を担保

コンテンツの「量」については今後に期待というところだが、「質」についてはどうだろうか。実はここに、ソニーならではの工夫が盛り込まれている。

まず基本情報を整理すると、コンテンツの解像度はHD/SDの2種類が用意されている。

映像のコーデックはやビットレートは非公表。ただしコーデックについてはMPEG-4 AVC/H.264を使用している可能性が高いと考えられる。なお、プレビュー映像はすべてSD画質だ。

音声については現在のところ2chステレオのみで、サラウンド音声は用意されていない。これは残念な点だが、同社によると「5.1chサラウンドもぜひやりたい」とのことなので、将来的なサポートは期待できそうだ。

注目すべきは、作品の再生を開始する際にネットワークの通信速度を調べ、それに適したクオリティのコンテンツを配信する仕組みが実装されていることだ。

再生を開始すると、まずネットワーク速度を調べ、それに応じたビットレートの映像を配信する

たとえば10Mbpsに近い、最高画質の映像を配信することが難しいと判断したら、自動的に最適な画質のデータを選択して配信する。もちろん、もとの映像をサーバでトランスコードしながら配信するのではなく、コンテンツ提供会社が、いくつかのビットレートのデータをあらかじめ用意しておく必要がある。このためコンテンツによっては、必ずしも複数のビットレートのデータがあるとは限らない。

国内VODサービスでメジャーな存在のアクトビラ ビデオ・フルの場合、このような仕組みが用意されていないため、HDコンテンツを快適に視聴するには、実測で12Mbps程度の回線が必要となる。ADSLなどの場合はそこまで速度が出なかったり、光回線でも、集合回線の場合は一時的にスピードが出ないことがある。通信環境に応じて、最も適した画質で配信される仕組みが用意されているのは心強い。

価格についても触れておこう。コンテンツによって当然異なるが、HD版が500〜1,000円(税込)、SD版が350〜700円(税込)に設定されている。

ちなみにiTunes Storeの場合、HDコンテンツのレンタル価格は旧作が300円から、新作が500円から。SDコンテンツの場合は旧作が200円から、新作が400円からとなっている。VOD Qriocityはやや割高であると言えるだろう。

なお、サービス利用のアカウントは「PlayStation Network」(以下PSN)が利用でき、この場合はユーザーID/パスワードを入力してサインインするだけで使用を開始できる。

PSNアカウントを持っていない場合は、Qriocityの公式サイトで個人情報や決済用のクレジットカード情報などを入力し、アカウントを取得することができる。その後、BRAVIA側でアカウントとの紐付け操作を行うと、VODサービスの利用が可能になる。なお同社説明員によると、QriocityアカウントはそのままPSNアカウントとしても使用できるとのことだ。

QriocityアカウントをPCで取得した場合、アカウントをリンクする必要がある

■サービスのクオリティ

VOD Qriocityの大きな特徴は、いわゆる「ストリーミングレンタル」方式のみの提供で、コンテンツを購入して保存したり、転送したりすることができないという点だ。

コンテンツは支払後30日のあいだに視聴を開始する必要がある。視聴開始後は48時間(アニメ作品の場合は72時間)のあいだ、何回でも視聴できる。ちなみに、この「30日間」「48時間」という期間設定はiTunes Storeと同じだ。

ストリーミングレンタルのみの提供というのは、現在、国内で同サービスに対応しているのがBRAVIAだけであることを考えたら当然だ。テレビにはコンテンツを貯めておけるほど大きなストレージがないからだ。海外でVOD Qriocityに対応した機器が登場しているBDプレーヤーも然りだ。

だが、VOD Qriocityとそのバックエンドシステムを共用しているPlayStation NetworkのVODサービスが、コンテンツの購入はもちろん、購入後のポータブルデバイスへの転送も可能なことを考えると、テレビでしか使えず、レンタル形式のみのVOD Qriocityが寂しく感じられるのも事実だ。

ただしこれについても、VOD Qriocityが今後、VAIOをはじめとしたPCでも使えるようになれば、状況は大きく変わる可能性がある。

もしPC向けVOD Qriocityサービスが開始されたら、当然ながらレンタルだけでなく「購入」という方法も用意されるだろうし、購入できるようになればiTunes Storeと同様、PCで購入したコンテンツをウォークマンやPSP、あるいは今後発売を表明しているタブレット機器などモバイルデバイスへ転送することも可能になるはずだ。

