公開日 2012/07/20 13:04
【レビュー】ソニーが提案するインナーイヤーの新常識 − 新生「EXTRA BASS」を試す
特に効力を発揮するコンテンツを岩井喬が選出
新技術「アドバンスド・ダイレクト・バイブ・ストラクチャー」採用により、これまで以上に重低音のグルーブ感が伝わるようになった「EXTRA BASS」。特に効力を発揮するコンテンツを岩井喬氏が選出。実際のインプレッションをたっぷりとお届けしよう。
本シリーズの狙いに沿う楽曲を3曲チョイス |
今回のモデルチェンジによってシリーズを通し、重低音だけでなくキレ良く明瞭度のある中低域もきちんとバランス良く再生できるようになったことが大きな変化といえるだろう。
まずエントリー機の「MDR-XB30EX」。太く伸びやかな低域を持ちながら、中高域の音像に対し、柔らかい輪郭感を伴ったスマートな際立ちを見せてくれる。全体的に耳当たり良い穏やかな音色で中域の厚みが特長といえるだろう。
SPYAIR「0 GAME」ではロックならではのキックドラムやベースの押し出しがどっしりと感じられるが、余韻の収束は早くギターの爪弾きやピアノの輝き感も際立つ。ボーカルは肉付き良く、中域成分の伸びが良い。
ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)「猛烈宇宙交響曲・第七楽章-無限の愛-」においてはキックのふくらみが強めでリズムに対してはやや甘い立下り感だ。ボーカルはハリ良く、ギターはソリッドな芯を浮き立たせる。コーラスは壁のように一体化した密度を持つ。
KOTOKO「→unfinished→」のシンセベースはムンムンと力強い押し出しで、中低域の太く伸び良い旋律が重く響く。高域の輝きは穏やかに拡散し、ボーカルはシャープな定位だ。
続いて「MDR-XB60EX」。制振ABSハウジングの効果もあり、中低域の輪郭がはっきりとしてくる。加えて高域方向への特性も伸びており、全体的にエッジは腰高に描かれているようだ。
SPYAIRではリズム隊の重低域が持つボディ感はそのままにアタックの軽快さが加わり、一層スピード感が増した。ギターはフラッシーでありながら密度が濃く、中高域のハリも伸びやかで存在感がある。
ボーカルは滑らかでスムーズ。ももクロにおいてはバスドラの重さが小気味よく、エレキのシャープさがキレ良く感じられる。ボーカルは各メンバーの声の違いが分かりやすくなり、コーラスの分離も良くなった。
KOTOKOのシンセベースは相変わらず力強い押し出しを持つがキックのアタックがキレ良く腰高に感じられる。ボーカルの輪郭は鮮やかに切り取られ、リヴァーブ成分もつかみやすい。ギターのリフもエネルギッシュだ。
三者三様の個性を好みに応じて使い分けたい |
最後に「MDR-XB90EX」。アルミ合金がボディに加わったことで中高域にハリ艶のある倍音の豊かさが加わっている。
SPYAIRのドラムやベースはキレの良さと太さを両立させリッチで弾力ある胴鳴りが響く。重低音の制動力の高さによって音場の透明度も向上し、ボーカルは鮮やかに分離し音抜けも良い。ギターリフは中域の厚みを持たせながら高域にかけシャープに引き締めている。
ももクロはキックのドライな押し出しとフラッシーなギターに加え、ボーカルやコーラスの粒立ちが細やかで、声のかわいらしさが一層際立つ。シンセの鮮やかな輝きがゴージャスな響きとなるが、ベースは密度ある引き締めを見せ、付帯感の少ない音場を生む。
KOTOKOのシンセベースの弾ける力強さと重さ、リズムのリード感は爽快で、ボーカルの鮮度の高さはクールな輪郭を描き、ほのかな口元のウェット感が一際色っぽい。ギターやキーボードの解像感の高さも音場の明瞭度に貢献している。
いずれのモデルもソースを選ばずコストパフォーマンスは高いが、低域の鳴らし方や得意とする帯域成分が異なるので、好みに応じて使い分けたいところだ。総じて低域の量感と歯切れの良さ、ボーカルの際立ち感のバランスが絶妙なラインナップといえるだろう。