付け加えると、日本市場ではBDレコーダーと連携することも十分考えられる。BDレコーダーでコンテンツを購入・管理し、それを各種デバイスに転送するという使い方は、当然視野に入っているはずだ。

■サクサクと快適なユーザーインターフェース

使い勝手については、長時間触ったわけではないのであくまでファーストインプレッションとしてお考えいただきたい。またUIは今後、ローンチまでに若干変更される可能性があることもお断りしておく。

操作に対する追従スピード、いわゆる「サクサク感」は高く、これには非常に好印象を受けた。第2世代Apple TVと比べても遜色ないレベルで動作し、待たされる感覚はほとんどない。

VOD Qriocityは、本日発表された2011年モデルだけでなく、2010年以降に発売された「<ブラビア>ネットチャンネル」対応“BRAVIA”(※HX80R/EX30R/BX30Hシリーズを除く)でも利用可能。本日はデモ機が用意されていなかったが、2010年モデルでも、体感速度は2011年モデルとほとんど変わらないという。

同社説明員は「アクトビラのユーザーインターフェースがブラウザーベースで動いているのに対し、Qriocityはアプリ化している。だからキビキビとした操作が可能になった」と説明している。

トップページには最新タイトルを中心に、ソニーがセレクトした注目作品のサムネイルが並び、その両脇に各種メニューボタンが配置されている。メニューもサムネイルも大きめで視認性が高く、テレビからある程度離れていても楽々と操作することができそうだ。

メニューはレンタルした作品を一覧表示する「メディアライブラリー」、アカウントの設定や切り替えなどが行える「アカウントの選択」などを用意。またキーワードで検索できる「検索」のほか「新着作品」「特集とランキング」「ジャンル」など、様々な方法で目的のコンテンツを検索できる機能も用意されている。

たとえば「ジャンル」では、まず大まかなカテゴリーから「洋画」を選ぶと、アクションやコメディーなど、細かく区分けされたサブカテゴリーが表れる。わかりやすさを重視しているため、必然的に階層が深くなる点は好みが分かれるだろうが、今後コンテンツが増えたときには便利に感じるはずだ。

コンテンツの詳細画面

検索画面


スマートフォンで文字入力を行うことも可能

特集画面


ランキングは画面のようなイメージで表示される

サブカテゴリの区分けが細かいのがポイント

■トリックプレイにも対応

コンテンツの再生時には、早送りや巻き戻しなどのトリックプレイも、それぞれ3段階で行える。ただし、コンテンツにチャプター情報が付与されていないのは今後の改善を望みたい。

トリックプレイにも対応している

コンテンツの視聴を途中で停止した場合、あとで停止した場所から再生を再開できるレジューム機能も備えている。レンタルした作品は「メディアライブラリー」という項目に収納されるが、ここから選択することでレジューム再生が可能になるという。

■対応機器拡大でコンテンツ共有の円環を期待

ざっくりとではあるが、現時点での「Video On Demand powered by Qriocity」サービスの完成度を見てきた。

コンテンツの量・質、提供方法、機器同士の連携など、まだまだ改善すべき点は多いというのが、VOD Qriocityに対する率直な第一印象だ。

ただし、今回のサービス開始が「はじめの一歩」であることも忘れてはならない。現段階でその真価を断ずるのは早すぎる。細かな問題点をあげつらうより、ソニーが腹を据えて独自VODサービスの国内展開を開始した意気込みこそを評価したい。

今後は、コンテンツを拡充させることはもちろんだが、対応機器を増やし、それに伴って購入や転送などの機能を拡充させ、ソニー機器同士、あるいは他社製機器も含めたコンテンツ共有の円環を作り上げることが急務だ。これが早期に実現できれば、非常に魅力的なサービスになる可能性がある。

いずれにしても、今後の動向から目が離せないサービスが登場したことは確かだ。

※1月21日追記:一部に非公開情報が含まれていたため、該当部分の記載を変更しました

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